68.孤独の悪夢
庭園での薔薇鑑賞以降、エドワードがステファニーの部屋に来ることが頻繁になった。
「陛下、どうされたのですか?随分お疲れのご様子ですね」
「心配してくれるのか?」
「それはもちろん」
「臣下として?それとも恋人として?」
「し、臣下として、です」
エドワードはステファニーの頬を両手で触れ、自分の額を彼女の額にコツンとぶつけた。
「恋人として心配するのは無理でも、国王じゃなくて、エドワードという個人を心配してもらえたらうれしいよ・・・」
「そ、それはもちろん。私はエドワード様個人を心配しています。最近、顔色が悪いですね。眠れていないのではないですか?」
エドワードはげっそりしていて目の下のくまがひどい。
「ここのところずっと悪夢を見て眠れないんだよ」
「ソファで少し横になって休まれてはいかがですか?」
「どうせ悪夢で眠れないし、すぐに執務に戻らなくては・・・」
「悪夢にうなされたら私がすぐに起こしてさしあげます。目を瞑って横になるだけでだいぶ休めますよ。そんな疲れた状態でははかどるものもはかどりません。いっそのことちゃんと休憩をとったほうが仕事ははかどります。さあ、横になって下さいませ」
「それじゃ、膝枕をしてもらってもいいかな?」
「え・・・」
「そうしたら悪夢を見ない気がするんだ。だめなら執務に戻るよ」
ソファからフラフラと立ち上がろうとしたエドワードをステファニーは引き留めた。
「・・・それなら、今回だけ」
疲れた顔を途端に輝かせてありがとうとエドワードは礼を言い、ステファニーの太腿の上に頭を乗せてソファに横になった。しばらくするとスースーと規則正しい息が聞こえ、エドワードが眠ったのがわかった。
(こんなにすぐに眠れるなんて、よほど疲れているのね。お気の毒に)
彼の頭を乗せている太腿が痺れてきても、ステファニーは動いてエドワードを起こしたくなかった。だがステファニーの思いとは別に、エドワードは大量に汗をかき、呻きだした。どうやらまた悪夢を見ているようだった。
「・・・ま、待ってくれ!俺を独りに・・・しないで!」
自分の叫び声でエドワードは目を覚ました。
「はっ・・・また夢だったか」
「大分汗をかかれましたね。侍女を呼んで着替えませんか」
「いや、いい。自分で着替える。それよりステフィーの膝枕で眠れてすっきりしたよ。ステフィーがいると安心できるみたいだ。今晩から君と一緒に寝てもいいか?」
「だ、だめです!私は一介の臣下の妻です。それに結局うなされて起きましたよね?」
「あれはよく眠れたほうなんだ・・・」
「そうなのですか?!」
「皆、僕の元を去って僕は孤独になって最後は独りで自害して果てる・・・そんな夢だ。でもそれは夢じゃなくて本当にそうなるんだ!」
「いえ、陛下は死にませんし、孤独でもありません。王妃陛下やリチャード様は陛下と共にいらっしゃるでしょう?私も微力ながらも陛下のおそばにいます」
「ユージェニーは僕をもう見捨てている。リチャードもそうだ。僕はもうずいぶん2人と話していない」
「そうですか・・・でも私はおそばにいさせていただきます」
「ありがとう・・・だからね、お願いだ、今日から君と同じ寝台で寝ることを許してくれ。君の嫌がることはしないから。そうしたら少しは安心して眠れると思うんだ」
ステファニーは、その夜からエドワードの懇願で仕方なく同じ寝台で眠ることになった。
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