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アルドレア戦記  作者: 猪飼 要
第一章
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第2.X話:騎士たち、道中にて

時は少し遡る。


帝都から王都へと続く街道を、冷たい風が抜けていく。

馬蹄の音だけが、乾いた大地に響く。

──だが、帝国騎士たちの脳内は春だった。

ふたりの騎士が、雑談に花を咲かせている。


「“王国の花”か……噂じゃ黄金髪の相当な美人らしいぞ。」

「おいおい、また顔かよ。武器でも女でも、とりあえず見た目で選びやがって。」

「戦功を挙げるにはやる気がいるだろ?護るなら、ふんぞり返った貴族のオッサンより美人の姫さん!“やる気”の燃料は大事なんだよ!」

「燃えてんのはお前の理性じゃねぇのか。」


「おいヴィク、お前はどう思う?」


突然話を振られ、前に視線を向けたまま答えた。


「……護衛対象の美醜が、任務に関係があるのか?」


「「ぐえっ!!」」

言った瞬間、変な声を上げふたりは同時に馬上でずり落ちそうになった。そう見せかけている……毎度ながら、芸が細かい。


「そういうことじゃねぇって!」

「なあ、想像してみろよ、“王国の花”だぞ?そんな美人に『ありがとう、騎士様』って微笑まれたらよ……最高だろうが。」

「……微笑まれた経験がないので、比較できない。」

「「だからそういうことじゃねえって!!」」


「まあ、ヴィクと姫さんは女同士だしな〜。」

「分かんねぇかぁ、男のロマンってやつはよ。」


「……なんだか知らんが、酷く侮辱されたような気がする。」


軽く睨みを利かせると、空気が一瞬で凍った。

馬が鼻を鳴らし、ふたりは慌てて馬を並べ直す。


「あ、あー悪かった!言葉のあやだ!」

「お前も見りゃわかるよ!本当の美人ってのはな、目の保養なんだって!」


「…………。」


手綱を握り直し、ため息をひとつ。

会話はそれで終わった──はずだった。

だが、如何に剣聖と言えども、騎士たちの胸中までは黙らせられない。


((まあ、ヴィクトリアも相当な美人なんだけどなぁ……))


風が彼らの苦笑を運んでいった。

馬蹄の音だけが、乾いた道に響く。


空の彼方で、雷鳴のような音がかすかに響いた。

それが“嵐の兆し”であることを、誰もまだ知らなかった。

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