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おっきいってことはいいことだね! そのよん。

おっきいってことはいいことだね!篇はこれで本編〆です、あとおまけを一話UP予定です

そしたら今度はちっちゃいってことは~篇に入ります、こっちもそんな長くない感じで

「え!魔法使いの先生やっと来たの?!」


「はい、彼がわたしの師です」


「……どこに?」



あたしの手の上には、イェルフラウ殿下一人しかいない

足元をよーく眼を凝らして見回してみてもそれらしい姿は見えない



「よく見て下さい鈴子さん、ここです」


「ここってどこ……え?」



殿下が、ここです、と自分の手のひらを強調する

え、なにその2~3ミリの……



「え、まさか、そ、その手の上の?!」


「はい、丁度わたしと鈴子さんくらいの体格差でしょうか

 師の話によると世界的には大体彼くらいの大きさが一番多いらしいです

 わたしたちの種族は妖精の中でも比較的大きい方なので」



比較的ってサイズじゃないでしょぉぉぉおおおおお!!!

ってゆうか、え、妖精?!


妖精ってサイズじゃないでしょソレ、ティン●ー・ベルに申し訳が立たないよ!

ファンタジー台無し!!



「……なるほど、鈴子さんどうしますか?」


「え? 何が??」


「おや? 聞いていませんでしたか?」


「え? 何か言ったの??」


「はい?ああ、それもそうですね

 わたしと鈴子さんの会話は成立するのですっかり失念していました」


「魔法使いの先生が何か言ったの?」


「はい、しかし貴女には聞こえない大きさの音なのでわたしが伝えますね」


「いやだって世界一の魔法使いなんでしょ?

 魔法でちゃちゃーっとならないの??」


「なりますがわたしという夫がいるのですからわたしが伝えればいいだけのことです」


「はぁ…そう、……ですか」



何故に息継ぎなしで言い切るのか





「え? 歪んでるっ……て?」



殿下の通訳によると、あたしはこの歪みの多い世界に来てしまった関係で、偶然にも歪んでしまっているんだそうで…

あたしの身体が大きいのはそのせいで、マトモにこっちへ来れていた場合、魔法使いの先生と同じぐらいの大きさになるはずなんだそうで……

このまま向こうへ戻っても元の大きさに戻る確率は低いんだそうで……


えぇぇぇぇぇぇー……


それで殿下が聞くところの、どうしますか? というのは、

空間を歪ませてあたしの世界と繋げた道を通って帰ることが可能なんだけれども

選択肢1としては、歪んだ空間を通る時に圧力を掛けて無理やり歪みを矯正するか

選択肢2として、こっちであと五年ほど掛けてじっくり矯正していくか、そのどっちか……


勿論、選択肢としては1!と大声で言いたいところだけど、それにはやっぱりリスクがあって、

無理やり圧力を掛けて矯正するので、あたしの身体の密度が異常に高くなるんだそうで

そうなると常に高血圧とかまぁ他にも色々弊害が……

まぁ魔法薬で大分症状は緩和されるものの、完治するにはやっぱり予想では五年ほど掛かるらしい……


でも、五年もこっちで過ごしてたら当然弊害だって出るし

勿論、食べるものとか衣類とかの話しもあるんだけど、それ以上に問題がある

向こうへ戻る時にはこっちへ来てしまった日の次の日あたりに送ってくれるらしいけど

当然あたしだって五年分歳をとっているんだし、外見だって五年経ったら結構変わるし

何より、早く帰って赤ちゃんに戸籍を作ってあげたいし!


確か出生届って生まれてからえーっと……一週間以内だっけ? それとも二週間??

まぁ兎に角その合間に届けを出さなきゃいけないんだし




というわけで、あたしは今、開けた平野にがりがりと樹を引っこ抜いて作った棒で魔方陣を描いている

……最初は魔法使いの先生の指示を殿下があたしに伝言してそれに従って書いてたんだけど、

思ったよりも線がイビツというか芸術的になったもんで、イラついた魔法使いの先生に身体を操られて順調にがりがり描いています



次に、殿下が魔法使いの先生の指示に従って、あたしの額と洗濯籠に染料を使って紋様を描いてくれる

これで準備はOKらしい


お世話になったことのお礼やさよならの挨拶はもう済ませてあるし、洗濯籠もちゃんと魔方陣の中に置いた


よし



「殿下、赤ちゃんを」


「はい」


「殿下?」


「はい、何でしょう鈴子さん」


「……何で赤ちゃんを渡してくれないの?

 何であたしと並ぶように魔法陣の中に立ってるの??」


「いやだな、何を言っているんですか鈴子さん

 夫婦なら一緒にいるのは当然じゃないですか」


「えー…あー…はい、…そうです……ね?」



そう言えば、あまりに自然に言うから気にならなかったけど

あたし達別に結婚とかしてないよね?

いや、王様と王妃様たちに報告は……報告してるじゃん?!


え?!


あれで結婚したことになってるの??!!





眼を白黒させているうちに、唐突に浮き上がるような

なんて表現したらいいのか…そうジェットコースターの下りの時とか

エレベーターで降りる時とかに感じる、あの妙な感覚と共に、あたし達は宇宙空間のような場所にいた



あたしは、やっと違う世界に来ていたんだと思い知る



ちりばめられた宝石のような小さな瞬きが頭上にも足元にもどこまでも続き

見渡そうとすれば、あまりのスケールの大きさに頭がくらくらとしてくる

来る時はシーツを被ってたから分からないけど…きっとその時もこんな感じだったんだろう


あたしのすぐ傍では、殿下とその腕の中の赤ちゃんが徐々に大きく……

うぅん、あたしが……あたしが徐々に小さくなり



彼は嬉しそうに微笑むと



とても……とても大切そうに、あたしと赤ちゃんを抱きしめてくれた






……が。






「う゛ぉえ゛ぇぇ…ぎぼぢわるい゛……」



ときめいたのも束の間で

次の瞬間にはあたしは酔いどれの中年サラリーマンのように吐き気に悩まされていた

くそう、辛いのってあたしだけ?



「大丈夫ですか鈴子さん、

 薬を飲んで暫く横になっていた方がいいですね、寝室はどこでしょうか?」


「しんしつっていうか……」



ベッドなんてない、ウチは布団だ、貧乏だもん

殿下になんとか説明して布団を押入れから出して敷いてもらうと

彼はゆっくりとあたしの背中を布団に沈めると、すぐ隣に赤ちゃんを寝かせてくれた


赤ちゃんの顔をちゃんと見たのは初めて


だってあたしに合ったサイズの虫眼鏡なんて無かったし

指先で軽くちょん と触ることはあっても、こうして頭を撫ぜてあげられるのが嬉しい


……気分は二日酔いだけど




水道の蛇口の話なんかは、向こうにいる時に色々話していたから分かったらしく

殿下がコップに水を汲んできてくれた



「これで薬を飲んでください」


「ありがとう」


「いいえ、ところで砂糖はどこでしょう?

 少し頂いてもかまいませんか?」



砂糖?

何に使うんだろう、と思いつつも

あたしは砂糖の場所と外見を教えた


ウチの砂糖は、シュガーボックスになんて入ってない

袋の上部を切り取って口を絞り、洗濯バサミで捻った部分を留めてあるだけだ


……多少湿っても料理の時は結局溶けるんだから問題なし!




殿下は砂糖を見つけると、袋の中に一緒に入れてあったプラスチックの計量スプーンでそれを掬って自分の手の平に二杯ほど乗せ、スプーンを袋の中に戻すと、空いた片手でぎゅっと砂糖の乗った手に蓋をするように握った



「?、なにしてるの……?」



彼が聞き取れない言葉で何かを呟くと

ぎゅっと握った手の隙間から、ブシュ! と高圧の蒸気が噴出し、一瞬炭のような匂いがした

そして殿下がそっと手を開くと、中にはころりとまぁるい透明の石があった



「??、それ……なに?」


「師の話によるとダイヤモンドという宝石らしいです」


「ダイヤ?!」


「はい、わたしはこちらで金銭的価値に繋がる物を持っていません

 向こうから貴金属を持ってきても良かったのですが、

 向こうには存在しない物質で出来ているからそれはやめた方がいい、と

 ですから代わりにこの宝石のことを教えていただきました」



そう言ってあたしの手の平にダイヤを握らせると、

彼は自分のハンカチを濡らして、あたしのおでこに乗せた



「あなたの具合が良くなったら、これを換金しにいきましょう

 確かこの家は借家という話しでしたよね?

 換金したお金で家賃を一年半分払っておいて、一度向こうに戻り

 今度は一年と五ヶ月後の今日にまたこちらへ戻ってきましょう」



流石、頭がいいな、と朦朧とした頭で感心する

だってそうすれば、昨日までお腹がぺっちゃんこだったあたしに突然子供が!、なんて事態もなくなる



翌日にはなんとか具合も良くなり、あたしたちは宝石店でダイヤを買い取ってもらった

流石にこんなに大きな石だと、どこかから泥棒したとか思われるんじゃ、とかびくびくしてたけど

そこは殿下の滲み出る王族オーラで全然心配することは無かった


ダイヤは結構な金額に化け、それで家賃を払っても残額に大した変化はないくらいだった

ただし、貧乏人根性が染み付いてるあたしにとっては一種の恐怖も感じさせられたけどね


大家さんに暫く家を空けるので管理を頼むと、その後は流石に魔法の幻覚で誤魔化すのも心苦しいので殿下の服とベビー服や哺乳瓶なんかを買い

それから殿下の希望でこっちのことを勉強するために、ネットカフェに丸一日入り浸った……


流石に向こうでちょっと教えただけの日本語じゃ最初ネットサーフィンはもたついてたけど、それも少しの間のことで

彼に質問されたのは片手で足りるくらいの回数で、気がつくと彼はもうパソコンを使いこなしていた……


良かった、あたしパソコン苦手なんだよね……


仕事の方も休職届けを出して三日後

彼はどこから調達してきたのかエンゲージリングを用意してきてあたしの左手薬指に填め、そのまま写真館まであたしを連行するとドレスを借りて結婚写真を撮って満足したらしく

その日の午後、あたしたちは一度、向こうの世界へ戻った




そして次の日




「え?じゃあ今回向こうへ帰ればもうこっちとの行き来は自由なの?」


「はい、わたしの私室と納戸の向こうを繋げて固定しますから」


「そうなんだ、良かったね」


「はい、でもあまり公にしていいものでもないですから

 わたし達の血にだけ反応するようにします」


「それもそうだね」



誰でも行き来できる、というのは やっぱり危険だとあたしでも思うもん



最初ゲートをくぐってから、あたしの身体は完全に矯正されたらしく

こっちの世界へ来ても、もうあたしの大きさは特別大きいなんてことはなく、皆と一緒だった


それが凄く嬉しかった




「鈴子さん、行きましょう」


「うん」




時間軸的には一年と五ヵ月後、あたしたちは早速市役所に向かう

彼はあたしと出逢ってからの日数を正確に覚えていたらしく、そこから逆算して赤ちゃんの誕生日も割り出すことができた



「出生届けはわたしに書かせていただけませんか?」


「いいよ、書ける?」


「漢字は第ニ水準まで書けるようになりました」


「……そうなんだ」


「はい」



自信たっぷりに頷いた彼から赤ちゃんを抱き取って代わりに用紙とペンを渡す

この子は婚外子だから父親の欄に名前を書けないんだもん、これくらい……ん?



「父、小早川イェルフラウ……?」


「はい、前回来た時にちゃんと入籍しておきました」



嬉しそうに着々と出生届を書く彼を眼をまるくして凝視する



だ、だって



「殿下…戸籍なんて……」



イェルフラウ殿下は、あたしの疑問ににっこりと微笑み

公共の場所だからか、こっそりと小さな声で答えてくれた




「勿論、買いました」




どこからどうやってぇぇえええエエエエ゛エ゛エ゛エ゛ッッ?!






こうしてあたしと殿下と赤ちゃんのハラハラ新生活の幕は切って落とされたのであった!

砂糖からダイヤはできるらしいですね炭素繋がりで、理屈はよう分かりませんが、普通の家に炭ってあんま無いと思うんで砂糖で、これなら余程でない限りどこの家にもありますよね


魔導師の話しが本篇でこれは同世界設定の一部を使った小篇扱いの話なんで魔導師は名前も出ません

っていうか喋りもしない<笑


本編はこの話しほど軽くは無く、もっとまじめな内容を目指していて視点を出来るだけ分離させたいです

残酷表現をどこまでにするかが悩みどころです

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