29話 チームワークと懇願
「シャラ! 戦場が初めてだからしょうがないけど、もっとちゃんと周りを見なさい!」
「す、すみませんっ!」
着地したアシュリーが、素早くあたりを見渡しながらシャラに助言を出した。
「テオ! シャラのことが大事なら、しっかり守りなさい! こういう森の中だと、モンスターは側面から奇襲してくることが多いわ!」
「は、はい!」
更にテオの方を見て、そちらにも警告を飛ばす。
「で、でもアシュリーさん、どうしてここに?」
シャラが油断なく構えながら、アシュリーに尋ねた。
「あんた達が遅いから、様子を見に来たのよ! まさか、こっちにもモンスターの群れが居るなんて、ねっ!」
飛び込んできた敵の『蹴機POLE-8』を斬り裂きながら答える。
「【封印】! ……で、でも上の人たちは?」
「大丈夫よ、村からの援軍が来たから。だからあたしがこっちに来たの!」
死んだモンスターを封印しながら、テオが先ほどのチームの心配をすると、安心させるようにアシュリーが言った。
「……でも、こんなことなら弓術士か黒魔導師を一人、ついでに連れてくるんだった」
アシュリーはしかし、眉を下げながらそう続ける。
魔法の救難信号を発することができるのは、弓術士か黒魔導師だけだからだ。このメンバーでは、助けを呼ぶことができない。
かといって、ここから全員で斜面を登って合流するのは難しい。アシュリーだけなら登れないこともないので、救援を呼んでくることもできるだろう。だが今、この群れ相手にアシュリーが抜けたら、残されたテオとシャラがどうなるかわからない。
「とりあえずシャラ、忘れ物よ!」
と、アシュリーが何かをシャラに投げ渡した。慌ててキャッチするシャラ。
「これは!」
「さっきの白魔導師から預かってきたわ」
笑みを向けるアシュリー。
シャラはこくり、と頷いて、それをテオに投擲する。
「【キャスティング】」
――【治療の香水】!
碧色の小瓶がついた錬金装飾が、テオの左手首へに飛んで装着された。小瓶からあふれた碧色の燐光が、テオの怪我した足首へと集中する。
「足が、治っていく?」
どんどんと痛みが引いていく足に驚くテオ。
「傷を少しずつ癒せる錬金装飾だよ、テオ! アシュリーさん、ありがとうございます!」
シャラがテオに笑顔を向け、そしてアシュリーに礼を言う。
戦闘用の錬金装飾は、仲間に装着させることで持続的に効果を発揮し続けるものが多い。一瞬で効果が終わる白魔導師の強化魔法や黒魔導師の付与魔法とは正反対に、錬金装飾は弱くとも長時間機能する。そのため、チームの継戦能力が高くなるのが錬金術師の強みだ。さらに錬金術師は『キャスティング』により、戦闘中に錬金装飾の付け替えができる。
「せいぜい、ドンパチやりましょ! 騒がしくなれば、誰か来てくれかもしれないし」
と言って再びアシュリーが構え、飛び出すべく屈む。
すると。
「待って! アシュリーさん、それならこれを!」
シャラが鞄から、無数の輪が連なったチャームがついた錬金装飾を取り出し、マナを込める。
「【キャスティング】」
シャラが投げつけたそれが、アシュリーの右足首に装着された。
――【俊足の連環】!
「足が速くなる錬金装飾です!」
「へぇ?」
アシュリーがとん、と右足のつま先で地面を叩き、改めて前方を見据える。
「わっ!? とっ」
アシュリーが弾けるように飛び出し、そのスピードに一瞬戸惑う。本当に風を切るように一瞬にして敵の脇をすり抜け、すれ違いざまに斬り裂く。
「いいじゃないコレ! 気に入ったわ!」
ニッと笑って、アシュリーはさらに右に左にと高速で動き回り、モンスター達を翻弄する。先の一瞬で、すでに感覚をつかんだようだ。
襲ってくる機敏なモンスターを、高速で後退してインパクトポイントをずらし、カウンター気味の剣突で逆に刺し貫く。
「あっ、アシュリーさん、十時方向!」
テオが左前方から向かってくる、新たなモンスターを見咎める。
そちらには、一抱えほどありそうな大きさの橙色のカボチャが数体、プカプカと浮かびながらこちらへと近づいてきた。テオにとっても苦い思い出がある中級モンスターだ。
アシュリーがそれを一瞥し、顔をしかめる。
「【ジャックランタン】! こんな時に……」
口から炎の炸裂弾を吐いてくるこのモンスターは、その爆炎によって周囲の仲間も巻き込んでしまう面倒な相手だ。
舌打ちして、何を思ったか単身ジャックランタンへと突撃していくアシュリー。
「アシュリーさん!?」
「……あの爆炎に、僕達が巻き込まれないようにするためだ!」
爆炎を食らうなら自分だけで良い、と、テオとシャラから距離を取ったのだろう。足が速くなっているとはいえ、見てからジャックランタンの攻撃を回避するのは難しい。
「――ならアシュリーさん、これを!」
「えっ?」
「【キャスティング】」
シャラが、マナを込めた錬金装飾を、突撃していくアシュリーに投げつけた。
赤い宝珠がはまったその錬金装飾が、振り向いたアシュリーの首元に触れ、するりと首飾り状になって装着される。
――【吸炎の宝珠】!
直後、ジャックランタン達が吐いた火炎弾が、アシュリーに直撃するも。
「熱ッ……く、ない?」
爆炎の中から無傷のアシュリーが出てきた。シャラが声を張りながら説明する。
「炎を無効化できる錬金装飾です!」
「やるじゃない! これなら……」
それを聞いたアシュリーは、躊躇なくジャックランタンへと飛び込み、素早く処理する。
テオも、すぐに自分の役目を思い出した。
「【封印】」
こうなった以上、周りにある瘴気紋を処理していくのを優先すべきだ。瘴気に戻ってしまっては困る。
だが、タイミングが悪く。
「テオ、アシュリーさん、上!」
今度はシャラが、上空を指さした。その先から飛んでくるいくつかの影がある。
「……飛行モンスター! 厄介ね……」
アシュリーが見据えた先には、人間サイズの巨大コウモリ『ヴァンパイアバット』、機械の鳥『鷲機JOV-3』、翼の生えた黒い人型『ナイト・ゴーント』などの飛行モンスター達が居た。いずれも中級モンスターだ。
今この場には黒魔導師や弓術士のような、飛行モンスターへの攻撃を得意とする者がいない。テオの射撃モンスターという手もあるが、召喚モンスターは一番近い敵を優先的に攻撃する。今のような乱戦で召喚しても、より近くに居る地上の敵モンスターへと撃ってしまい役に立たないだろう。
「【ライジング・アサルト】!」
アシュリーが叫ぶと手にした剣の刀身が光り、彼女の身ごと一気に空中へと飛び上がった。そのままの勢いで、ヴァンパイアバットを斬り裂く。
「ぐっ」
だが、その間に他の飛行モンスターに集中的に狙われ、アシュリーが斬り裂かれる。空中では俊足は役に立たず、回避もままならない。咄嗟に急所は外したものの、空の敵を攻撃する度にいちいちこれではキツい。
それに――
「この調子で、マナが保つかしらね……」
着地したアシュリーが、そうひとりごちた。
飛行モンスター一体一体相手にライジング・アサルトを使っていては、アシュリーのマナが枯渇する恐れがある。地上の敵もまだまだ多い現状、いざという時にマナが不足するのは問題だ。
「――アシュリーさん! 素のジャンプ力が上がれば、『技能』無しでもあれを攻撃できますか!?」
「えっ? え、ええ、多分」
そこへ突然シャラが声を上げてアシュリーへと尋ね、戸惑いながらも答えるアシュリー。
「それなら、これで!」
シャラは鞄から、玉を抱えた兎のようなチャームのついた錬金装飾を取り出し、マナを込めた。
「【キャスティング】」
それを、アシュリーに投擲。左足首へと装着される。
――【跳躍の宝玉】!
「それで、ジャンプ力が強化されたはずです!」
「なるほどね! ……はぁっ!」
シャラの説明を聞いて、早速全力で跳び上がってみる。
「うわぁっ、と!? セイッ!」
本当にただのジャンプで、敵の飛行モンスター達に届いてしまった。
驚いたのは一瞬。すぐに、目の前に迫った敵のナイト・ゴーントを斬り裂く。
「くっ! また……」
だが、その隙を狙って他の飛行モンスター達が、またしてもアシュリーを集中的に狙ってきた。空中では、防御も回避もままならない。
「――【キャスティング】!」
そこへ再びシャラが錬金装飾を投擲した。左手首に装着されたのは、連なった鎖のようなチャームがついたブレスレット。
――【防刃の帷子】!
「えっ?」
直後、その錬金装飾から金属製のベルトが飛び出した。甲高い音を立てて、飛行モンスターの攻撃を受け止める。
「斬撃に反応して、自動的にある程度の防御をしてくれる錬金装飾です!」
「ほんと、至れり尽くせりねっ」
着地と同時に、シャラにウインクするアシュリー。
テオは上空を見据えて考えた。アシュリーがジャンプしたら、あの飛行モンスター達はアシュリーに群がる。
――そうだ!
「アシュリーさん! 僕の合図に合わせて、こっち方向へ跳んで!」
「えっ? ええ……」
テオは浮いたまま滑空するように移動しながら、斜面を背にするように位置取りする。
「【ジャックランタン】召喚!」
そして、先ほど敵として出てきたジャックランタンを、今度はこちらの召喚獣として呼び出す。
「――今です!」
「はぁっ!」
テオの意図を理解したアシュリーがすぐさま斜面方向を目掛け、上空へ跳び上がった。すぐにアシュリーに群がる飛行モンスター達。
すなわち……テオのジャックランタンの真上へ、飛行モンスター達は誘導された。
そこへ――
――ドグオオォォォォッ
テオの狙い通り、ジャックランタンが飛行モンスターを狙って火炎弾を発射した。着弾したそれは爆炎を巻き上げ、アシュリーに群がる敵モンスターを一網打尽にする。
「ナイス!」
着地したアシュリーが、テオにサムズアップした。爆炎に巻き込まれたアシュリーだが、『吸炎の宝珠』のおかげで無傷だ。
「【送還】」
役目を終えたジャックランタンを送還する。
アシュリー以外は、火炎を無効化できない。テオのジャックランタンが放った広範囲の爆炎に、シャラやスカルガードが巻き込まれたら困るからだ。
(あっ!)
が、斜面を背にして広い視界を取れたテオが、シャラに迫るモンスターを見て取る。人型の機械中級モンスター【蹴機POLE-8】だ。
(召喚を……!)
しかし、先ほどジャックランタンを召喚したため、下級モンスターを出すくらいのマナしか残っていない。
この際、下級のガルウルフでも良いから召喚してその場を凌ごうかと考えた、その時。
『――自分でダメージを受けて、強いモンスターを出すMPを溜めるんだ――』
「シャラ!」
「えっ!?」
テオはシャラの前へと飛び出し、蹴機POLE-8の回し蹴りに――
――ドガッ
――その身を晒す。
「がッ……」
地面に倒れ込むのは、『妖精の羽衣』のおかげで免れる。
「テオ!?」
「テオッ!」
アシュリーが驚愕して、シャラが半ば錯乱するようにテオを呼び掛ける。
――しかし。
「――【ミノタウロス】召喚っ!」
『ドMP』発動。マナが回復したのを感じたテオは、キッと前を見据えて中級モンスター『ミノタウロス』を召喚する。
召喚紋に押しのけられるように、蹴機POLE-8が後退した。紋章から出てきたのは、大斧を担いだ牛頭。
「……こいつなら、蹴機POLE-8にも押し勝てる!」
テオが自信を持った目で蹴機POLE-8とミノタウロスの戦いを見つめた。
「テオ、あんた……」
アシュリーが、震えるような声で呟く。
「うぐっ……」
「テオ!?」
けれど、脇腹の痛みに呻くテオ。シャラが心配そうに駆け寄るが。
「大丈夫っ……この、シャラがくれた、錬金装飾の効果だってある……」
「テオ! だからって、無茶しないで!」
テオの左手首に着けられた『治療の香水』の燐光が、テオの脇腹を既に癒しつつあった。
それでもシャラは懇願するようにテオを気遣うが、その時。
「――テオ!!」
突然、シャラが悲鳴に近い声を上げる。振り向くと、テオのすぐ近くに巨大なカマキリ……リーパー・マンティスが来ていて、その鎌を振り上げていた。
「このくらいの……痛みが、なんだ」
しかし、テオは自分でも驚くほど冷静に立ち向かう。
思い起こされるのは、スタンピードで村が滅びた時の記憶。
『……逃げろ、テオ……生き……ろ……』
『お願い、テオ……シャラ、ちゃんを……おねが……い……』
テオの記憶から、スコットとサマーの最後の姿が蘇る。
「あの時の、父さんと母さんは……」
『テオ……せめ、て……あなただけは……生き……て……』
続いて、シャラがテオを庇って倒れた時の姿も蘇る。
「あの時の、シャラは……!」
何よりも、彼らの死を前にしたテオの心は。
「もっと! 痛かったんだあああぁぁぁーーーーっ!!」
腹の底から絞り出すような、絶叫を迸らせ。
テオは勢いよく体を起こし、自らリーパー・マンティスの鎌に飛び込む。
「ぐううぅぅぅぅっ」
高速でテオを切り刻まんとするリーパー・マンティスの連続攻撃を、腕を顔の前でクロスさせて正面から耐え抜く。『ドMP』効果で、テオのマナがどんどん溜まっていく。
『――補助魔法をうまく使えば、モンスターを効率よく戦わせられるぞ――』
「【火炎獣与】!」
テオは自分のミノタウロスに片手を向け火炎獣与をかけた。大斧が炎を纏い、振り下ろされたその炎の斧を食らって蹴機POLE-8は消滅。
「ぐうっ……【戻れ】!」
鎌に斬り刻まれ続けながらも、テオはミノタウロスを自身の元へと戻らせる。リーパー・マンティスがその攻撃の矛先を、ミノタウロスへと変えた。
「【行け】っ……【魔獣治癒】」
じくじくと痛む自身の傷に耐えつつ、傷ついた牛頭の怪物を魔獣治癒で治癒。そのミノタウロスの一撃でリーパー・マンティスは両断され、消滅した。
「はぁっ……はぁっ……【封印】」
息を整えながら、倒したモンスター達を封印するテオ。
「……テオ」
シャラが、とん、と背中合わせにテオに寄り添った。
「……シャラ。僕はまだ、僕だよね?」
「……うん。テオは、いつもの……優しい、テオのまんまだよ」
目尻に涙を浮かべながら、シャラは優しく応えた。
背中から感じる温かさに、テオが安堵の笑みを浮かべる。
「――二人とも! まだ出てくるわよ!」
が、アシュリーの焦ったような声に現実に引き戻された。
見ると、森の奥からさらにわらわらと瘴気を纏ったモンスターが雪崩れ込んでくる。テオも腕に痛みを押して、そのモンスター達に向かって構えた時。
「っ! 今度はなに!?」
さらにアシュリーが何かに気づき視線を送ったのは、背後の急斜面。何かが高速でこちらへと飛んでくるような風切り音が、斜面の上から響いてくる。
「あっ、大丈夫ですアシュリーさん。あれは、僕の……!」
――斜面の上から、風を切って現れたのは。
白銀の鎧を纏い、赤いマントをなびかせて、槍を構えた戦乙女。黒い瘴気は全く纏っていない。
「ヴァルキリー!」
テオの元へと戻ってきたヴァルキリーが、そのまま彼らの脇をすり抜け、敵陣へと槍を構えて突進していった。
「【電撃獣与】」
そんなヴァルキリーに、テオはすぐさま電撃獣与を使用。電撃を纏った槍が、敵モンスターを一撃で粉砕した。
「頼もしい援軍じゃないの!」
アシュリーが余裕の笑みを取り戻した。
モンスターは奥からさらにどんどん出てくる。しかし、テオの召喚モンスター捌きが良くなってきた。その上、強力なヴァルキリーが加わってきた。
これなら充分に切り抜けられる。皆が気を緩めた、その時。
――ドッグオオオオオォォォォッ
「きゃあああああっ!」
突然、一帯が爆炎に包み込まれた。
さきほどのジャックランタンの攻撃などとは比べ物にならない威力の爆発と熱量。
「――シャラ!」
テオが爆風に飛ばされながら、爆炎の近くにいたシャラへ悲痛に叫ぶ。
「な!? うそでしょ!?」
爆炎の範囲外にいたアシュリーが振り向き、そして上空を見上げる。
その空を、悠々と舞っていたのは……
赤、黄色、青の三色の炎を優雅に纏いながら舞う、人間二、三人分の翼長を持つ、神々しい鳥。
だがしかし、その全身に覆われた真っ黒な瘴気。
「上級モンスター……『フェニックス』……!?」
わなわなと慄きながら、アシュリーが震える声で呟く。
先の爆炎でスカルガードやミノタウロスはもちろん、消耗していたテオのヴァルキリーまで全滅してしまった。三人はいまや、完全に無防備な状態だ。
その上――
「う……」
先ほどの爆炎はテオのスカルガードの一体を狙い、その近くにいたシャラも巻き添えにしていた。
全身から微かに煙を立ち昇らせ息も絶え絶えなシャラが、呻きながらなんとか体を起こそうとする。
「ぐ……シャラっ!」
吹き飛ばされたテオだが、『妖精の羽衣』のおかげですぐに起き上がる。シャラへと近寄ろうとするが……
「ダメ! シャラ、逃げなさい!」
フェニックスの動向を伺っていたアシュリーが、シャラへと叫んだ。
見るとフェニックスがシャラに目を向け、炎の塊を口の中に溜めていた。完全にシャラに撃つ気だ。
「シャラ!!」
テオが召喚しようとする。
――ダメだ、ここからじゃ距離がありすぎる、間に合わない!
唯一『吸炎の宝珠』を着けているアシュリーが、シャラとフェニックスの間に割り込もうと、跳んで全力で翔けているのが見えた。
――あの距離じゃ、アシュリーさんも間に合わない!
シャラがフェニックスを見て、その口に溜まった炎に絶望の表情を浮かべる。
――今、あんなのが直撃したら、シャラは……!
こんな時なのに。
こんな時に限って。
記憶の中の『声』は……
何の助言も、してくれない。
――嫌だ。
――ここまで、守ってこれたのに。
――シャラを死なせちゃうなんて、絶対に……
――絶対に、嫌だッ!
アシュリーが、悲痛な顔で翔けている。
――マナヤさん!
――もし、あなたがまだ!
――まだ、僕の中に居るなら!
――……お願いしますっ!
シャラが絶望の中、目を瞑る。
――あなたを怖がってたことは、謝ります!
――どんな償いでも、します!
――虫の良い話だって、わかってる……でも!
――この世界にはまだ、あなたが必要なんです!
――シャラを救えるなら、なんだって、します!
――僕は、どうなっても構わない!
――この体を、明け渡したっていい!
――だから、お願いッ!
――シャラを、助けて!!
その時。
テオは自分の意識が、突然。
深く、沈んでいくのがわかった。
不思議と、焦燥感は無かった。
自分の声を、聴いたからかもしれない。
――お前にしちゃあ、いい戦いぶりだったぜ。……後は任せなッ!




