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【改稿前作品】別人格は異世界ゲーマー 召喚師再教育記  作者: 星々導々
第一章 召喚師の降臨と錬金術師の献身
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24話 それぞれの想い ASHLEY 2

 この英雄の子は、『テオ』というらしい。

 彼を心配して駆け付けた家族から、そう聞いた。


 彼の顔は、よく見ると見覚えがあった。

 たまに『間引き』で同行したことがある召喚師だ。

 でも、あの時の顔とは似ても似つかない子。

 いつも目を伏せていて、皆から距離を取っていた子。

 暗くてジメジメしてる召喚師の中でも、とびきり暗い子だったはず。


 警備の休憩の合間を縫って、あたしは見舞いに行った。

 ちょうど彼が目を覚ましたところらしい。

 目を開いてこちらを見上げる、その精悍な顔つき。

 やっぱり、あたしが以前まで知ってた彼とは雰囲気が違った。


 すると、傍らにいた金髪のセミロングの子が目に入った。

 彼女には見覚えがあった。

 久々にこの村に現れた、珍しい『錬金術師』の子。

 シャラと名乗ったこの子は、一番テオのことを心配していた。


 あたしは、もしかしたらと彼女とテオの関係を邪推した。

 テオが急に、戦いに本気になった理由を。

 この子を守りたい、という想いからじゃないか。

 だとしたら納得がいくし、ロマンチックな話じゃないか。


 すると、今度は騎士隊の人達が来た。

 スタンピード鎮圧の功労者である、彼に話があると。


 証拠を出す、と言っていきなりテオはヴァルキリーを召喚した。

 まさか戦場でもない場所、しかも屋内で上級モンスターを召喚するなんて。

 突然で驚いたけど、隊長に叱られすごすごとヴァルキリーを消してた。


 彼の口から、驚くべき言葉が出てきた。

 彼は『テオ』ではなく、『マナヤ』というらしい。

 なんと別世界から転生してきて、テオの体に宿ったんだって。

 マナヤの戦い方は、別世界の遊戯から編み出されたものだと。


 別世界の戦術。

 その言葉に、戦士としてあたしは興味がわいた。

 同時に、彼の変貌ぶりにも納得する。

 その別世界とは、モンスターが居ないと言っていた。

 なのに、そんな戦術も編み出しちゃうような世界なんだ。


 でもどうやら、このシャラという子の様子がおかしい。

 マナヤよりも、テオがどうなってしまったのか気になるみたい。

 でも、どうやらマナヤにも、テオって子がどうなったのかわからないらしい。


 そっか。

 シャラって子は、『テオ』の方が好きだったんだろうな。

 だから、別人と知ってショックを受けている。

 当然ながら、テオの両親も青褪めた顔をしていた。


 ……気持ちは、わかるよ。

 でも、そんな顔を向けなくたって、いいじゃない。

 マナヤがテオを殺したわけじゃない。

 彼はむしろ、この村を救った”英雄”なのに。

 別世界の子供を、自分の体を張って救えるような、立派な戦士なのに。


 正直あたしは、この堂々として自信家なマナヤの方が好感が持てた。

 終始暗くて、頼りがいが無かった『テオ』よりも。

 マナヤの英雄業や、別世界の人間だとかは関係ない。

 どうせなら、気持ちよく仕事できる人の方がいいと思った。


 騎士隊の人が去って、沈黙が支配して。

 明らかに気まずそうにしているマナヤに、あたしが声をかけた。

 せっかくだから、別世界の話も聞いてみたかったし。


 戦う力は無いけれど、より分業を細かくしている世界。

 いろいろな種類の学び舎を作り、何年も専門的な学業に励む人たち。

 この世界との共通点のようなものも探していく。

 あたしは、マナヤの表情が緩んでいくのを見て、ほっとした。


 神様が連れてきたという、別世界から来たマナヤ。

 彼だって、普通の人間なんだ。

 あたし達と同じ。感情を持った、普通の人間。


 警備の交代の時間が迫ってきた。

 でも未だにマナヤを責めるような目で見ている、テオの両親。

 あたしはマナヤがかわいそうになって、つい言ってしまった。


「それから、マナヤをそんな目で見ないであげてくださいよ? 彼が望んでなったわけじゃないって、わかってますよね?」


 マナヤは、加害者じゃないんだ。

 彼は、別世界から連れてこられて、戸惑っているんだ。

 彼に、そんな仕打ちをすること、ないじゃない。


 あたしは、顔色を変えたスコットさんとサマーさんに別れを告げた。

 ……未だに、彼のことを警戒しているシャラをちらりと見て。

 その場を、後にした。


 ……気持ちは、わかるけどさ。

 マナヤを責めるのは、お門違いだと思うんだ。



 ***



 それから、何度もマナヤと話をした。

 どうやら宣言通り召喚師達に指導をするらしい。

 召喚師は、モンスターを操るという都合上、訓練ができない。

 だから指導といっても一体何をする気なのか、あたしにはわからなかった。


 だから、ちょっとできた自由時間を使って、様子見に来た。

 この召喚師用の集会場は、村の中央付近とはいえ普段は人が寄り付かない。

 だから少し警戒していたけど、中は意外と掃除が行き届いていた。


 そして、その中に居る召喚師達を見て驚いた。

 真剣な顔をして、ああでもないこうでもないと語らい合っている。

 その目は、あたしが知っている召喚師達とは違っていた。

 生気があって、希望を持っている。

 そんな、ちゃんと人間が持っていてしかるべき顔をしていた。


 ここ数日、『間引き』で同行した召喚師。

 騎士隊に所属しているであろう召喚師たちでさえ、暗い顔をしていた。

 とりあえずやるべきことだけやっていれば良いと。

 そんな、全てを諦めたような表情をしているのが、普通の召喚師だった。


 聞くところによると、マナヤの指導で自信をつけ始めたらしい。

 いいじゃないか。

 戦う以上は、ちゃんと自分の役割に自信を持ってもらわないと困る。

 そういう気持ちの良い人たちと仕事をしたいじゃない。


 ……ただ。

 少し、マナヤの寂しそうな表情が、気になった。


 考えてみれば。

 マナヤは、突然別世界に連れてこられたんだ。

 言ってみれば、いきなり故郷から無理やり引き離されたようなもの。


 故郷が恋しくなってしまっても、おかしくない。

 あたしだって、成人の儀を受けて学園に通った一年間。

 落ち着けるセメイト村に帰りたい、と思ったことはあったんだから。


 指摘してみると、食べ物に不満がある、みたいなことを言ってきた。

 味のバリエーションが少ないだとか。

 あたしは王都での食事に不満を持ったことなんて、なかったけれど。

 もしかしたら、別世界だと食べ物の味も全然違うのかな。



 その次の日。

 マナヤは、あたしと合同で『間引き』に参加した。


 その時のマナヤの働きぶりに舌を巻いた。

 避けきれない敵の攻撃を、自分の体で受けて。

 召喚モンスターに魔法をかけて、それによって敵の攻撃を鈍化させて。

 遠くから撃ってくる、鬱陶しい敵モンスターを優先的に処理して。

 ヴァルキリーに回復魔法なんてかけて、維持し続ける。


 召喚師がモンスターに強化魔法をかけることができることは知っていた。

 でも、あんまり積極的に使っているところを今まで見たことがなかった。

 考えてみれば、当然の話だ。

 そんなマナがあるなら、戦力を増やすのに使うべきというのが、自然。

 それに、モンスターをわざわざ回復してやるなんて、ちょっと気味が悪い。


 でも、戦場でのその戦い方。

 実際に目の当たりにして、初めてそのありがたみに気づいた。


 今までの召喚師の動きの単調なこと。

 とにかくモンスターを数出して、肉壁として突撃させるだけ。

 無駄に前衛に味方が集中してしまって、合間を縫って攻撃するのもやりにくい。

 厄介な敵の射撃モンスターの処理も、気を散らしながら剣士が担当。

 気づけば肉壁役も居なくなって、乱戦になりやすくなる。


 なのに、マナヤと戦い方となると。


 敵モンスターの攻撃が鈍るから、先制攻撃で処理しやすい。

 射撃モンスターも処理してくれるから、接近戦に集中しやすい。

 肉壁となる召喚モンスターが強力な上、絶え間なく居座るから戦いやすい。

 前線が維持され続けるから、陣形を維持したまま安定して攻撃しやすい。


 まさか召喚師の動き方で、こんなに安全確実に戦えるようになるなんて。

 はっきり言って、かなり嬉しい誤算だった。

 彼があのスタンピードで活躍した理由にも、納得がいった。


 彼が指導した他の召喚師達も、『間引き』で雰囲気が良くなっていた。

 ヴァルキリーが無くても、相当助かる戦い方をしていたらしい。

 多分、『英雄の手ほどきを受けた』というのも、影響していたのだろう。

 このために騎士隊の人たちは、彼を英雄に仕立てていたんだ。


 実際後日、他の召喚師と組んでも、かなり戦いやすくなっていた。

 マナヤほどじゃ、なかったけどね。



 ***



 ある日。

 マナヤが、珍妙な顔をしていた。

 あたしを見つけるなり、こう言いだした。


「……お前まで、俺の手を包み込んでくるとか無いだろうな?」


 ……なにソレ。

 あたしにしろって、催促してるの?

 自分はやりたくないから、あたしからしてこいって?

 ()()()があるなら、そっちからしてくれば良いのに。


「……そういうことを、こっちからやらせるように誘導する言い方って、卑怯じゃない?」


 けれど、あたしがそう言い返した時。

 マナヤはわけがわからない、といった感じで混乱してた。


 話を聞くと。

 どうやらマナヤの世界では、求婚の作法が違うらしい。

 それどころか、求婚せずに愛を告白することも普通なんだって。

 いきなり求婚なんて、しないんだって聞いた。


 正直、あたしは驚いた。

 別世界といっても、あたしはそこまで文化が違うと思ってなかった。

 だって、今までマナヤと普通にしゃべっていても、普通だったから。

 そこまで考え方が違うと思ったことは、なかったから。



 次の日。

 あたしは『間引き』を終えた後、マナヤと鉢合わせた。


 彼は、明らかに荒れていた。

 いつもの自信や余裕を全く感じなかった。

 何かに怒り続けているような。

 あるいは、何かに振り回されているような。


 あたしが指摘すると、そのしかめっ面が引き攣った。

 癇癪(かんしゃく)を起こすように喚いた。


 あたしには……彼が、泣いているように見えて。

 彼を落ち着かせて、村はずれの広場へと誘った。




 マナヤから話を聞いて。


「……そっか。ごめんね、あたしもキツいこと言っちゃったんだね」


 あたしは、マナヤが思った以上に苦しんでいたことを知った。

 全く違う食事。全く違う生活様式。

 いきなりの求婚と、それによっていろいろな人に怒られたこと。

 ……あたしも、マナヤを責めた一人だったこと。


 そうか。

 異世界から来るっていうのは、そういうことなんだ。

 あたしは、今さら気づいた。


 何もかもが全く違う世界。

 価値観が違う世界から来るっていうのが、どれほど苦痛か。

 あたしは、全く知らなかった。

 全く、理解してあげられてなかった。


 村を引っ越したり、王都に行くのとはわけが違う。

 周りの何もかもが、自分の知らないことだらけ。

 自分の常識が通用しない。

 自分の馴染み深いものが無い。

 それでも、そこで生き続けていかなきゃならない。


 ……普通だったら、故郷が恋しくなったら帰れば良い。

 あるいは、いつか帰れるという希望にすがれば良い。

 でも、マナヤにはそれができない。


 帰りたくても、帰る手段が無い。

 故郷が滅ぼされてしまった人と同じように。

 ……いや、ただ故郷を滅ぼされただけの人と違って。

 その痕跡を見に行くことすら、許されない。


 そんな孤独感の中、彼はずっと暮らしてきてたんだ。


 あたしは、なんとか彼を慰めようとした。

 大丈夫、少しずつ慣れていけばいいんだって。

 あたしも、これからは手伝うからって。


 ――でも。


「――お前まで」

「え?」

「お前まで、俺に帰っちゃいけねぇっていうのかよ!!」


 ――しまった。

 あたしは、また間違えたのかもしれない。

 この世界の常識を、また彼に押し付けようとしたのかもしれない。


 マナヤは、誰かに言って欲しかったのかもしれない。

 帰りたければ、帰っても良いんだよ、って。

 この世界に縛られ続けることなんて、無いんだよって。


「この世界に、俺の居場所なんか()ぇッ! なのに、帰ることすらできねぇんだッ!!」

「マナヤ!!」


 けれどあたしが謝る前に、彼は走り去ってしまった。


 ……追いかけなきゃ。

 今の彼を、放ってはおけない。


 ――追いかけて、どうするの?


 あたしは、彼を追おうとする足が止まった。

 今の彼に、なんて言えばいい?

 なんて言えば、彼を慰めてあげられる?


 あたしは、彼からすれば別世界の人間。

 あたしが、彼が求める言葉をあげることは、できる?

 ……また、彼を傷つける言葉を言ってしまわないって、言える?


 あたしは急に、マナヤがわからなくなった。

 今まで、あれほど意気投合してたのに。

 一緒に叩きあう軽口が、心地よかったのに。


 今では……言葉を交わすのが、怖い。

 何が彼を傷つけるか、わからない。

 だって……あたしは、住む『世界』が違うから。

 心地よいと思ってた、あの軽口もダメだったのかもしれない。

 彼にとっては……苦痛だったのかもしれない。


 自分の足元がガラガラと崩れていくような感覚がした。



 結局。

 あたしは、その日はスコットさんとサマーさんにだけ伝えた。


 一緒に暮らしている彼らなら、もっと彼を理解しているかもしれない。

 だから、彼が思い詰めていたことを伝えて。

 あたしは、今日は帰ることにした。



 ***



 次の日。

 いつもマナヤが集会場へ向かう道筋。

 あたしはそこで、彼を待つことにした。


 大丈夫。

 一晩経った今なら、きっと。

 マナヤも、少し落ち着いているかもしれない。

 いつも通りの彼なら、きっとちゃんと話ができるはず。


「あ……マナヤ!!」


 彼がやってきた。

 あたしは小走りで、彼に駆け寄った。

 良かった。

 もう来ないんじゃないかって、少し不安だった。


「マナヤ、ごめんね! あたし、あんたの気持ち、全然考えてなくて……!」

「え、えっと?」

「だから――あ、あれ? マナヤ、よね?」


 けれど。

 その道筋で出会った、マナヤは違った。

 いつもの、自信たっぷりな余裕の表情がないだけじゃない。

 纏っている雰囲気そのものが、まるで違った。


 彼の顔を覗き込む。

 妙に自信なさげな、頼りない表情。

 あたしを、ただの『知人』を見るような目で見返す瞳。

 やけにおどおどとした、立ち居振る舞い。


「えと、剣士のアシュリーさん、ですよね?」


 そして……彼らしくない、丁寧な言葉遣い。

 この、余所余所しい態度。


「……ど、どうしたのマナヤ? そんな、喋り方……」


 ――まさか。

 あたしは、自分の体が震えるのがわかった。

 嘘。

 本当、に?

 まさか、本当に、マナヤは。


「……アシュリーさん」


 彼の傍らにいた、金髪の女の子。

 ……確か、シャラって子。


「もう、マナヤさんは居なくなりました」

「――え」


 ――この世界に、俺の居場所なんか()ぇッ!

 彼の、最後の言葉が頭をよぎる。


「それ、じゃあ……」


 震え声になりながら、シャラに尋ねる。

 嘘だと言って欲しくて。


「彼は、テオ、です」


 でも、シャラは無慈悲に語った。

 あたしが、一番恐れてた言葉を。


 マナヤは――帰って、しまったの?

 彼の、世界に?


 この世界に。

 ……あたしにも、嫌気がさして?


「――テオが、戻ってきてくれたんです」


 ……。

 ()()()()()()()()

 なにを。

 なにを、マナヤが居なくなって嬉しいみたいな、言い方を――!!



「――っ」



 シャラがそう言った瞬間。

 あたしは、かっとなって。

 怒りに任せて怒鳴ってしまいそうになって。

 歯ぎしりして、ぐっとそれを抑え込んだ。


 ……わかってる。

 この子は、元の『テオ』を大事にしていた。

 だからそのテオが帰ってきて、嬉しいのは当然だ。


「……そう」


 だから、それだけ言うにとどまる。

 あたしは、早々にその場から立ち去ることにした。


 そもそも、あたしにこの子を責める資格はない。

 マナヤが居なくなったのは、シャラのせいじゃ、ない。


 マナヤに、トドメを刺したのは……あたしだ。


 あの時。

 ちょっとずつ慣れていけば良いなんて言わなければ。

 帰りたかったら、帰っても良いんだよ、と言ってあげれば。

 彼が欲しがっていた言葉を、あげていれば。


 マナヤはまだ、この世界に残っていてくれたかもしれない。

 彼を追い詰めたのは、あたしだ。

 ちゃんと、彼の気持ちを理解してあげられなかった、あたしの責任だ。


 ――ごめんね、マナヤ。

 あたしは……

 あんたの力に、なってあげられなかった。



 ***



「監視……ですか?」

「そうだ」


 その直後。

 あたしは、騎士隊についてきていたディロンという黒魔導師に呼び出された。

 マナヤを……いや、『テオ』を、私に監視して欲しいと。

 部屋の中には、白魔導師のテナイアという女性もいた。


「彼が、『マナヤ』ではなくなったと聞いた」

「……はい」

「その話の信憑性、君をどう思う?」

「……あれが演技であれば、大したものだと思います」


 あたしはそう答えながらも……

 あれが演技であって欲しい、とも思っている自分が情けなくなった。


「君は、『マナヤ』と親しかったと聞いている」

「……はい」

「彼を監視し、それが演技でないか。彼がボロを出さないか。調べて貰いたい」

「……彼の、両親の方が良いのではありませんか?」


 あたしは『マナヤ』は知ってるけど、『テオ』はあまり知らない。

 両方を知っている、彼の両親の方が良いんじゃないかと思った。


「両親では、どうしても肉親の色眼鏡が出る。公平な判断は下せまい」

「……」

「その点、君の方が『マナヤ』の痕跡を探りやすいと踏んだ」

「……はい。わかりました。引き受けます」


 微かな希望にすがりたくて。

 彼の痕跡が残っていないか、確かめたくて。

 あたしは、それを引き受けることにした。



 ***



 その日の午後。

 あたしは、『監視』の任務としてテオの『間引き』に同行した。


 ……『テオ』と一緒に戦って。

 今さらながら、マナヤの戦い方がどれだけ凄かったか。

 あたしは、思い知らされることになった。


 テオはただ、『ヴァルキリー』を使ってゴリ押ししてるだけだ。

 ヴァルキリーの性能に頼ってばかり。

 それ以外の召喚モンスターの扱いだって、適当だし。

 前線の援護なんて、ほとんどしてくれない。


 あまつさえ、そのヴァルキリーを時々、死なせさえしていた。

 その都度、再召喚していた。

 完全にヴァルキリーありきの戦いしかしてない。

 ヴァルキリーが強い、っていうだけだ。

 あれじゃ、今まで通りの召喚師と何も変わらないじゃない。


 マナヤだったら。

 彼ならそんなヴァルキリーを、もっと巧みに扱っていた。


 手薄になってしまった場所に、素早くヴァルキリーを誘導して。

 さらに本陣には、射撃モンスターを配置して援護できるようにして。

 状況に応じて、召喚モンスターを細かに動かして。

 魔法も使って、仲間の援護ができるようモンスターを操って。

 敵の射撃モンスターを、優先的に処理しに行って。


 あいつが「遠慮なく全力を出してやった」と言っていた意味が、わかった。

 同時に、はっきりわかってしまった。

 ……こいつは、マナヤじゃない、って。




 ……マナヤ。

 今、あんたは、元の世界に戻れたのかな?


 もし、元の世界に戻れているなら。

 それで、あんたが幸せに生活できているなら。

 もう、それで良いのかもしれない。


 別世界からわざわざ連れてこられて。

 あんな、苦しい思いまでして戦って。

 そうまでして、この世界に尽くす理由なんて、ないんだから。


 あたし達の世界は、あたし達で守る。

 ……マナヤ、あんたが育ててくれた、召喚師の弟子たち。

 彼らが、きっとうまくやってくれるから。

 安心して、あっちで幸せに暮らしてね。



 ……ただ。

 ……せめて、あんたに、一言。

 ……ちゃんと、謝りたかった。

お待たせしました。次回より本編と元の文体に戻ります。

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