第1章 第3話
「ちょっと先輩本気で言ってます!? 本当にこんな簡単に人を殺すつもりですか!?」
田村がいなくなった屋上で蓮華が吠える。その返事は一つだ。
「やるよ。仕事だからな」
「肝心なお金の話してないんですけど!?」
「お前は関係ないだろ? 『インセクト』仲介してないんだから。残念だったな中抜き会社」
「お金の話は置いといてもです! わかっていますよね? れんげたちがいなかったら、さすがに足がつく。先輩が捕まったられんげが困るんですよ!」
俺の仕事の流れはこうだ。犯罪請負会社『インセクト』に来た依頼から、蓮華が俺向きの仕事をピックアップ。下調べや事前準備を終えた段階で俺に回され、実行。後片付けを全て任せ、終了。つまり俺の仕事は実質引き金を引くだけ。今俺が捕まっていないのは蓮華たちのおかげであるところが大きい。
「でも仕方ないだろ? 何にせよ口封じは必要。でも俺は善人は殺したくない。だったら無償でも引き受けてあっちの弱みを握るしかない」
「……はっ。殺し屋に人殺しを依頼する人間が善人だとでも?」
「んなこと言ったら世の中のほとんどは悪人だ。だから俺は俺の価値観で善悪を決める。