表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

朝の涼しさ



 翌朝。校門に向かう道の途中で、見慣れた後ろ姿を見つけた。肩まで伸びた髪が、朝の光を受けてやわらかく揺れている。


 「……おはよう、藤崎さん」


 声をかけると、彼女が少し驚いたように振り返った。けれどすぐに、昨日と同じ、あの穏やかな笑みを浮かべる。


 「おはよう、結城くん。……なんだか最近よく会うね」


 からかうように言われて、思わず頬をかいた。ほんの偶然なのに、いや、たぶん自分が少し意識して早めに家を出ているだけなのに――それを口に出す勇気はない。


 「たまたまだよ。……でも、こうして一緒に歩けるのは悪くないな」


 その言葉に、美桜は小さく目を細めた。朝の光の中で、彼女の笑顔はまるで透明な水面のきらめきみたいに、静かに胸に沁みてくる。


---


 通学路を並んで歩く。秋の空は高く澄み渡り、冷たい風が頬を撫でていく。ふと見上げると、街路樹の葉が色づき始めていて、道に落ちた落ち葉を踏むたび、かさりと乾いた音が響いた。


 「昨日のおでん……なんか、まだ夢みたいだったな」

 「え?」

 「いや、コンビニの駐車場で食べるなんて、普段なら考えないじゃん。でも、すごく楽しかった」


 言葉にしてから、自分でも少し照れくさい。けれど、美桜は嬉しそうに頷いた。


 「うん、私も。……また、やりたいな」


 その一言に、胸の奥が一気に熱くなる。風は冷たいはずなのに、体の内側だけじんわりと温まっていくようだった。


---


 校門をくぐるころ、ちょうどチャイムが鳴った。周囲の生徒たちが慌ただしく校舎に入っていく中で、二人の歩調は不思議と揃ったまま。


 「じゃあ、また放課後ね」


 彼女が手を振って教室へと向かっていく。その背中を目で追いながら、日向は思った。


 ――また一緒に帰りたい。昨日の続きのように、今日も彼女と時間を過ごしたい。


 そんな想いを抱えたまま、一日の始まりを迎えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ