表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルドレア戦記  作者: 猪飼 要
第四章
59/82

第33話:神代より ②

はじめ、世界には混沌しかなかった。


善なる神々と悪なる神々がそれぞれの力を注ぎ込み、

渦を巻く混沌はようやく大地へと形を変えた。


善なる神々は光を与え、水を流し、木々を芽吹かせた。

悪なる神々は火を放ち、風を走らせ、雷を落とした。


風は種を運び、光は命を育て、

雷は古き命を打ち倒し、火がそれを焼き、

残った灰に水が巡り、新たな命が芽吹いた。


善と悪の力は巡り合い、世界はひとつの調和を成していた。


──だが、やがて神々のあいだに争いが生まれた。


「どの種を、この大地の中心として栄えさせるか。」


善なる神々は人類を選び、

悪なる神々は魔族を選んだ。


議論は平行のまま結論に至らず、

ついには力による決着が選ばれた。


互いの代表を戦わせ、勝った種をこの地の覇者とする──と。


レベッカは淡々と語り継ぐ。

神話を読み上げるような、感情の波のない声音だった。


「──その代表が“勇者”と“はじまりの魔王”です。

……と言っても、実際には互いの種族の存続を賭けた“総力戦”でしたが。」


エレツィアが目を瞬かせる。


「神々も、随分と乱暴なやり方をなさるのね。

……それで、その争いの勝敗はどうなったの?」


レベッカは静かに首を振った。


「決着はついていません。

かつての“勇者”は“はじまりの魔王”と相討ちとなった。

ゆえに争いは終わらず、今も続いているのです。」


エリアスが眉を寄せる。


「……しかし、“剣聖”は?

その話には出てこないよね。“勇者”とは別なのかな?」


「はい。かつての“勇者”は──

“類稀な剣技”と“癒しの魔力”を兼ね備えた存在です。

対して“魔王”は、“卓越した槍技”と“命を奪う魔術”を操る。

まさに、対の存在でした。」


淡々と語りながらも、レベッカの声音にはどこか遠い響きがあった。


「……ですが、その両方を持つ者は初代の勇者のみ。

原因は分かりませんが、次代からは力が二つに分かたれました。

そのうち“剣の才”を継いだ者──それが“剣聖”。

代々、魔王と争う役目は剣聖に受け継がれたわけです。」


リュークスが腕を組み、小さく呟く。


「だが、魔王と戦わずに終わった剣聖も多いだろ。

その辺りはどうなんだ?」


レベッカはゆっくりと視線を落とし、静かに告げた。


「“勇者”の血筋──現在では、帝国皇族の血を継ぐ者が“本来の剣聖”です。

それ以外の剣聖は制度としての“任命”。

歴代で魔王と実際に争った剣聖を辿れば、必ず皇族出身のはずです。」


室内が揺らぐような静寂に包まれる。


レベッカは一瞬だけヴィクトリアを見た。

だがすぐに瞳を伏せ、その表情を隠した。


「……ですから、本来、今代の剣聖が魔王と争うことはなかったはずなのですが。」


短い沈黙が落ちる。


そして、静かな声が続いた。


「何事にも──例外はあるのでしょう。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ