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あなたはずっと私の心の中にいる  作者: 田鶴


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78.エピローグ

「ユージェニー、王宮の謁見の間からエドワード殿とアンヌス伯爵夫人が遺体で見つかった」


「そうですか・・・ルクス王国の王族も殺すつもりはなかったのに――最期まで馬鹿な(ひと)ね。よいことも悪いことも生きてさえいれば、なのに・・・」


ユージェニーは後半の言葉を囁くようにつぶやいたので、ルイには聞こえなかった。


「お前もルクス王国の王族だったからな。でもそれももう縁が切れてさっぱりした!だが、あいつは最期までお前を軽んじた!腹立たしくないか?」


「お兄様、私は随分前にもうあの方を見限っていたのです。一度は愛した方ですから、亡くなって悲しいとは思います。でもそれだけです」


「そうか・・・お前は強いな。これは遺体と一緒に見つかった。教会に提出するか?」


ソヌス王国王ルイがユージェニーに見せたのは、エドワードが謁見の間まで持って行ったユージェニーとの離婚申請書だった。ルイはステファニーとエドワードの婚姻届とステファニーとエイダンの離婚申請書ももう片方の手に持っていたが、そちらはくしゃりと握りつぶしていた。


「教会に提出するまでもないですわ。あの方はもう亡くなったのだから、私は自由」


「離婚申請書を出さないとお前は未亡人という扱いになるがいいのか?」


「未亡人でも、離婚経験のある女性でもどちらでも私は構いません。でも、死後の離婚申請は色々面倒だと聞いています。そんなことに労力を割くよりも、ルクスの復興が先です」


「そうか、お前は王妃だったからな。ルクスを総督として治める気はあるか?」


「まぁ、本当に?!是非とも!」


「だが正式決定は、重臣会議で可決されてからだ。まぁ、お前の実績で否決されることはないと思うがな。それよりも再婚相手を探すか?」


「いいえ、結婚はもう結構ですわ!」


ルクス王国はソヌス王国に併合され、ソヌス王国から総督が派遣されることになった。その初代総督には無事に重臣会議で承認された王妹ユージェニーが就任した。在任中、彼女は結婚に懲り懲りだった考えを一転させた男性と再婚することになる。


ソヌス王国は、女性でも財産や家督を相続できる本国の法をルクスでも適用し、品種改良や農地改革も行って民衆の生活水準を上げたので、人々はソヌス王国の支配を喜んで受け入れ、民主化運動は下火になった。


教会の教えでは自殺は罪であるので、エドワードとステファニーは獄死とされた。彼らは後の歴史書で『愛欲に溺れた愚王』と『ルクス王国最後の王を誑かした稀代の悪女』と呼ばれた。そこに至った遠因であるステファニーの誘拐事件については何も記されることなく、人々の記憶には2人は愚王と悪女としてしか残らなかった。


******


それから200年後――ソヌス()()国首都の国立博物館は、とある学校の生徒達の社会見学を受け入れていた。


あどけない顔をした少女達が、次の展示室へ進むクラスメイト達を横目に、古い文書の展示ケースをのぞき込んでいた。


「あっ、これってこの前、歴史の授業で習った『愛欲に溺れた愚王』と『稀代の悪女』の婚姻届じゃない?なんだかくちゃくちゃに皺寄ってるけど」


「プハッ、『愛欲に溺れた』って!何それー!そんな風に教科書に載ってるわけないでしょ?!」


「そうだっけ?この2人って最期まで結婚できなかったんだよね?」


「ダブル不倫だったからねー」


「でも王様って妾が選り取り見取りだったんじゃないの?」


「そうだろうねー」


「ねえ、見て見て!このダイヤの指輪綺麗!でっかい!いくらするんだろう?」


「きっととんでもない値段だよ。代々ルクス王国の王妃に伝わってた指輪なんだって」


「でもこの指輪、悪女が死んだ時につけてたって書いてある」


「ええーっ!王妃じゃなかったのに?」


「図々しいよねー」


「もうそんな指輪、縁起悪くて付けられないね」


「買えないからそんな心配いらないって!キャハハハ!」


本当!と少女達は声を合わせて叫んだ。その途端、大人の見物客にじろりと見られて声を潜めた。


「ねえ、見て・・・離婚申請書もある・・・ルクス王国最後の『愚王』と後に総督になったお妃様のと、悪女とその夫のだって――どれどれ、悪女の夫のサインは入ってないって書いてある」


「やだなー、そんな結婚!」


いつの間にか再び声を大きくした少女達はまたキャハハハと笑いながらクラスメイト達を追って去っていった。婚姻届と離婚申請書、ダイヤの指輪が並べられた展示ケースは再び静寂に包まれた。

最後までご愛読ありがとうございました。物語的にはこのエピローグで終わりですが、脇役キャラ達がどうなったのか知りたい方々に向けて蛇足的エピローグがもう1話あります。ちなみに番外編や別の話のネタも入っています。

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