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あなたはずっと私の心の中にいる  作者: 田鶴


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43/79

43.騒乱

ウィリアムは1ヶ月経っても目が覚めなかった。それどころか、徐々に衰弱していった。とうとう侍医は臨終の時に祈りを捧げる神官を呼ぶように宣告した。


「ええっ!そんな!ウィルッ!ねぇ、起きて!」


「母上!」


「・・・メラニー、愛している。幸せだった・・・エド、母を頼むぞ・・・」


メラニーが王妃の振舞いとは思えないほど取り乱してウィリアムにすがると、彼は最期の力を振り絞って2人に最期の言葉を残した。ユージェニーもその場にいたが、ウィリアムは彼女に何か言い残す前に崩御した。ユージェニーは、こんな時に考えるのは不謹慎だろうけどと思いつつも、自分のことが義娘として受け入れられていなかったように感じてしまった。


おしどり夫婦で有名だった国王夫妻だったから、王妃メラニーの嘆きは大きかった。メラニーは、葬儀まで人目を避けて王都郊外の離宮で静養したいと希望したが、王都の治安が悪化している今、警備の面で心配だとエドワードが反対し、王宮に残った。そしてそれは杞憂で終わらなかった。


ウィリアムの国葬の日、儀礼服を着た近衛騎士が国旗で包まれたウィリアムの棺を持ち、その後を直系・傍系王族、近衛騎士が続いた。壮麗な葬列が厳重に警備されながら大聖堂に入って行く頃、明らかに前国王を悼む様子ではない人々が大聖堂や王宮の近くに集まってきていたが、手厚い警備で追い返されていた。それらの不満分子は警備が薄くなっていた王都郊外の離宮に向かい、とうとう何千人もの集団に膨れ上がっていた。


「死んだ者にそんな金をかける暇があったら、俺達に寄こせ!」


「そうだ、そうだー!」


「俺達は飢えているんだ!この離宮の椅子1脚で俺達家族が1年暮らせる!」


「元はと言えば、俺達の税金だ!だから俺達の物だ!」


「そうだ、そうだー!」


集まった民衆は粗末な衣服に身を包み、棒切れや草刈り鎌のような小さな刃物を手に持っていた。銃は原則として一般人所持禁止だが、一般人でも狩猟許可証を持っていれば猟銃だけは所有できる。どこかで発砲音がすると、民衆はパニックになった。


「警備兵が撃ったぞ!」


「お前ら、同じルクス人を殺すのか!」


誰かが警備兵が撃ったと言うと、人々はそれを信じて警備兵を罵って殴りかかり、警備兵は逃げまどってもみくちゃになった。その中で離宮の塀をよじ登って入った者達がおり、正門を中から開けようとして警備兵ともみ合いになり、警備兵が発砲した。


「国民を殺すのか?!王家の犬め!」


誰かが叫んで、民衆が正門に殺到した。大勢が向かってきて門を押したので、その圧力で正門はあっけなく破壊されて開いたが、正門付近にいた人々や警備兵達はほとんど圧死した。残りの警備兵達も民衆の剣幕に恐れをなして逃げてしまい、暴徒は離宮と庭園に易々と侵入して縦横無尽に荒らした。美しかった庭園では草花が抜かれ、細い木は暴徒の持つ刃物で切られ、ベンチやガゼボは破壊されて見るも無残な姿になっていた。宮殿内も花柄やペイズリー柄などの美しい壁紙がそこらじゅうで剥され、窓は割られ、蝶番やドアノブが壊されて扉が引き倒された。貴重な装飾品は盗まれ、大きな物は破壊された。特に王族を描いた肖像画は顔に落書きをされたり、引き裂かれてバラバラにされたりした。終いには誰かが離宮に火を放ち、パニックに拍車をかけた。


「おい、煙が出てるぞ!」


「火事だ!」


火事自体で亡くなった人はそれほど多くなかったのだが、ここでもパニックに陥った人々が圧死する場面があった。


王族が誰も滞在しておらず、国葬と王宮に警備が割かれていたから、離宮の警備は多少薄くなっていたが、それでも離宮に暴徒の侵入を許すなど、王国が栄華を誇っていた頃なら考えられもしなかった。


今の王家にはかつての美しい離宮と庭園を回復させる余力がなく、暴動で荒れ果てた離宮には、少数の警備兵を配置してそれ以上の無体を防ぐぐらいしかできなかった。それを目の当たりにした人々は、ルクス王国の王政の終焉が間近に迫っていることを肌で感じた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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