彼女の横顔
今日はたまたま、二人とも部活動がなくて、一緒に帰れた
確か、藤崎さんはバレーボール部だったかな、俺はバドミントン部で
部活をやるときは同じ体育館だけど、今日は卓球部とバスケ部が大会が近いので、優先的に使っているという状態だ
「ねぇ、寄り道しないって言ったけどさ、ちょっとだけいいかな?」
「うん大丈夫だよ、どこにいくの?」
「ちょっと寒くなってきたじゃん、だからおいしいおでんが食べたいなぁって、いっしょにどう?」
おでんか、確かにもうすっかり秋だ、この前までは秋の陽気は感じていたが、まだまだ夏の余韻を残していたが
もうあたりは暗くなり、前のような19時まで明るくて遊んでいた季節が懐かしい
今では長袖を着るのがちょうどいいほどの気温だ
一週間前までは半そでを着ていたのに
「わかるかなぁ、おでんってさ結局コンビニおでんが一番おいしくない?」
「確かにね、ちょっとわかるかも…それでさ駐車場とかで座って食べるのが…」
「そうそう!なんか、青春って感じ?」
「そうそう!なんか、青春って感じ?」
ふたりで顔を見合わせて笑った瞬間、白い息がふっと夜の空気に溶けていく。
街灯に照らされたアスファルトは冷たく光り、近くを走り抜ける車のライトが、一瞬だけ俺たちの影を伸ばしては消していった。
コンビニのガラス戸を開けると、ふわっとあの出汁の香りが押し寄せてくる。
鍋から立ちのぼる湯気は、秋の夜にあまりにも優しくて、思わず体がほぐれる。
「わぁ、あったかそう…」
藤崎さんの声が少し弾んで聞こえる。
俺もつられて笑みがこぼれる。
大根、ちくわ、たまご。
透明なカップに、どれを選ぶかで小さな駆け引きがあって――結局、藤崎さんは迷わず大根を選び、俺はなんとなくごぼ天を取った。
会計を済ませて外に出ると、冷たい夜風が肌を撫でる。
でも、手に持ったおでんカップの温かさが、その冷たさをすべて打ち消してくれる。
駐車場の端、街灯の下に腰を下ろすと、ほんのり湿ったアスファルトの匂いと、出汁の香りが混じり合う。
遠くで誰かの笑い声が聞こえて、近くの自販機のライトが淡く夜を照らしていた。
「ね、やっぱり…こうやって食べるのが一番でしょ?」
藤崎さんが割り箸で大根をつつきながら、目を細めて笑う。
俺は思わず、その横顔に見とれてしまった。
秋の夜風よりも冷たいものが、胸の奥で少しだけきゅっと鳴った気がした。




