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もどかしい午後。軽い荷物を持って、僕は家を出た。駅に向かう途中、老人の住む家の前を通った。
その人のボケた眼差しを横目に、僕はさっと通りを過ぎた。ーーあれは昔のことだから、分かったつもりでいるんだーー道はがらんと、寂しくて、自由だった。
今感じている切ないこれは、もはや生ではなく衰退だった。
少し前にふとよぎった、昼間の空に隠された、星々が見える気がした、あの夜の頃の夢。美しい人が僕を呼んでいた。その子は永遠とか、終わりとか、そういうことも一切ないような、きれいな世界を生きていた。