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242話 邪神の器 暴虐

「マナヤ、右お願い! 【ペンタクル・ラクシャーサ】!!」

「ああ! 【フレアドラゴン】召喚!」


 アシュリーが左から迫る巨大肋骨群に向かって剣圧を。

 マナヤは右から迫る肋骨群に向かって召喚紋を出した。


 甲高い音を立てて、肋骨のような部位が召喚紋にぶつかり止まる。

 召喚紋の中からは、全身が真紅の火竜が現れた。


「ぐっ!?」


 が、その火竜が押し戻されマナヤにぶつかる。

 肋骨が、現れたフレアドラゴンの巨体をたやすく押し込んできた。


「このッ、【包囲安定(スタビライザー)】!」


 ノックバックを無効化する補助魔法『包囲安定(スタビライザー)』をかける。

 フレアドラゴンの周囲に薄緑色のカーテンのような光膜が覆った。

 その光膜に支えられ、肋骨に押し込まれていたフレアドラゴンが踏ん張る。


「――うそ、止まらない!?」


 が、アシュリーが剣圧を叩きつけた方の肋骨群。

 そちらはペンタクル・ラクシャーサを容易く弾いていた。

 そのまま肋骨は、左から三人を薙ぎ払わんと迫りくる。


「【リベレイション】!」


 そこへ、シャラが『衝撃の錫杖』を振るった。

 選んだ対象だけを吹き飛ばす衝撃波。

 それが肋骨を一瞬だけ押し戻した。


 ギリ、と奥歯を噛みしめたマナヤは、首元の『妖精の羽衣』を取り外す。


「アシュリー、俺を左へ投げろ!」

「はああっ!」


 指示を受けたアシュリーが、迷わず動いた。

 マナヤの腕を掴み、動きを止めた左の肋骨へと投げる。


「【フロストドラゴン】召喚、【包囲安定(スタビライザー)】!」


 投げ飛ばされながら肋骨へ向け手をかざし、氷竜を召喚。

 フロストドラゴンの巨体で、動き出した左の肋骨を受け止めた。


《――無駄なあがきだ!――》


 トルーマンの声で、さらに肋骨が力を増す。

 フレアドラゴンが鮮血を舞わせ、苦悶の咆哮。

 同じくフロストドラゴンの方も装甲を砕かれ血しぶきをあげる。


「野郎ッ、【魔獣治癒(ビーストヒール)】【魔獣治癒(ビーストヒール)】!」


 着地したマナヤは、慌てて治癒魔法を連発。

 フレアドラゴンとフロストドラゴンの傷を塞いでいった。


 立ち直ったフレアドラゴンとフロストドラゴンがブレスを吐く。

 が。


「弾かれる!?」


 業火のブレスも吹雪のブレスも、着弾前に霧散した。

 あの『邪神の器』にまとわりついている瘴気バリアの影響だ。


〈【スペルアンプ】〉

〈【エーテルアナイアレーション】〉


 と、そこへ右から迫る肋骨に巨大な黒いエネルギーが炸裂。

 瘴気バリアから僅かに黒いモヤが剥がれ、散っていくのがわかる。


〈マナヤ、冷静になれ! ダグロンらと同じなら、精神攻撃しか通用しない!〉

「ッ、そうだった! 【ダーク・ヤング】召喚ッ!」


 遠隔からディロンの指摘を受け、思い出す。

 マナヤは、枝葉の代わりに極太の触手が生えた『歩く大木』のようなモンスターを召喚した。


「【電撃獣与(ブリッツ・ブースト)】【精神獣与(ブルータル・ブースト)】【精神防御(グルーミング・ガード)】! アシュリー!」

「ええ!」


 そのダーク・ヤングの触手が黒い稲妻と紫の防御膜を纏う。

 マナヤの合図に合わせ、アシュリーがダーク・ヤングの根にあたる三本足の一つをむんずと掴んだ。


「シャラ! アシュリーに十四!」

「【キャスティング】」


 ――【吸邪(きゅうじゃ)宝珠(ほうじゅ)】!


 さらにマナヤの指示でシャラが錬金装飾(れんきんそうしょく)を投擲。

 精神攻撃を無効化する、橙の宝珠がはまったブレスレットがアシュリーの左手首に装着された。


「【ラクシャーサ】!」

「【リミットブレイク】!」


 アシュリーがダーク・ヤングの巨体を上段から力任せに振り下ろす。

 同時に、ダーク・ヤングから左の肋骨めがけて黒い竜巻が発生した。

 アシュリー自身もその黒い竜巻に掠めるが、『吸邪(きゅうじゃ)宝珠(ほうじゅ)』が彼女を守る。


 黒い電撃を纏う触手から放たれた衝撃波。

 そこへ黒い竜巻も入り混じり、まとめて『邪神の器』の左肋骨へと絡みつく。

 一瞬だけ瘴気バリアがブレて、その表面が一部霧散した。


《――おのれ! だが!――》


 トルーマンが忌々しげな声を放つと、『邪神の器』がさらに動く。

 機械の薔薇のような頭部が煌めき、アシュリーの方へ向いた。


「アシュリーあぶねえ!」


 走った悪寒に、思わず声を張り上げる。

 あの花弁の中央から、何か黒い塊が発射された。


「!」


 マナヤの叫びに反応し、ダーク・ヤングを強引に振り回したアシュリー。

 飛んでくる何かを、ダーク・ヤングを盾にするよう構える。


 ――着弾と同時に、大爆発。


「あぐっ!?」

「ぐあ!?」

「きゃあああっ!」


 その爆炎はアシュリーのみならず、マナヤとシャラをも巻き込んだ。


〈みなさん! 【レメデイミスト】〉


 テナイアの声が頭に響くや、治癒の霧が三人を覆う。


「す、すんませんテナイアさん! まさか火炎弾だったとは――」

「ち、違うわマナヤ! ダーク・ヤングに命中した弾から、物理的な衝撃を感じた!」

「なに!?」


 黒い弾が火炎弾だったことに歯ぎしりするマナヤを、アシュリーが否定。


《――驚いている暇があるのか? 食らえ!――》


 間髪入れず、薔薇の頭部からもう一発黒い弾が発射される。


「【キャスティング】」


 ――【吸炎(きゅうえん)宝珠(ほうじゅ)】!


 シャラがすぐさま錬金装飾(れんきんそうしょく)を全員の右手首へ。シャラ自身だけは、右手首に『防蝕の遺灰』があるので『妖精の羽衣』の代わりに首元に。

 炎を無効化する赤い燐光に三人が包まれる。

 黒い弾は、アシュリーが皆を守るように振り回したダーク・ヤングに炸裂。


 ――そこから放散する轟雷。


「く、ああっ!?」

「きゃああっ!!」


 アシュリーとシャラが、稲妻に灼かれ悲鳴を上げる。

 マナヤも全身に走る電撃の激痛に息が止まりかけた。


「かッハ……な、どういうことだ!?」


 先ほどは爆炎が弾けたというのに、今度は電撃が。

 まったく同じ黒い弾だったというのに、炸裂するエネルギーが違う。


「く……【キャスティング】!」


 ――【吸嵐(きゅうらん)宝珠(ほうじゅ)】!


 シャラが今度は、電撃を防御する錬金装飾(れんきんそうしょく)を全員の左手首に。

 アシュリーの左手首にはまっていた『吸邪の宝珠』は、入れ替わりにシャラの手元へ。


〈マナヤ、右だ!〉

「なに!?」


 唐突に響くディロンの声。

 反射的に右を見れば、フレアドラゴンが体を砕かれ魔紋へと還っていく。


(しまった!)


 召喚獣の治癒を失念していた。

 フリーになった右側の肋骨が、マナヤたちに迫ってくる。


〈【スペルアンプ】【レヴァレンスシェルター】!〉


 頭の中でテナイアの声が。

 直後、マナヤ達の周囲を半球状の結界が覆った。


 右から迫る巨大な肋骨が、結界に激突。

 バチバチと火花のようなものを発しながら受け止めている。

 しかしそれも一瞬で、すぐにガラスのように結界は砕け散った。


「セイヤアァァァッ!!」


 と、そこへ割って入ったのがアシュリー。

 ダーク・ヤングを大きく振りかぶり、迫る肋骨にその巨体を叩きつける。


 黒い稲妻をまとうダーク・ヤングの触手が肋骨に炸裂。

 肋骨の瘴気がその黒い稲妻によって少し放散する。


「アシュリー離れろ! 【リミットブレイク】!」


 マナヤの掛け声でアシュリーがダーク・ヤングを手放す。

 彼女が距離を取ったのを確認し、リミットブレイクを発動した。

 黒い竜巻が発生し、それが肋骨の瘴気をさらに剥ぐ。


《――無駄なあがきと言ったはずだ!――》


 が、肋骨はダーク・ヤングをいともたやすく弾き飛ばした。

 包囲安定(スタビライザー)がかかっていなかったので踏ん張れなかったのだ。


 さらに直後、『邪神の器』の頭部から黒い弾が発射される。


「アシュリー!」


 その軌道上に見えたのは、無防備なアシュリー。


 迷っている暇は無かった。

 マナヤはすぐさま飛び込み、彼女の前にその身を晒す。


「ぎッ――」


 黒い弾が、自分の右肘あたりにめり込む。

 腕の骨が砕ける音と共に、全身を衝撃が襲った。

 直後、黒い弾は今度は闇撃のエネルギーを炸裂させる。


「ぐあああああッ!」

「マナヤ――あ、くうぅっ!」

「あうっ!」


 闇撃の爆発に、アシュリーとシャラも巻き込まれた。

 三人揃って、建造物の黒い内壁に叩きつけられる。


〈【スペルアンプ】【レメデイミスト】! みなさん、しっかり!〉


 テナイアが遠隔から増幅された範囲治癒魔法をかけてくれる。

 服の下が爛れていたマナヤ達の全身が、みるみる治癒していった。


「ッ、【魔獣治癒(ビーストヒール)】【包囲安定(スタビライザー)】【魔命転換(コンバートレストア)】!」


 治癒で動けるようになったマナヤは即、まだ左を守っているフロストドラゴンの治癒。そして右の肋骨を再度受け止めはじめたダーク・ヤングにも包囲安定(スタビライザー)をかけつつ治癒魔法で援護。

 この状況下で、この二体を倒されるわけにはいかない。


(くそっ、あの黒い弾! やっぱ自在に属性を変化できるのか!)


 火炎と電撃のみならず、闇撃も。

 おそらくは冷気の弾を放つこともできるはずだ。


 また、先ほど自分の体で受けたことで確信。

 おそらくこの攻撃は、大元は砲丸のような物理的なものだ。それが命中した直後、様々な属性へと変化し炸裂弾となる。

 つまりは、物理攻撃と属性攻撃を併せ持っているということ。召喚師が物理攻撃型のモンスターに獣与(ブースト)魔法をかけるのと同じような理屈だ。


(防御魔法や錬金装飾(れんきんそうしょく)で簡単に防げる攻撃じゃねえ!)


 歯噛みするマナヤ。

 その弾を放ってきている、『邪神の器』の薔薇に似た頭部がまた動いた。


「させるかよ! 【サンダードラゴン】召喚!」


 とっさに、その頭部めがけてサンダードラゴンを召喚した。

 飛行モンスターは召喚直後、正面にいる敵目掛けて高速で突っ込んでいく仕様がある。大きく翼を広げた飛竜が、『邪神の器』の頭部へと肉薄。


 そのサンダードラゴンが放った稲妻ブレスは、瘴気のバリアに弾かれた。

 が、雷竜の巨体は『邪神の器』頭部の目と鼻の先に。


「【次元固化(ディメンションバリア)】!」


 その位置でマナヤは、サンダードラゴンを固定した。


《――なに!? おのれ、マナヤァッ!――》


 トルーマンの悪態と共に、『邪神の器』頭部が氷の爆発を起こした。頭部と、空中で静止した雷竜の間に巨大な氷の華が咲く。

 頭部からまた黒い弾を発射したが、すぐ目の前にある無敵化したサンダードラゴンに命中してしまったのだ。飛竜の巨体を利用し射線を塞ぐというマナヤの作戦が見事に成功したのである。


「よし、今のうちに――」

《――させるかァッ!――》

「!」


 体勢を立て直そうとしたマナヤだが、トルーマンの激昂に動きが止まる。

 見れば、ダーク・ヤングが受け止めている右側の肋骨群に膨大な瘴気が纏わりついていた。それら肋骨の先端が鋭利な刃物のように尖っていく。


「しまっ、【魔命転(コンバートレス)――」


 慌ててダーク・ヤングを治癒しようとしたマナヤ。

 が、相手の方が速かった。


 刃物と化した肋骨がダーク・ヤングを貫く。

 大木のような巨体をいともたやすくバラバラに切り刻んでしまった。


「【封印(コンファインメント)】!」


 慌てて、倒されたダーク・ヤングの魔紋を回収するマナヤ。

 ついでに近くにあったフレアドラゴンの魔紋も回収しておく。


(くそ、あの肋骨も攻撃方法を変化できるってのか!)


 しかしそれがわかったところでどうにもできない。


 一体型として動いていた右の肋骨群がバラけた。

 一本一本が独立し、まるで刃物のついた触手のように迫ってくる。


「あぶない! 【シフトディフェンサー】!」


 シャラが咄嗟に二つの錬金装飾(れんきんそうしょく)を錫杖に取り付けていた。


 ――【防刃(ぼうじん)帷子(かたびら)】!

 ――【増幅(ぞうふく)書物(しょもつ)】!


「【リベレイション】!」


 シャラが『衝撃の錫杖』を振りぬく。

 巨大な鎖の壁が目の前に発生し、マナヤ達を守るように聳えた。

 斬撃を防ぐ『防刃の帷子』効果が『増幅の書物』によって強化されたようだ。


 刃と化した肋骨の触手が、頑丈な鎖の壁にからめとられた。


《――甘い!――》


 が、トルーマンの声と共に骨の触手が形を変える。

 元々の肋骨のような形状を取り戻し、鎖が砕かれた。

 攻撃を斬撃から打撃へと戻したのだ。


 その肋骨が振りぬかれ、マナヤ達を襲わんとする。


〈【スペルアンプ】【レヴァレンスシェルター】! ディロン、【スペルアンプ】!〉

〈【クルーエルスラスター】!!〉


 テナイアの強化結界がマナヤ達を覆った。

 さらにディロンの、精神攻撃の範囲魔法『クルーエルウェイブ』と範囲衝撃魔法『ウェイブスラスター』の同時発動魔法が放たれる。


 衝撃魔法によって肋骨が減速。

 それでもなお肋骨は強引に振りぬかれ、テナイアの結界を叩き壊した。


「――ッ!?」


 勢いを失いきらず、振りぬかれた肋骨は三人を殴りつける。

 悲鳴を上げる暇もなく、マナヤは吹き飛ばされ背後の壁面に叩きつけられた。

 マナヤの後にアシュリーとシャラも同様に壁に激突し、地面に落下。


 肺から空気が全て押し出され、息が詰まる。


「あ、ぐ……」

〈【スペルアンプ】【レメディミスト】!〉

〈【エーテルアナイアレーション】!〉


 テナイアの範囲治癒魔法。

 ディロンの精神攻撃魔法が続き、『邪神の器』を叩いているようだ。


「ッ……【ショ・ゴス】召喚、【包囲安定(スタビライザー)】【跳躍爆風(バーストホッパー)】!」


 息ができるようになったところで、マナヤはショ・ゴスを召喚。

 吹き飛ばし耐性を与えた上で、跳躍爆風(バーストホッパー)で右の肋骨へ送った。

 ショ・ゴスは物理攻撃全般に高い耐性がある。おまけに精神攻撃を行うことができるので、あの肋骨に対処させるには最適のはずだ。


「【魔獣治癒(ビーストヒール)】、【包囲安定(スタビライザー)】!」


 さらに振り向き、まだ左の肋骨を抑え込んでくれている氷竜の傷を治癒。

 効果時間が切れた包囲安定(スタビライザー)のかけ直しも忘れない。


「く、そ……アシュリー、シャラ! 大丈夫か!」

「うく……な、なんとか、ね」

「ま、まだ、大丈夫……です!」


 呻きながらも、アシュリーとシャラも何とか身を起こす。


 しかしマナヤがショ・ゴスに視線を戻すと、その黒い肉塊は肋骨の攻撃で砕かれそうになっていた。

 いかに物理攻撃耐性を持つショ・ゴスといえど、完全に無効化できるというわけではない。強烈な物理攻撃を何発も受ければ倒されてしまう。そして、生物でも亜空でもないショ・ゴスに対応する治癒魔法はない。


「こいつ、ホントに精神攻撃効いてんのかよ! さっきから瘴気が全然剥がせてる気がしねえ!」


 先ほどダーク・ヤングにかけた電撃獣与(ブリッツ・ブースト)精神獣与(ブルータル・ブースト)のコンボ。これにより精神攻撃力は大幅に向上していたはずであるし、さらにリミットブレイクで膨大な精神攻撃力を追加してある。

 それをアシュリーの膂力で叩き込んだのだ。『邪神の器』にも、相当なマナダメージを負わせたはず。その上、今こうやってショ・ゴスで精神攻撃を加えているし、ディロンの上位精神攻撃魔法エーテルアナイアレーションも叩き込まれている。


 だというのに、『邪神の器』の瘴気バリアはまだまだ尽きそうにない。


〈大丈夫だ、少しずつだが確実に効いている! そのまま続けろ! 【エーテルアナイアレーション】!〉


 ディロンの声が響き、彼の精神攻撃魔法が背骨のような部位に命中した。

 あの『千里眼』の効果で、攻撃が効いているかもある程度は把握できるのか。


(……ん?)


 ふと、頭上から轟音が続いていることに気づく。


 見上げれば、『邪神の器』は頭部から狂ったように黒い弾を放ち続けていた。

 しかし無敵化した飛竜によって全て遮られている。ただ頭部あたりで動きの止まったサンダードラゴンに着弾し、四属性の爆発を繰り返すのみ。


(なんだ? あいつ、なんで頭の位置を動かさないんだ?)


 マナヤはその様子を見上げながら訝しむ。

 サンダードラゴンは次元固化(ディメンションバリア)の魔法により、あの場から動けない。トルーマンがマナヤ達を攻撃したいなら、あの頭部の位置を動かせば済む話だ。背骨の先端を少し曲げるなり、背骨の根元自体を動かすなりして、サンダードラゴンの位置から頭をどければいいだけのこと。


 だが、『邪神の器』は一向に頭の位置を変えようとしない。


(……まさか、動けないのか?)


 思い出してみれば、中心にあるあの背骨のような体躯は今まで全く動いていない。頭部も花弁の向きを変えるだけであるし、まともに動いているのは肋骨くらいだろうか。

 実体化しはしたが、おそらくこの『邪神の器』はまだ完全ではないのだろう。ゆえに今はまだ、あの場から動くことができない。


(だとしたら!)


 相手が全く動けないのだとしたら。

 そして、精神攻撃が本当に効いているのだとすれば。


 一つ、手がある。


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