ちっちゃいってことはたいへんだね! そのに。
似たような名前を考えるのって大変……
俺の名前はヴェルースト、この国を牛耳る悪魔…じゃなくて、イェルフラウ殿下に仕えるバテューストの息子だ
現在俺はお仕えしているリュフラウム様にお借りした書物を返しに行くところだ
リュフラウム様はイェルフラウ殿下のご子息で……
俺が九歳の時、イェルフラウ殿下が生まれて間もないこの方を連れてこられた時、幼いながらも俺は人生終わったな、と悟ってしまった
まぁ分かるだろうとは思うが、人柄は……
従僕を務める俺にはそんなこと口が裂けても……!
ところで彼は向こうの世界とを行き来している関係で、たまに面白いものを見せてくれるのだが
そうでないものを見せてくれることの方が圧倒的に多い
先日はホラー小説をこちらの言葉に訳したものを読ませていただいた……素直に言うが、面白かった
そんなことが2~3度続き、すっかり油断していた
まさか、妻が身重で絶対安静の今、官能小説を読まされようとは……!!!
序盤推理ものだったせいか、瞬く間にのめり込み、気がついた時には官能パートだった
読むのをやめたいが、犯人が気になって読むのをやめられない
最後だけ読んでしまうなんてこと、できようはずもない……
ちくしょう、官能小説のクセに凝りすぎだ、仕事の関係で稀に向こうへ行く機会のある俺だから向こうの名称も大体分かる、そんな俺にこの引き込まれるような描写……
連続する殺人、高まる官能の波、妻は絶対安静……あぁぁぁあああアアアアア!!!
……眠れなかった
真冬なのに冷水に頭まで潜ってみたが、全く効果が無かった……!
「やぁヴェルースト、三日ぶり」
「リュフラウム様、本日はこちらにおいででしたか
こちらを……、先日お借りした本です」
「どうだった?」
……どうもこうも!
しかし、ここで反応を返せば助長するだけ、我慢だぞヴェルースト
「とても面白かったです」
「そう、じゃあこれ」
「? なんですかこれは」
「原稿用紙だよ、最低10枚以上感想文を書いて僕に提出」
「……。」
くっそぉぉぉおおおおおおお!!
書けってか!
妻に手を出すに出せず悶々と男盛りの三十代の夜をあぶれた雄犬のように遠吠えするしかなかったあの夜を原稿用紙に延々赤裸々綴れってか!!
うぅぅ…毎度の事ながら眼から汁が……
さり気なく汁を拭き取りつつも、我々の居る回廊から眺められる庭園に精神の安定を求めて視線を向けると……
あぁぁ、また騒動の種になりそうな光景が……!
鈴子様がお嬢様方とこそこそと何かを話し合っている
よくよく眼をこらして見てみると、その手の上には小さな人影があった
我々はこの大きな身体のせいで外敵からの攻撃を受け易い関係から、逸早く危険を察知できるよう大抵の者は人間に比べて視力がかなり良い
そのためよく見えるのだ
鈴子様の手の上の人影が、女性で
しかも雰囲気が鈴子様に良く似ている、見た感じ、年齢的にも丁度良さそうな……
生贄候補が……!
「リュフラウム様、そういえば先日のホラー小説が面白かったのですが、
同じ筆者の本は他にはないのですか?」
「うん? そうだね…どうだろう、調べてみるよ」
「本当ですか? ありがとうございます」
注意を……
「ところで、毎回翻訳していただくのは心苦しいので向こうの文字を習いたいのですが……
言葉は魔法を掛けていただけるにしても、文字が読めれば大分良いでしょうし」
「文字か…何か教材でも探してみようか、
とりあえずあいうえお表に振り仮名でも振ればいいかな」
「そうしていただけるとありがたいです
では、お願いしてもよろしいでしょうか?」
「いいよ」
注意を向こうに向けないようにしなければ……!
「ところでヴェルースト」
「はい、なんでしょう」
「普段から僕等の立場以上に気をつけ、絶対に僕には頼み事をしない君が、
僕に迂闊に変な思いつきをさせないために普段は口数の少ない君が、
こんなに饒舌なのは、……何故だろうね?」
「うお?! な、なにを、」
「分かってる分かってる、あっちに僕に見せたくないようなものがあるんだろう?」
ぎゃぁぁあああアアアーッ!!
俺のばかやろぉぉぉぉおおおおおおーッッ!!!
全体的に第二世代へ…そして息子も受難の男<笑