29.もう受け入れられない謝罪
エドワードがユージェニーと初めて身体を繋げた夜の翌日、彼は執務室で執務中だったが、どうも集中できず気もそぞろだった。やっと閨が成功したのに最後の最後で吐いてしまい、ステファニーの名を呼んでしまってユージェニーを傷つけたであろうことにも、ステファニーをまだ愛しているのに他の女性と交わってしまったことにもエドワードは罪の意識を感じていた。
それにソヌス王国との関係も不安だった。こんな閨が続けばユージェニーはもしかしたらソヌス王国の兄王に不満を訴えるかもしれないが、さすがに兄妹で閨の話はしないだろうから大丈夫だろうか。エドワードは、そんなふうにもんもんと考えていた。長いこと一緒にいるリチャードが、そんなエドワードの様子に気付かないわけはなかった。
「エド、今日、なんだかおかしいぞ。どうかしたか?」
「いや、何でもないよ」
エドワードもさすがに閨のことまではリチャードにも言えなかった。エドワードはそれからしばらく鬱々と考えていたが、いきなり立ち上がった。
「ちょっとユージェニーのところに行ってくる」
「え?先触れ出してないよ?」
「構わない。すぐ戻る」
エドワードは執務室を出て行き、ユージェニーの私室に向かった。
「妃殿下、王太子殿下がお見えです」
「まあ!?先触れはいただいてないわよね。応接間で少し待っていただいて。すぐ支度するわ」
ユージェニーはドレスは着替えず、髪と化粧だけ急いで侍女に直してもらって王太子妃用の応接間に向かった。
「ユージェニー、急に来て申し訳ない」
「いえ、こちらこそお待たせして申し訳ありません」
「人払いを頼む」
侍女ミッシェルと護衛騎士ジャンも内心不満だったが、応接間を出て行かざるを得なかった。
「昨夜は申し訳ない。ちょっと体調が悪かったんだ」
「そうでしたのね。体調が悪い時は無理に閨をしなくてもよろしいのに」
「でも月に1回の機会だから・・・」
「数日ずれても問題ないでしょう?」
「それもそうかな」
「それから、その、私が達した時、何か変なことを言ったような気がするのだが、気付いただろうか?」
「何でしょうか?私も夢中だったから、聞いてなかったですわ」
「そうか、ならよかった。邪魔をしたね。もう執務に戻らないといけないから、お暇するよ」
(どうせお兄様に不満を訴えられるかどうか不安で来たんでしょうよ。私だって流石にお兄様にこんな生々しい閨のことなんて言えないわよ!)
ユージェニーは、エドワードが絶頂に達した時にステファニーの名を呼んだことをもちろんしっかり聞いていた。エドワードは、それまでも度々ユージェニーの私室に来て閨の失敗を謝罪した。ユージェニーは、その度に男の沽券にかかわるだろうに謝ってくれるエドワードの誠意を感じて、閨の失敗で削られたエドワードへの恋心が戻ったような気がしていた。でも次の閨でまたゴリゴリと恋心は削られ、いつもその繰り返しだった。それが前日の閨でもう限界に来てエドワードへの恋心は完全に砕け散ったのだった。
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