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そっと、重ねて

 みこの唇は小さくて、とてもやわらかい。


 ……十秒ほど、口づけをしていた。本当はすぐに離すつもりだったのに、もっと味わいたくてつい、続けてしまった。私の中の欲望は満足したようだった。少なくとも今は。


 ゆっくり、口を離す。やってしまった。キスしてしまった。手を出してしまった。


 ……でも、キスで欲望をごまかさなければ、それこそ私はみこを押し倒してしまっていたかもしれない。理性と欲望のせめぎ合い、その結果がキスだった。


「え……?」みこは驚いた様子でわたしを見つめていた。「なんでキス……?」


「おやすみのキス。むかししてたじゃない」嘘をつく。私達はたしかに何年か昔、寝る前におやすみのチュウをしていた。


「でもあのときはほっぺだったような……」たしかにそうだ。これはおやすみではなくだいすきのキスだ。嘘をついたことにずきん、と胸が痛む。


「あっ……ああ、そうだったかしら。ひさしぶりにしたから間違えちゃったわ」震える声でごまかす。「ほっ、ほらもう忘れないようにしなさい」パジャマをみこに着せて前のボタンをとめる。……肌着のままだとまた私の欲望が起き上がってしまう。


「そっかぁ。……はじめてだけど、いいかも」その言葉を聞いて、私ははっとして顔をあげる。


 みこの顔は、無邪気な子供の表情ではなくなっていた。甘く笑い、蕩けていた。それはまるでいやらしい大人のように。


 ……ああ、やってしまった。


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