オッドアイズ(短編2)
長編で書こうと思っていた作品です。
作者の実力不足で一向に書ける気がしないので、試しに短編で書いてみました。
そして、シリーズ化。
シリーズ化にしたのは、ちょっと実験してみたいことがあったものですから(笑)。
実力不足ゆえに亀の歩みになると思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
少し前、学校にツチノコが現れたというトラブルはあったが、今は平和に過ごしている。
現に今、夜のコンビニで、双子の妹である雫樹とアイスを買い、食べ歩いて家に向かっている最中である。
それにしても、黒いスーツの謎の男の存在が気になる。名前は知らないが、他に仲間がいるようで、確か『くぐり』と『楓』と言っていたような……不思議な能力を使う仲間がいるのか? 他にあと何人?
隣でアイスを頬張っている妹様をほったらかしでそんなことを頭の片隅で考えていたら、当の本人に声をかけられた。
「はい、お兄ちゃん、あ~ん」
お兄ちゃん大好き重症ブラコンの妹様が、手に持っているアイスを差し出してくる。そんな妹の行動に毒されて慣れてしまった俺は、当たり前のようにアイスにかぶりつく。
アイスの甘味と冷たさが口の中に広がる。キーンと少し歯に沁みる。
「お兄ちゃん、あたしにも。あ~ん」
ひな鳥の様に大きな口を開く妹に、俺のアイスを差し出すと、嬉々としてかぶりついてきた。
「ぐへへへへ~、関節キッスですね」
紛れもなく嬉々としていた……変態的に……。
歩いていると、街灯の蛍光灯が切れかかっているのか、チカチカと点滅を繰り返している。
視線を感じたので、そちらに顔を向けると、何者かが立っている。蛍光灯が一瞬その何者かを照らし、驚愕した。
(熊……か?)
気づいていないと思われる妹の前に手を出し、制止させる。
「どうしたんですか? お兄ちゃん?」
俺は相手に聞かれないように、小声で妹に説明する。
「シッ! そこの影になんかいた。変な奴が……」
俺の声のトーンに合わせて、雫樹も声を潜めて聞いてくる。
「変な奴? 露出狂ですか? それなら『粗末なものを持ってますね? 恥ずかしくないですか? ぷ~くすくす』って言えば、露出狂は泣いて帰るんですよね? あたし、言ってやりますよ! 『お兄ちゃんの方が立派なんだから』って」
妹の変態的な発言を訂正させる。
「いや……それって人として立派って意味だよな? 変な含みとかはないよな?」
「ないですよ~」
否定をしながらも、どこかにやにやとしている。露出狂よりも俺の方が辱められている気がするのだが、それはまあ置いておいて。
「いや、全身毛むくじゃらのやつだ。なんか熊みたいに見えたけど」
「熊? こんな住宅街に?」
「まあ、テレビのニュースとかでも見るけどな。市街地に熊が現れたとか。とにかく、相手に気づかれないようにそっと逃げるぞ」
「……はい、そうですね。ヤバいですね」
熊なら背中を見せていきなり逃げだすのはまずい。
熊の方に正面を向けたまま、二人で後退りをする。
次の点滅で、いたはずの場所に姿が見えない。いや、一瞬見えた。移動する瞬間が!
「雫樹! 気をつけろ!」
妹を庇うように身構える。
すると、暗闇の中、影が迫る。
突然、腹部に衝撃を感じた。そのまま壁に激突した。殴られたような腹と打ちつけた背中が痛い。
「お兄ちゃん! 誰か助けて下さい!」
妹の声が聞こえてくる。助けを求めているようだ。だが、住宅街でありながら、人が出てくる気配を感じない。そんな寝静まるほど夜遅い訳ではないのだが。
痛みに耐えながらよろよろと立ち上がる。
「お兄ちゃん! 助けて!」
声のする方に視線を向けると、点滅する灯りの中に、熊らしきものがコメ袋を担ぐかのように雫樹を肩に担いでいる。
「待ちやがれ!」
俺は駆け出し、熊の腹部にお返しと言わんばかりに、渾身の一撃を叩き込んだ。
謎の熊が倒れた。
「あ、やべ! 雫樹! 大丈夫か!」
「大丈夫です!」
熊から逃れられたのか、俺の方に駆け寄り背中に回り込む。
「お兄ちゃん! あれ、熊じゃありませんよ! イエティ―です!」
「イエティ―? 未確認生物の? この前のツチノコといいなんでだ?」
「はい! 間違いありません。何か不思議なことが起こっていますね」
熊だろうが、イエティ―だろうが、俺は殴り倒せた。普通の人間よりも力がありそうなのにぶっ倒せたということは、また身体能力が上がるという不思議な力が発動しているようだ。
立ち上がろうとしている影が見える。
「今のうちに逃げるぞ!」
「は、はい」
駆け出した途端。
「痛てっ! な? 逃げれない?」
「何か見えない壁がありますね」
慌てふためきながら、ぺたぺたとパントマイムでもしているかのように、何かを触る妹。俺も同じように手をかざす。確かに見えない壁がある。
「くそ! どうなってるんだ? 逃げれないし、騒いでいるのに人が出てこないじゃねーか!」
「お兄ちゃん! 戦うしかありませんよ!」
「……そうみたいだな」
腹をくくり、身構える。相手が普通の人間でないとわかった以上、手加減はいらない。
先手必勝で殴り掛かる。
「おらっ!」
影と化していたイエティ―を殴った瞬間、蛍光灯がその姿を照らした。
ずんぐりむっくりとした灰褐色の毛色。身長が俺よりも少し小さめだが、大きめの口が暗闇故に余計に恐ろしく感じる。
殴った瞬間、イエティ―の体毛が固く感じた。そのせいか、あまりダメージになっていないようで、何度殴ろうが蹴ろうが立ち上がってくる。
こちらの息が上がってきた。
「くそっ! タフな奴だ!」
額の汗を拭うと、俺の言葉に反応するように返事が返ってきた。
「そりゃまあ、タフだよね。もし、イエティ―が熊だとしたら、同じような強さだろうしね」
「誰だ!」
声のする方に視線を向けると、何者かが立っている。
蛍光灯が光った瞬間、その人物が何者であるかを知ったと同時に、少なくともイエティ―が倒されると安堵した。
「試させて貰ったけど、君の力は弱くてがっかりだよ。君の代わりに俺が倒してあげるよ」
恩着せがましいセリフと共に、黒スーツを身に纏った男の右手には光の粒が集まる。その光の粒は、日本刀になった。
次に蛍光灯が光った瞬間、日本刀の刃は、光の残像を残してイエティ―めがけて振られた。イエティ―の首は跳ね飛ばされ、首と胴体が分かれた。そして、血が噴き出すこともなく、ツチノコの時と同じように光の粒となって消えていった。
謎の男の背中に声をかける。
「俺の名は輝月智秋。今はそれだけを覚えておいてくれればいいよ。かなた、結界を解除して」
輝月と名乗った男がそう言った瞬間、「パリーン」とガラスが割れるような音がした。
雫樹が背後から俺の袖を掴む。
「……あたしたちを閉じ込めたのは貴方たちですか?」
「まあね。君たちの力を試させてもらったよ」
「試しただと……」
怒りで頭がかっとなった。
「上から目線で何様だ!」
殴りかかった俺は、投げ飛ばされて景色が回転した。
「お兄ちゃん!」
雫樹が立ち上がろうとする俺の肩と背中に手を添える。心配と気持ちを抑えろと言わんばかりに。少し冷静になり、質問をする。
「……何が起きているか聞きたい」
輝月は顎に人差し指を添えて唸る。
「ん~、イエティ―が送り込まれたってことは、まあ、君たちにも関係することだし、話すべきだろうね」
ごくりと生唾を飲み込みながら、一言一句逃さぬように耳を傾ける。
「アカシックレコードって知ってる」
「アカシックレコード?」
俺の疑問に、雫樹が答えるように口を開く。
「アカシックレコードってあれですよね? 地球の記憶。大昔から今この瞬間までが、地球の上空の磁場に記憶されているとか」
そんな説明をする雫樹に、首を傾げて質問をする。
「地球の記憶を磁場に? パソコンのハードディスクみたいにか?」
「詳しいことはわからないけど、そんな感じです」
再び、輝月が説明の続きを始める。
「そう、そのアカシックレコードにアクセスする力を持つ者がいる。元々才能を持つ先天的な者と、君たちのように後天的に能力が発現する者。その能力者は『オッドアイズ』と呼ばれる。オッドアイズを持つ者で、派閥というかな? 今は二つに分かれている。一つはアカシックレコードを利用して、私利私欲を叶えようとする者達。そして、同じくアカシックレコードの力を持つが、その私利私欲で暴走している者たちを止めようとしている俺たちだ」
オッドアイズと聞き、俺は気づいたら右目に手を添えていた。
前回のツチノコ時、右目だけ赤くなりオッドアイになっていた。雫樹が心配になり視線を雫樹に向けると、同じように左目に手を添えていた。
「……正義の味方を気取っているのか?」
先ほど投げ飛ばされたことの仕返しと言わんばかりに、皮肉を口に出すも、輝月はどこ吹く風で流す。
「そうだね。俺たちは正義の味方だよ」
「じゃあ、なんで俺たちを品定めするようなことをする。正義の味方らしく一般市民を守れよ!」
輝月は、人差し指を「チッチッ」と振る。
「君たちは一般市民じゃないでしょ。オッドアイズの能力者だ。そして、君たちが俺たちの仲間にならないならば、その場合は敵ってことで駆除しなきゃいけない」
その言葉に、再びカチンときた。
「駆除だと?」
今にも飛び掛かろうとしていた俺の腕を、雫樹ががっしりと掴んで引き留める。俺は深呼吸をして頭を冷やした。
「俺たちは誰とも争う気はない。お前らはお前らで勝手に争ってろ」
その俺の言葉に、輝月はニヤリと笑みを返す。
「いや、無理だと思うよ? だって、妹ちゃんがさっき連れ去られそうになったじゃん」
そう言われて先ほどのことを思い出す。確かに俺はイエティ―に殴られたが、雫樹は連れ去られそうになった。
考え込んでいたら、頭上から声がした。顔をあげると、目の前にいたはずの輝月は、いつの間にか屋根の上にいた。
「それじゃあ、今日のところはこれくらいで。それじゃあまたね。かなた、帰るよ」
「はい」
暗闇の中を二人連れが去っていく。一人は輝月。もう一人は少年らしき声と背丈の『かなた』と呼ばれた人物。
俺と雫樹は、その背中を呆然と見送った。
今後、俺たちは平穏な暮らしが出来ないという不思議な予言者の言葉を頭の中で反芻しながら……。
読んで頂きありがとうございます。
長編は難しいので、短編でシリーズ化をしてみました。
……まあ、書けるところを書こうという感じなので、作者の実力がつき次第続編が出せるのではないかと思います。
今のところはこれが精いっぱいです(汗)。
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