66.決別
エドワードはリチャードとその補佐ヴィクターを執務室に召し出した。ヴィクターもエドワードの側近で、リチャードを補佐している。
エドワードは長年の親友で側近でもあるリチャードをもはやファーストネームで呼ばなかった。
「フィデス侯爵、そなたがステファニーを攫ったことはわかっている。罷免だ!」
「陛下、私はアンヌス伯爵夫人を攫ってはおりません。夫人は『王妃の話し相手』を辞めたがっておりました。本人の希望により保護しただけです。ほとぼりが冷めたら自宅へ帰らせる予定でした」
「それが攫ったということだ。そなたには失望した。もう顔も見たくない。今すぐ出て行っていけ」
「・・・そうですか。かしこまりました」
「お前も退出しろ」
ヴィクターも退出するように促され、2人はすぐにエドワードの執務室を出て行った。
「こんな仕打ちってないじゃないですか!侯爵閣下は今までずっと陛下を支えた臣下というだけでなく、盟友でもあったはずです!愛欲にかまけて長年の縁を切るなど、私は陛下に本当に失望しました!」
「言葉に気を付けろ。ここは王宮の廊下だぞ」
「申し訳ありません。つい我慢ができず・・・」
「執務室を片付けるから手伝ってくれるか?」
2人は宰相の執務室に入ったが、リチャードは片付け始めずにヴィクターに座るように促した。
「実は私も陛下には失望した。長い付き合いゆえ、主と臣下というだけでない深い友情があると思っていた。でも陛下はステファニー様と婚約解消してから、段々変わっていった。正直言ってまだ情があるから辛いが、陛下はもう・・・国王には相応しくない」
「それではどうなさるおつもりですか?」
「ヴェル公爵家のヘンリー様を次代の王に担ぎ上げようと思う」
「ですが両親のヴェル公爵夫妻は権力欲の塊です」
「でも祖父の大公閣下は欲のない正直なお方だし、ヘンリー様自体は大公閣下と同じように温厚な性格で優秀な子供だと聞いている」
「でもヘンリー様は公爵家嫡男で夫妻には他に子供がいません」
「そんなもの、ヘンリー様が子供を2人以上持ったら養子に出せばいい。無理なら遠縁からだって喜んで公爵家に養子に出すだろう?」
「それもそうですね。でもヘンリー様はまだ10歳です。彼が即位すれば両親が後見人になるでしょう?大公閣下はもう高齢で後見は無理です」
「だから陛下をあと5年もたせるんだ。私は陛下に土下座してでも宰相の座を死守する。君も協力してくれ」
「わかりました」
リチャードは大公と連絡をとり、ヘンリーを次代の王に推すことを伝えた。だが、国王夫妻やヴェル公爵夫妻に知られないよう、全て内密に事を進めた。リチャードはまだユージェニーを仲間に引き入れるべきかどうか迷っており、当面の所はユージェニーにも計画を打ち明けないことにした。
リチャードは実際に土下座する勢いでエドワードに謝罪し、罷免を撤回させた。なので、ステファニーの再度の監禁についても見知らぬふりをするしかなくなり、ステファニーは王宮内での味方を失った。
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