プロローグ
この小説は、基本的に骸骨兵の視点で進みます。魔物でありアンデッドなのでグロい描写があります。御注意ください。
「骸骨兵、私を守れ!」
私は、覚醒と同時に背後からの主の命令に従い、円形の盾を肉のついて無い左腕で突き出した。
肉を潰すような音と共に、主に斬りかかろうとしていた眼前の人間が鼻から血を流しつつ仰け反る。その隙を逃さず右腕に握る大鉈を人間の首を狙い振り下ろす。
「グギゥ」
首の半分以上を切り裂かれた人間は珍妙な声を漏らしながら、両腕に持つ剣と盾を落とすと皮鎧に包まれた体を地に這わせた。
目の前の敵を倒した私は、少し周囲を見回す。
左右に立つ私と同じ骸骨兵、主の気配を背後に感じながら、正面の人間たちを注視する。
私が今殺した人間と同じような剣と盾を持ったのが二人、その後ろで剣を振り上げながら喚いている全身鎧の騎士が一人。
「あと少しで死霊魔術師を倒せたものを、せめて相討ちにぐらいはできんのか! 所詮平民か!!」
全身鎧の騎士の言葉は、奴が貴族であり指揮官であることを私に教える。左右の骸骨兵に目配せをして(今の私に眼球は無いが)同時に襲い掛かる。
前衛の人間二人は、仲間の骸骨兵が押し倒し私は妨害を受けることなく全身鎧の騎士に肉薄する。
「骸骨兵ごときが近寄るな!」
私の振り下ろす大鉈を豪奢な飾りのついた剣で打ち払い全身鎧の騎士が罵る。
戦闘中に大声で喋るとは愚かなことだ、私は相手が打ち払いやすい大振りな斬撃を淡々と繰り返していく。全身鎧の騎士は、一撃を打ち払うごとに私を罵るが徐々にその勢いは削がれることになる。所詮は人間、しかも相当な重量がある全身鎧をつけているのだ大声を出しながら戦えば体力を消費してしまう。
そして前衛の人間二人を倒した骸骨兵達が、血の滴る剣や棍棒を手に全身鎧の騎士を左右から襲い始める。全身鎧の騎士は、死に物狂いで剣を振るい私達の攻撃を防ぐが全てを防ぐことはできず、その鎧は瞬く間に傷だらけになってしまう。
「よくも我が家に伝わる由緒正しぎっへ!」
最後までこちらを罵ろうした全身鎧の騎士は、顔面鎧の隙間に私の大鉈を受け縦に大回転しながらその人生を終えた。
骸骨兵相手にまともに戦うとは、愚かな奴だった。こちらは疲れないのだから多少の負傷を覚悟して攻めればよかったものを、何のための全身鎧なのか。
まあ私を倒したとしても結局は死んでいただろう、振り返った私の視界には主と主によって死体兵となった人間達がいた。
私達と同じ骸骨の体に魔術師の外套をまとった主が口を開く。
「壁にしては強いな?」
私達が主にして創造者たる死霊魔術師様は、その手に準備していた死の呪文を持て余しながらそう呟かれた。
骸骨兵ですので、血まみれの生誕にしてみました。