18.避けられない婚約
ステファニーの結婚式から数日後、エドワードはウィリアムの執務室に呼び出されたが、用件は言われなくても分かっていた。
「エドワード、お前の婚約が決まった。反対しても無駄だぞ。お前は実質的に唯一の王位継承権保有者だ。次世代に繋げる義務がある」
エドワードは一瞬びくっとしたが、すぐに平静に戻った。その顔は苦悩と覚悟に満ちていた。
「わかっています。相手はどなたですか?」
「ソヌス王国の王妹ユージェニー殿下だ。年齢は18歳。兄王が溺愛している妹だという評判だ。婚約式は3ヶ月後、結婚式は1年後を予定している」
隣国ソヌス王国の王妹ユージェニーには、幼少の頃からの婚約者が亡くなった後、王族女性としては珍しく新しい婚約者が決められていなかった。それは亡くなった婚約者のことをユージェニーが忘れられなかったとも、兄王が掌中の珠を手放せなかったからとも言われていた。だが、近年の国際情勢と民主化運動がソヌス王国でも急速に緊迫しつつあり、婚姻関係で両国の関係を強化することがその事情よりも優先されることになったようだった。それにユージェニーが似姿と写真を見てエドワードを気に入ったことも後押しした。
一方、ユージェニーの写真と似姿を見てもエドワードには何の感慨も起きなかった。だが一般的に言えばユージェニーは美人の類に入っていると言ってよい。ユージェニーはブルネットの豊かな髪に白磁のような肌、緑色の美しい瞳を持っていた。
エドワードにとって喜ばしくない婚約話の後には、もっと苦しい話が待ちかねていた。
「隠していてもいずれ分かることだから言うが・・・エスタス公爵令嬢は、エイダン・アンヌス伯爵に嫁いだ。それからこれから言うことは、誰にも漏らしてはならないぞ。彼女は事件の時の子を腹に宿している。アンヌス伯爵はそれも承知で実子として育てることに合意した。伯爵には長年の愛人と息子がいるから、夫人とは白い結婚になるそうだ」
「それでは彼女は針の筵の結婚生活ではないですか?!」
「それでもお前には何もできることはない。お前達の道は分かれたのだ」
エドワードはステファニーが人妻になってしまったことと、強姦犯の子供を妊娠してしまったことにショックを受けた。だが彼女の白い結婚に安堵してしまったことも事実だった。そんな自分に自己嫌悪しつつも、暗い予感しかない彼女の結婚生活を思うとエドワードは心配になった。
教会の方針で堕胎はできない。でも実家の助けなしに箱入り娘が父なし子を産み育てるのも、どの国でもほとんど不可能だ。それにエドワードは国を背負う自分の立場を考えるとステファニーと駆け落ちもできない。エドワードは残酷でも運命の定めに従うしかないように思えた。
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