おねえちゃんのこいびと
「……そ、そんなわけ」震える声で嘘をつく。正直になんて言えるわけがない。けれど嘘をつくことに心が痛む。
「わたし知ってるんだ、恋人同士はおくちでちゅーするって」みこはたたみかけてくる。
「そっ、そうなんだ」
「おねーちゃんもしってるよね」じぃ、とみこは見つめてくる。
……だめだ。これ以上ごまかせない。
「そうね。口でするのは好きな人とするちゅーかもね」
「じゃあ、私たち恋人同士?」
「……えっと」言葉に詰まる。「うんとね、恋人のキスをしたから恋人になるわけじゃないの。恋人同士がよくやるのがお口のちゅーなのよ」
「うーん? じゃあおねえちゃんは私を恋人にしたかったの?」ちょっと首を傾げながらみこは聞く。
……そう聞かれると、わからない。あの時は、暴走しかけていた欲望を抑えるためにとっさにしてしまったことだけれど、みこを恋人にしたいかと言われると、わからない。元々姉妹だから、恋人にするという発想がなかった。
でもたしかにあのとき、私はみこに恋してしまっていた、のかもしれない。
「……みこが可愛くてつい、口にキスしちゃったの。恋人にしたいって思ってキスしたわけじゃないの」正直に伝える。
「かわいい……えへへ」照れながらみこは顔を私の二の腕にこすりつける。そういうところが可愛いのだ。
「だからお口のキスは恋人じゃなきゃしちゃだめなの……だからもうしないわ」自分に言い聞かせるように
告げる。
本当はキスにそんなルールなんてないんだろうけど、そうやって自分を縛らないと、また過ちを犯してしまいかねない。
「じゃあ、おくちのちゅーって恋人になったらしていいの?」
「まあ、そうね」
「じゃあ私、おねーちゃんの恋人になりたい」
「……え?」とくん、と心が跳ねる。