ねだる
「今日も、ねていい?」とみこはたずねる。昨日より早い時間だ。私も寝る支度をしている途中でまだ布団に入っていない。
「ねむれないの?」みこも寝る前に私の部屋に来たように見える。
「うーん……ねむれないというよりは……」
「というよりは?」私は聞き返す。それ以外の理由なんてあるのだろうか。
「おねえちゃんと一緒に、ねたいなぁって」みこは少し照れくさそうに告げる。
「へ?」どくん、と心が跳ねる。
「だめ?」上目遣いに、みこはみつめてくる。
「も、もうそんな年じゃないでしょ」自分の声が少し震えてしまってるのがわかる。
「年……年だからって甘えちゃだめなの?」
「……大人になっても甘えんぼになったら困るじゃない。」
「まだおとなじゃないもん」みこはぷく、とむくれる。
「ねえいいでしょ?」私の手を握りながら、みこはおねだりしてくる。かわいい………。私はそんなみこのおねだりにとても弱い。しかもこのおねだり、普段から良くしてくるわけじゃなくたまにしかしない。だからこそついつい甘やかしてしまうのだ。
「わかったわよ、今日だけね」私は折れる。別に添い寝がだめなわけじゃない。ただ昨日のことがあったから……できるなら避けたかった。
だけど、多分大丈夫だろう。昨日とちがって私は「妹」のみこが好きな、ちゃんとした姉だった。欲望が自ら湧き起こる気配はなさそうだった。
「やった! ありがとう〜」みこは喜んで私に抱きついてくる。むにゅ、と私の胸にみこの顔が埋まる。どき、と少し欲望が目覚めかける。……いや大丈夫、大丈夫だ。
「ふふ、みこは甘えんぼね」と私は返す。いつもどおりの私だ。理性でしっかり答えられている。