村の約束
ようやく、塀までたどり着くと、新しい住人がぴしっとした恰好をして遠くでもみるようなうつろな目で立っていた。
「・・・お前が安曇か??」
と、迅刀が尋ねると。
「・・・違う。・・・八雲だ。」
と、つぶやく。その言葉に一瞬顔を曇らせた迅刀を横目に霊刀は。
「わりぃ~~ww漢字間違えちまったんだな!!・・・ってあれ??俺の、情報も間違ってんじゃん。安曇になってるww」
と、言いながら霊刀が手帳に書いてある情報を書きなおそうとした瞬間手を、止められた。
・・・性格に言うと無理矢理止められた。八雲の眼光によって。
「・・・それは、正しい。ここに来る前の名が安曇だったから・・・。」
と、つぶやく。
「うん??ここに来る前??あぁwwあれか。お前。実在してたパターンの人間か。」
と、霊刀が笑う。
「・・・??」
と、不思議そうに首を傾げる八雲。
「あぁwwそっか。お前はそうだからそれしか知らないんだよな。ここにいる人間はさ。大まかに分けて三パターンに分かれてるんだ。一つ目は。お前みたいに『実在していたが、それが噂になってここにきてしまうパターン。』大体は、その人がだいぶたってから流れるものなんだけど。たまにいるんだよねww八雲みたいなやつが。お前、まだ、『本土』にいる人間だろ?んで。『本土』にいる人間がお前。・・・分身とでも言うべきかな??。だから名前が違うんだ。本名とこっちの名前が一緒じゃ大変なことになる。だから、『八雲』って名前貰ったんだろ・?もしくは・・・情報が乱れて簡単な『八雲』となっているか・・・。」
と、何故か話がそれながら推理をしていると。
「まぁ。なんでもいい。とりあえず、噂のほうでも『八雲』となっている。今。荒山さんに聞いた。」
と、迅刀が無線機を掲げる。
「とりあえず。八雲。詳しい話はあとでする。とりあえずはついてきてくれ。」
と、迅刀が八雲を一度見ると歩き始めた。
「あははwごめんね~~。あいつすっげぇ。無愛想なんだ。別に悪気があってやってることだからさ!!許してやって!!」
と、どう考えてもフォローになっていない言葉を発する。
「・・・・・・大丈夫。」
と、八雲もそれに一瞬驚きながら一言つぶやいた。
暫く歩くと、村の本家が見えてきた。
「ここは・・・?」
と、八雲が尋ねる。
「ここは、村の本家だよ。う~~ん。そうだな。本土で言う・・・国会議事堂みたいなところかな。」
と、霊刀が笑うと。
「どちらかというと、天皇陛下の住まいのほうが正しい気もするが・・・。まぁ、いいや。とりあえず。八雲。中に入れ。ここの説明をする。」
と、中に促した。
「・・・失礼します。」
と、一礼すると八雲は中に入って行く。
すると・・・。
「あああああっ!!君が八雲君っ?!わぁwwちょっと楽しみにしてたんだよねっ!!へぇっ!!たまたま通っただけで会えるなんて奇跡的だよねっ!!:
と、大喜びをする金髪の霊刀達より少し身長の低い少年が駈けよってきた。
どう考えても『ちょっと』ではない楽しみにしていた感じがにじみ出ている。
「・・・ゴルドさん。会えて感激しているのは分かりますが・・・もう少し落ち着いてもらえませんかね??これから、八雲に教えなきゃいけないことが山ほどあるんですよ。それに、ゴルドさん僕らより年上なんだから。もう少しちゃんとしてもらわないと・・・。」
と、そこまで言ったところで霊刀がシャウトを掛けた。
「はいはい。そこまでえええっ!!いいじゃん、別に年上だろうがそんなこと。ゴルドさんはここの空気清浄機みたいなもんだって言ってたのお前の尊敬する阮さんだよ??」
と、にこやかに笑う。
その、無駄に爽やかな笑顔に何も言えなくなったのか、
「もういい。」
と、一言残して本家の中を歩き始めた。
それに続こうとすると、後ろで静かだが厳粛な声が聞こえた。
「ゴルド。お前は、また喚き散らして。迅刀や霊刀・・・八雲?に迷惑をかけるんじゃない。大体。お前は仕事があるだろう。」
と、ため息交じりに説教をしているのはゴルドと同じ金髪をして、ゴルドよりだいぶ身長が高くて、ゴルドを少し大人にしたような顔立ちをした少年だった。
「あっ!!!!!アーウィン兄ちゃんっ!!どうしたのっ?!仕事終わったのっ?!」
と、その少年をみてまた大声を出すゴルド。
「はぁ・・・。お前の喚き声が聞こえたから、仕事を放ってここまで来たのだ。とにかく、早く仕事場へ迎え。みんなに迷惑がかかっている。」
と、またため息交じりにゴルドを強制的に仕事場へ向かわせるためゴルドの背中を押す。
「分かったよオオ・・・。」
と、口をとがらせいかにも『面倒くさい。』と、言いたげな顔で仕事場へ向かうゴルドを見送るアーウィン。見送った後、いかにも『今、見つけた。』という顔をして、話しかけてきた。
「霊刀に・・・えっと。確か・・・。八雲??君・?」
「あっ。はい。」
「そうか。私の弟が申し訳なかった。あいつは、すぐに人と話たがるからな。迷惑だったら怒ってくれて構わない。」
と、弟の説明をするアーウィン。
「あっ、いえ。全然迷惑じゃないです。」
と、謙遜する八雲。
「そうか。謙遜などするな。これからここの一員になるのだろう。言いたい事は言えばよい。それだけだ。」
と、冷たい言葉で優しい眼をして話かける。
「あっ。・・・はい・」
と、緊張しながら返事をする八雲の頭に手を置き、優しくなでた。
「別に。緊張する必要はない。聞きたい事があれば聞くがよい。とりあえず、よろしく頼むな。八雲。」
と、言って、仕事場へ戻ろうとするアーウィンに八雲が
「あっ!!あのっ!ひとつ質問いいですかっ?!」
と。大声で話しかける。
それに驚いた顔をする霊刀とアーウィン。
しかし、アーウィンは、すぐに冷静を取り戻しすぐに。
「あぁ。いいぞ。」
と、一言返した。
「あっ。あの・・・。名前を・・・。」
と、先ほどとは打って変わって緊張して照れながら質問をした。
「あぁ。そうか。すまなかった。紹介が遅れたな。私の名前はハリウェル・アーウィンだ。仕事では、基本的に討伐部隊にいる。まぁ、討伐しないときは、部屋で書類を片付けているか、外でペンキを塗っている。討伐以外だったらいつでも聞くがよい。あと・・・。そうだった。お前は、弟の名前を聞いているか??」
と、尋ねるアーウィン。
「あっ!!いえ。聞いてはいないですが、迅刀や霊刀が言っていたので・・・。ゴルド・・。さんですよね?」
と、話すと。
「う~~ん。そうだな。いちよ、本名を教えておこう。ハリウェル・ゴヴァンだ。まぁ、みな、呼びにくいから『ゴルド』と呼んでいるからそれでいいがな。他に質問はないか??」
と、優しく尋ねるアーウィンにふるふると首を振る八雲。
「そうか。では、私も仕事を放っておいているのでな。早く仕事場に戻らねばみなに迷惑をかけてしまう。では。何かあったら、いつでも聞くがよい。細かいことは、迅刀や霊刀に聞いたほうが尋ねやすいだろう。霊刀。よろしく頼むぞ。」
と。霊刀の頭に手をやってポンポンと頭をなでる。
「うんっ!!」
と、嬉しそうに返事をして迅刀の行ったほうに駆けだした。