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あなたはずっと私の心の中にいる  作者: 田鶴


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62.アウトムヌス公爵夫人

『王妃の話し相手』に選ばれたアウトムヌス公爵夫人は、気位の高い典型的な高位貴族女性である。夫の公爵とは政略結婚で冷えた関係にある。公爵は婚前に没落貴族令嬢だった愛人との間に男の子を設けており、将来的に引き取って後継ぎにするつもりなので、正妻との間に子供を作る必要性を感じていない。


貴族派筆頭のアウトムヌス公爵は、妻が『王妃の話し相手』になったら王の愛妾にさせて王家の深部を探らせようと思っていた。公爵夫人は普通に見れば美しくまだ若くて魅力的だから、十分王の愛妾になれるだろう。それに対して夫の公爵に抵抗感は全くなかった。公爵夫人のほうも、美丈夫の国王の愛妾になれば、愛人に夢中な夫に一矢報いることができるだろうと思ってその計画にまんざらでもなかった。


いざアウトムヌス公爵夫人が王宮に参じてみると、国王は元婚約者を『王妃の話し相手』としてわざわざ召し上げていて彼女に執着している。アウトムヌス公爵夫人が国王の愛妾になるチャンスなどないように思えた。それに加えてトパルキア子爵夫人とカエルム男爵夫人のような、貴族女性としてのマナーもなっていない貧乏貴族の夫人と一緒くたに『王妃の話し相手』として扱われることに我慢がならなくなっていった。


そんなある日、アウトムヌス公爵夫人は王妃ユージェニーから個人的な招待を受けた。王妃の応接室に招き入れられ、ソファに座るよう促された。


「陛下、今日は格別にご招待いただきありがとうございます」


「フフフ・・・今日は楽しくお話しましょう。楽にしてちょうだい」


「ありがとうございます。こうして『王妃の話し相手』にならなければ、貴族派の私どもが王妃陛下とお話できる機会などなかなかございませんでしょうから、発案された国王陛下には本当に感謝してもしきれません」


「陛下にとっては『王妃の話し相手』のご夫人方を王宮にご招待することが何よりも重要だったみたいですから、実現して本当によかったですわ」


最初の会合では、2人は皮肉の裏に本音を隠して会話していたが、何度か会ううちに打ち解けていき、共和国化阻止運動の同志のような仲になっていった。ルクス王国貴族派と共闘することになり、ユージェニーはミッシェルとジャンなどの配下による民衆陽動は止めたが、民の王政への不満はもう止まる段階ではなくなっていた。


ユージェニーと個人的に会うようになってから、アウトムヌス公爵夫人は『王妃の話し相手』のお茶会や王宮の夜会のたびに新調したドレスを纏い、いつも違う高価な宝石を身に着けていた。彼女は褒められるたびに『陛下』の贈り物ですのと自慢した。国王エドワードは元婚約者に執着している一方で、アウトムヌス公爵夫人にも高価な贈り物をしょっちゅうしている――王宮で働く貴族や使用人達はそう訝しがった。


そんなある日-王妃の私室にほとんど来たことのないエドワードが突然、先触れなしにやって来た。


「ユージェニー、あの噂はそなたが仕組んだことなのか?」


「あら、何のことでしょう?」


エドワードはユージェニーの泰然とした態度にイライラした。


「アウトムヌス公爵夫人のことだ」


「夫人がどうかいたしましたか?」


「余がアウトムヌス公爵夫人にドレスや宝石を贈っていると噂を流したのはそなたであろう?」


「いいえ。彼女は『陛下』に贈られたものだと答えただけですわ。それがエドワード様のことだと勝手に相手が誤解したまでのこと」


「わざと曖昧に答えさせたのだろう?それにそなたのどこにそんな金があるのだ?」


「王妃予算からは一銭も出していませんからご心配なく。私がソヌス王国から持ってきた個人資金を運用した利益から出しています。それか私の宝石を貸し出すこともありますのよ」


「なっ・・・」


エドワードはユージェニーがそんな潤沢な個人資金を持っているとは思わず、驚いた。


「それなら金銭的には問題ないが、あまり外で見せびらかせないようにしてくれないか。贅沢に不満が広がるのも、他の4人の『王妃の話し相手』が差別されていると感じるのも困る」


「他の3人の間違いではなくて?ステファニー様は全くお茶会に出てきていただけませんのよ。どうされているのかご存知ですよね?」


「・・・彼女は体調を崩して療養している。体調がよくなればお茶会にも参加できるようになるだろう」


「そうですか。今度お見舞いに行かせていただきますわ」


「いや、病気でやつれている姿を見せたくないそうだから、元気になるまで待っていてくれ」


「そうですか。残念ですわ」


ユージェニーがステファニーを見舞いしたいというのをエドワードは頑なに拒否した。それはいかにも不自然であったが、もちろんユージェニーはなぜなのかわかっていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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