56.辞退の申し出
ステファニーはまさかブライアンによる強姦事件のことがエドワードに知られているとは思わず、本来の部屋に戻ってからも放心状態だった。こんなことを知られているのは恥ずかしくてたまらなかった。それに彼が知っているということは自分のことを王家の影に探らせていることを意味する。その執着心がなんだか怖くなってきた。だからステファニーは『王妃の話し相手』を辞退しようと決意し、翌日、担当の侍従に申し出た。
「一旦はお受けしたのに大変申し訳ございません。ですが、幼い娘が母親のいないことに予想以上に悪影響を受けていまして、辞退して帰ってきてくれと夫に頼まれまして・・・私も娘のために帰りたいと思っております」
ステファニーが頭を下げると侍従は止めて欲しいとあわてて言った。
「辞退は一使用人である私が判断できることではございません。陛下にお伝えして了承をされた時点で正式に『王妃の話し相手』をお辞めになったことになります。ご承知下さい」
「陛下とは、両陛下でしょうか?それとも国王陛下か王妃陛下のどちらかでしょうか?」
ステファニーは、昨日、勘違いで痛い目にあったので、今日は慎重に聞いてみた。ステファニーは知らなかったのだが、この侍従はユージェニーにこの話を持って行くつもりはなかった。
「両陛下です」
「そうですか。判断をいただくまでどのぐらいかかるでしょうか?」
「最低3日ほどです。ですが、もしかしたら1週間かかるかもしれません。ご承知下さい」
それから数時間後、昨日と同じ侍女がやってきてステファニーを呼び出した。ステファニーは今度は用心深くなっていた。
「『王妃の話し相手』をお辞めになりたいという話について陛下が話し合いされたいそうです。私について来てくださいませ」
「『陛下』とはどちらの陛下ですか?」
「どちらでもよろしいではありませんか。とにかく来て下さい」
「いえ、どちらでもよくはございません。私は王妃陛下の話し相手として参上いたしました。辞めたいのであれば、王妃陛下に話を通すのが筋でしょう?」
「強情ですね。仕方ありません」
「えっ?!」
ステファニーは口に湿った布を当てられて気を失った。侍女の振りをしている影は、ステファニーが抵抗するようだったら少々手荒なことをしても絶対にエドワードのところに連れてこいと厳命されていた。それと同時にステファニーに怪我を負わせてはいけないという一見矛盾した命令だった。
影は洗濯物を集める布袋の中にステファニーを入れ、台車に載せて運んでいった。ステファニーは、とある寝室に寝かされ、1時間もしないうちに目が覚めた。
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