テンペストティータイム
ほのんり百合風味
「お姉様。スコーンが焼けました」
「ありがとう」
お姉様は窓の外を見ながらお礼を言ってくる。
「紅茶はミルクティーにします?」
「なんでもいいわ」
私のお姉様。
「分かりました。じゃあ、ミルクティーにしますね」
私がお姉様の事を知ったのはつい最近。
お姉様と私はずっと離れて暮らしていた。
「お姉様。紅茶が入りましたよ」
先にミルクを入れたカップに紅茶を注いだものを出す。
「ありがとう」
私とお姉様のお父様とお母様は愛し合っていたけれど、事情があって別れてしまい、お父様は私を、お母様はお姉様を育ててこうしているのだ。
「今日はスコーン以外にも薔薇のジャムも作ったんです!!」
お父様は忙しい合間をぬって私を育てくれた。
そんなお父様がよく作ってくれたのだがスコーンだ。
薔薇のジャムも家に咲く薔薇を使ってお父様が作ってくれたものだ。
スコーンと紅茶とジャムは私とお父様の思い出の味。
だから、お姉様に食べて欲しかった。
「スコーンの味はどうですか?」
「おいしいわよ」
お姉様はスコーンを少し齧ってそう言う。
「それは良かったです」
お姉様は食が細いらしく、食事を残してしまう事が多い。
その食の細さにはお父様も心配している。
お姉様は「出される食事の量が多いだけで、ちゃんと食べている」と言っているけれど。
「あなた。いつも私にお茶やお菓子を出してくれるけど、大変じゃない?」
「いいえ! 全然大変じゃないです! むしろ、お姉様に食べてもらえるのが嬉しい限りです!」
「そう」
お姉様は静かに笑った。
だけど、家に来た客人によってお姉様の様子は変わった。
客人は男だった。
男を見る度にお姉様の瞳はきらめいて、頬が色づく。
普段は静かに微笑んでいる事が多いのに。
男もお父様の目を盗んでお姉様に話しかけている。
それに対してお姉様も嬉しそうに笑う。
「……お姉様」
それを見て私の胸の中は嵐のようになった。
嵐も嵐。大嵐。
テンペストだ。
緑目の怪物が起こした嵐が私を包む。
私はあの男に嫉妬している。
お姉様に違う表情をさせたあの男に。
「お姉様! 今日はケーキを作りました! だから、一緒に食べましょ?」
私は今日もお姉様をティータイムに誘う。
あんな奴にお姉様は渡さない。
お姉様。
お姉様。
私が傍にいます。
だから、男などいらないでしょ。
ねえ、お姉様。




