204話 防衛機構と連携戦術
二日後、デルガド聖国南部のバルハイス村にて。
白昼堂々、早くも大量のモンスターが村に襲い掛かってきていた。
村を取り囲む防壁、その外側に密着している直方体の建造物の上に立つマナヤ。
「【応急修理】! 【電撃獣与】!」
まず建造物内に配置している猫機FEL-9に治癒魔法を。
マナヤのすぐ隣に配置してあるケンタウロスには電撃の攻撃力を付与した。
建造物内に配置された猫機FEL-9の傷が直っていく。
その間、ケンタウロスがバチバチとスパークする矢を発射。
建造物内の通路に撃ち降ろし、敵を射抜いていた。
建造物の中にはコの字状に曲がった細い通路があり、その最奥は行き止まり。入り口は防壁の外に繋がっていた。通路に天井はつけられておらず、建造物の上からその通路内へ一方的に攻撃できるようになっている。
「いいか、これが基本だ! 通路の最奥に配置したFEL-9で引き寄せる! そうすりゃ、FEL-9を狙って通路内のモンスターが渋滞を起こす! こうやってここから一方的に敵を射抜けるぞ!」
マナヤが声を張り上げて説明を行う。防衛機構のすぐ後ろ、防壁のてっぺんに立っている者達がおっかなびっくりな様子で聞き入っていた。
ここバルハイス村に所属する召喚師たちだ。同じ防壁の上、彼らから少し離れた位置には他『クラス』の者たちもいて、微妙そうな表情でこちらを見つめている。
村長代理をやっているラサムから受けた、召喚師の立場を高める依頼。
これはその一環ではあるが、村をモンスター襲撃から守るための措置でもある。なにしろセメイト村などとは比べ物にならない頻度でモンスターがやってくるのだ。
そこで、セメイト村で発明された『防衛機構』をさっそく試してみた。村の防壁に密着する形で、直方体の建造物を設置。ランシックが引いた図面を参考に、村の建築士たちに造らせたのである。
マナヤがアシュリーへ目線で合図を送る。
「――じゃ、ついでに剣士の戦い方も見せとこっか! マナヤ、頼んだわよ!」
「おう、いくぜアシュリー! 【ゲンブ】召喚!」
後方へ向けて大声で説明しつつ、アシュリーは合わせるようにマナヤへ催促。
それに応じ、マナヤは彼女の横にゲンブを召喚した。
アシュリーは、召喚紋の中から現れたゲンブの尻尾をむんずと掴む。
それをまるごと振り上げ、肩にかつぐような形で構えた。
「【火炎獣与】!」
担がれたゲンブに対し、火炎を付与する『獣与』魔法を使用。
ゲンブの頭部がメラメラと燃え上がる。
「セイヤアァァァッ!」
頭に炎を纏ったゲンブを、アシュリーは思いっきり投げ降ろした。
轟音を立てて通路内のモンスターを叩き潰し焼き尽くす。
「【跳躍爆風】!」
マナヤは、投げ下ろされたゲンブに跳躍爆風を使用。
破裂音を立てて、ゲンブは通路内から建造物の上へと跳び上がる。
見れば、既に位置を変えていたアシュリー。
跳び上がったゲンブを、対面からパシッとつかみ取った。
「セイッ!」
そして、それをすぐさま下へと再び投げ降ろす。
もう一度轟音を立て、またしても通路内の野良モンスターが潰された。
「【跳躍爆風】!」
「セェイッ!」
マナヤがゲンブを跳び上がらせ、それをアシュリーが掴んで投げ下ろす。
餅つきのごとく、それを何度も繰り返した。
これにより、猫機FEL-9に隣接している敵モンスターが居なくなる。だが、通路内にはまだまだ野良モンスターがひしめいていた。猫機FEL-9に釣られ、こちらへ殺到してきたモンスター達だ。
「ここからは私の番だな。マナヤ」
「ええ、頼みましたよディロンさん。【火炎防御】」
今度は、同じく建造物の上に立つディロンが進み出た。それを受けたマナヤは、通路内のゲンブに火炎防御をかける。リクガメのような巨体が、オレンジ色の防御膜に覆われた。
「【ブラストナパーム】!」
通路内に向かって、ディロンは火炎属性の範囲攻撃魔法を撃ちこんだ。
爆炎が通路内を駆け抜け、炎がモンスター達を嘗め尽くす。
しかし、その爆炎がゲンブに辿り着いたところで反射。
跳ね返された爆炎が再び通路内を逆流していった。
狭い通路で凝縮された業火が、中のモンスター達を焼き尽くす。
「ほら、早く封印してくれ」
「あっ、は、はい! 【封印】」
マナヤが後ろの召喚師達に指示すると、慌てて彼らは封印の魔法をかけた。通路内に残った瘴気紋が次々と浮かび上がり、金色に変化して召喚師達の手のひらへ吸収されていく。
「マナヤ殿。新手がやってまいりました」
「もう来たか。さすがにモンスターが増えてるだけあるな」
建造物の上で索敵をしていたレヴィラが、弓を構えた状態で告げる。マナヤは、彼女が構えた先に見えるモンスターを肉眼で確認してほくそ笑んだ。
「まだちょっと遠いが……テナイアさん!」
「はい。いつでもどうぞ」
マナヤが後方のテナイアへ声をかけると、彼女はすぐに敵の方向へ手をかざす。
それを確認したマナヤは、同じ方向へと両手を突き出した。
「【ナイト・クラブ】召喚、【秩序獣与】!」
銀色の大ガニ、『ナイト・クラブ』を召喚。
すかさず秩序獣与をかけ、大ガニのハサミが青白い光に包まれる。
「いきますよ! 【跳躍爆風】!」
破裂音。
マナヤの跳躍爆風でナイト・クラブが跳び込んでいく。
が、落下地点は敵モンスター群が居る場所よりもずっと手前だ。
「【レヴァレンスシェルター】」
するとテナイアが呪文を唱える。
突如、ナイト・クラブの落下予測地点あたりに光の床が出現。
空中に現れたその光の床に、ナイト・クラブがぶつかってバウンドした。
勢いを取り戻したナイト・クラブは、さらに奥へ跳び込んでいく。
狙い通り、モンスターの群れの後方へ。
着地と共に、ナイト・クラブのハサミが最後尾の敵モンスターに突き立った。
白魔導師の結界魔法『レヴァレンスシェルター』は本来、特定地点に半球状の結界を張るものだ。一定範囲内の味方をまとめて保護したい場合に使う魔法である。
が、テナイアは半球状になるはずの結界を形状変化させていた。真四角の平たい床のような形に変え、モンスターが着地した際に弾みやすくしたのである。
もっとも、この距離でここまで正確に結界を張ることができるのは、テナイアの技量あってのものだ。
「レヴィラさん! 【秩序獣与】」
「はい。では失礼して」
次にマナヤは、レヴィラへ呼びかけつつ呪文を。
自身の『ケンタウロス』に神聖属性を付加したのだ。
ケンタウロスが持つ弓が神聖な光を帯びる。
頷いたレヴィラは、ケンタウロスの背にひらりと跨った。
その状態でケンタウロスが持つ弓を強引につかみ取り、その弦を引き絞る。
するとどこからともなく矢が出現し、弓につがえられた。無尽蔵に矢を出現させることができる、弓矢を使う召喚モンスターの特徴だ。
「【マッシヴアロー】」
その状態で、レヴィラが矢の威力を高めて放つ『技能』を発動。
秩序獣与による神聖属性付与に、マッシヴアローの威力増大効果。
二重の威力強化を宿した矢が、一撃で遠くの群れのうち一体を射殺していた。
レヴィラはそのままケンタウロスの弓を使い、何度も神聖属性を帯びた矢を放ち続ける。
剣士がモンスターを武器として振り回せるのと同様、弓術士も『弓矢を持ったモンスター』の弓を使って技能を放つことが可能なのだ。
「では、次はワタシの番ですね! レヴィラ、ロープをお願いします」
「こちらに」
レヴィラの後ろに控えていたランシックが、ずいっと一歩踏み出した。
ケンタウロスに跨ったままのレヴィラが、懐からロープを取り出す。
彼女とのすれ違い様、ランシックはそのロープを受け取った。
仁王立ちになったランシックは、右腕を天に掲げつつ高らかに声を張り上げる。
「母なる大地、その深淵より来るは、はるか太古より見守りし破壊の戒僧――」
「ふざけていないで早くお造りください」
聞いている方が恥ずかしくなるようなランシックの口上を、レヴィラが矢を放ち続けつつぴしゃりと遮る。
「くっ、止めるが早いですよレヴィラ! せっかく寝る間も惜しんで口上を考えてきたというのに!」
「その口上のために、どの程度睡眠時間をお削りに?」
「三分ほど!」
「しょせんはその程度の出来栄えです。自重してください」
「ええから早よせんか!! モンスターが迫ってきてることに気づけ!」
夫婦漫才を始めるランシックとレヴィラに割り込み、マナヤが空中をチョップしてツッコミを入れた。
「キレの良いツッコミありがとうございますマナヤ君! それでは早速……」
と、ニカッと殴り甲斐のありそうな笑顔を作ったランシックが、ようやく足元に手を着く。
マナヤらが立っている建造物から、ボコボコと岩が上に伸び始めた。
それが徐々に何かの形を作っていく。
パッと見には、全てが岩でできたシーソーのようなものだ。
ただしそれを支えているのは巨大な三脚。人の身長の二倍ほどはあろう高い三脚に、板状になった岩が固定されている。完全に縦になったシーソーのような状態だ。固定部分は回転軸になっており、シーソー状の板の中央にその軸が着けられてあった。
シーソー板の上端には、座席の代わりに大きな球状の岩の塊が。下端には先ほどのロープが輪っか状に据え付けられており地面まで垂れ下がっていた。
岩で作られた平衡錘投石器である。
「【トリケラザード】召喚」
マナヤは、輪っか状になったロープのあたりに甲殻付きのトリケラトプスのようなモンスターを召喚。中級モンスター『トリケラザード』だ。
ランシックはてきぱきとロープの輪を、そのトリケラザードの胴体に通した。
「準備OKです! いきますよ!」
と、ランシックはその場から数歩下がって足元に手を着く。
その瞬間、トレビュシェットの板が動いた。
上端の岩の塊が錘となり、シーソー状の板が一気にぐるんと奥方向に回転。
反動で、逆側の端がロープごと思いっきり跳ね上がった。
そのロープに括りつけられたトリケラザードはそれに振り上げられ――
――ドヒュウッ
大きな放物線を描いて、敵陣の中へと放り込まれていった。
地響きを立てて、落下地点に大きな砂煙を巻き上げるトリケラザード。
着地点のかなり広範囲に衝撃を叩きつけていた。
モンスターの群れの中にクレーターが出来上がっている。
「……うへえ」
そのとんでもない威力にマナヤはドン引き。観察していたアシュリーも同じような顔をしていた。
結果を満足そうに見つめたランシックが振り向き、爽やかな笑顔で後方の見物人らに言い放つ。
「そうそう、言い忘れました! 今ワタシが造りましたコレ、多分一般の建築士にはそうそう真似できませんのでご了承ください!」
「じゃあなんで見せたんスかね!?」
すかさずツッコむマナヤ。
ランシックからは事前に、「建築士と召喚師の連携なら、ワタシにもアイデアがあります!」と自信満々に提案されていた。だからこそ、この村の建築士が参考になるかと思いデモンストレーションしたというのに。
「そりゃもちろん、魅せるためですよ! 一般の建築士の方々はそうですね、滑り台のようなものを作って飛ばすと良いかと!」
「じゃあそっちを見せれば良かったじゃないスか!」
「ワタシがそれをやると、強度が足りないんですよ。細かい物を造ったり動かしたりは得意なのですけれどもね。頑丈なものを作るのは貴族ではなく、一般の建築士達の範疇でしょう」
「だったらなんで建築士の騎士サマにでも代役してもらわなかった!?」
「なるほど、そういう考え方もありますね!」
腰に両手を当てて高笑いするランシック。後方で見物している召喚師たちも苦笑いをして、お互いの顔を見合っていた。
「かなり数が減ってきたようです、マナヤ殿」
レヴィラの声。
彼女はケンタウロスの弓を使い、絶え間なく矢を放ち続けていたようだ。
気を取り直したマナヤは、前方をあおぎ見て残りを確認する。
「レヴィラさん、別方向から他にモンスターが来ている気配は?」
「今のところはありません」
「そうスか。よし、あの数ならたぶんちょうどいいだろ」
レヴィラの返答に黒い笑顔を浮かべたマナヤ。数が適度に減っているし、バリエーションもある。練習《・》にはぴったりだろう。
マナヤは後方の召喚師達へと振り向き、彼らを手招きする。
「んじゃ、あんたらもこっち来てくれ。体験学習の時間だ!」
「……え? ええ!?」
いきなりの無茶ぶりに、召喚師達の声が上ずった。
***
「ぶ、【火炎獣与】! え、あれ?」
「何やってる! 今あんたの召喚獣が戦ってんのは『エルダー・ワン』だ! 火炎耐性持ちだから意味ねえぞ!」
「【跳躍爆風】! あっえっ、なんで外に!?」
「跳ばしすぎだ! ちゃんと跳躍爆風の方向と飛距離は確認しろ! 今みたいに防衛機構の外まで吹っ飛ばしちまうぞ!」
「【応急修理】!」
「まだ早い! そこまでFEL-9は損傷してねえだろ、マナの無駄遣いだ! 治癒魔法の回復量を理解しろ!」
召喚師達の補助魔法援護、その一つ一つにダメ出しをし続けるマナヤ。
(あーうん、やっぱ先に知識を詰め込まねーとこうなるのか)
改めて、知識を先に教え込むことの重要性を再確認する。
召喚獣をそのまま戦わせるのではなく、適宜補助魔法でサポートする。それがマナヤが『サモナーズ・コロセウム』で学んだ召喚師の戦術、『コウマ流召喚術』の真髄だ。
しかし、補助魔法は下手に使うとただのマナの無駄遣いになる。目の前の召喚師達がまさにその典型例だ。
これが知識の差だ。
よく仕様を理解せぬまま補助魔法を使えば、無駄にマナを失い逆に脚を引っ張ることになる。確かにこの体たらくなら、召喚獣をひたすら量産しそのまま突撃させた方がまだマシだろう。補助魔法が廃れてしまうのも頷けた。
「や、やっとここまで減らせた……!」
疲労困憊した様子の、そんな呟きが聞こえる。防衛機構での戦いを体験していた召喚師の一人だ。
マナヤのフォローもあってモンスターがだいぶ減ってきていた。脚の遅い近接攻撃型の野良モンスターらが三体ほど、ようやく防衛機構の近くへとたどり着いたところだ。これが最後の敵である。
「だいぶマシになってきたな。ちったあ補助魔法の使い方がわかったか?」
「え? えっと、マナヤ……さん、だったっけ。ええ、まあ」
「よし、んじゃ後は俺に任せろ」
「任せ……って、一体なにを?」
「ちょうどいいから、お前らに面白いものを見せてやるよ」
粗く息をしながら不思議そうに見上げてくる召喚師に、マナヤは不敵な笑みを向ける。この防衛機構は、あの戦術を披露するのにも都合がいい。
マナヤは防衛機構の上を歩き、入り口の真上あたりに立つ。
「【リーパー・マンティス】召喚」
入り口に向かって下級モンスター『リーパー・マンティス』を召喚する。
召喚紋から現れた人間サイズの巨大カマキリは、そのまま下へと落下。
防衛機構の入り口、その少し内側に着地した。
「【強制誘引】」
さらにマナヤは、『強制誘引』をも使用。
敵モンスターの注意を引き付ける魔法だ。
野良モンスター達が、標的をリーパー・マンティスに定める。
「【ガルウルフ】召喚」
「へっ、マナヤさん?」
しかしそこでマナヤは、リーパー・マンティスの手前に新手を召喚した。
狼型の下級モンスター『ガルウルフ』である。
防衛機構の入り口をふさぐ形でガルウルフが配置され、そのぴったり後ろにリーパー・マンティスが立っているという状況だ。
観察していた召喚師たちは、困惑するしかない。
リーパー・マンティスは、HPが低い代わりに非常に高い攻撃力を持つ近接型のモンスターだ。
にも関わらず、マナヤはガルウルフが入り口を塞ぐように配置している。せっかく召喚したリーパー・マンティスは攻撃に参加することすらできない。
しかし、マナヤは自信たっぷりに眼下を見下ろしていた。
やってきた敵モンスターは、牛機VID-60一体とエルダー・ワン二体だ。
さっそくその三体が接敵。
しかし、どれもただガルウルフのいる入り口付近をうろつくのみ。
ガルウルフに爪で攻撃されても、まったくの無抵抗だ。
「あ、あれ? なんであいつらは攻撃しないんだ?」
「ガルウルフに攻撃されてるのに、反撃しないの?」
「え、なんでうろつくだけなんです?」
やがて召喚師達は、そんな敵モンスターの奇妙な動きに気づき困惑を深める。
「これが『殺虫灯』戦法だ。こういう、モンスターで道を塞げるような地形じゃかなり役立つぜ」
満足げにモンスターの動きを観察しながら、説明を始めるマナヤ。
「リーパー・マンティスのHP……生命力は、数字にすると百だ。で、ガルウルフの生命力は二百ってトコだな。倍くらいの差があるだろ?」
「は、はぁ……」
「しかもリーパー・マンティスにゃ強制誘引までついてる。こうなると、敵モンスターはどう動くと思う?」
「さあ……?」
首を傾げるしかない召喚師に向かって、マナヤがほくそ笑んだ。
「ガルウルフを無視して、頑なにリーパー・マンティスだけを狙おうと躍起になるのさ」
ゲーム『サモナーズ・コロセウム』では、『殺虫灯』戦法と呼ばれていた。
強制誘引は、敵から見てそのモンスターの位置が『半分の距離』にいると誤認させる魔法だ。
そのリーパー・マンティスと敵との間に、ガルウルフがいる。この場合、敵から見るとリーパー・マンティスとガルウルフはどちらも『同じ距離にいる』ものと認識する。
すると、よりHPの低いリーパー・マンティスを最優先で狙うようになるのだ。
しかし敵は、位置的にガルウルフが邪魔でリーパー・マンティスに隣接できない。結果敵は、なんとかリーパー・マンティスを隣接しよう躍起になるばかりで、ガルウルフの攻撃を一方的に食らい続ける。
「よし終わったな。そら、封印を」
「……はっ!? あ、はい! 【封印】」
じきに残ったモンスターも倒され、瘴気紋だけが残った。マナヤに促され、我に返った召喚師達が封印を始める。
「とまあこんな感じだ。この防衛機構と、召喚師の戦術。これを併せりゃ、多少のモンスター襲撃だって安全に処理できるってことッスよ」
召喚師達と、まだ防壁の上で観察している他の者達へ向けてそう告げるマナヤ。この村の召喚師達はすっかり引き込まれ、マナヤを見つめたり防衛機構の様子を観察したりしている。
襲撃してきたモンスターが、ほぼ無抵抗に倒される。そんな様子に皆驚きを隠せない。
「よし! じゃあお前らは明日、村の広場に集合してくれ! 召喚師が戦うための知識ってやつを詰め込んでやる!」
そう言ってマナヤは、防壁の上へと飛び移った。アシュリーやディロンらも、そして召喚師達もそれに続く。
「……ねえ、マナヤ」
「ああ、わかってる。あいつらはまだ納得できねえみたいだな」
近くまで小走りで駆け寄ってきたアシュリーが、そっと耳打ちしてくる。マナヤも既に気づいていて、アシュリーの目線を追った。
その先にいるのは、召喚師以外の『クラス』に就いている者たち。
(結局、あっち側の認識も改めさせる必要があるってワケか)
彼らはいまだ、猜疑心に溢れた視線でマナヤ達と召喚師達を見つめていた。




