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魔法で作る!


「わっ!だれ?」

「誰でしょう?」

「わー!しゃべったー!」

「そりゃ喋るよ!生きてるんだもん!」


 魔導師の帽子の中から、小さな犬のような生き物が出て来て喋っている。

 ヴァージニアとマシューは驚きを隠せない。


「ほら、挨拶しないと!」


 魔術師が言うと、謎の生き物は魔術師の肩にちょこんと乗った。


「えっと、君は男の子だよね?」

「そうだよ。ぼくはおとこだよ!」


 マシューはいつも通り怒っている。


「ふぅん?綺麗な顔をしているから分からなかったよ」

「え?ぼくきれい?ふふっ」

(マシューは単純だなぁ)


 マシューは褒められて嬉しいらしい。

 怒ったり喜んだり忙しい。


「私はエミリーが作った魔導生物のスージーっていうの!君は?」

「ぼくはマシューだよ!」

「マシューよろしくね!」

「スージーよろしく!」


 魔術師の名前がエミリーで、彼女が作った魔導生物はスージーと言うらしい。


「あの、作ったというのは?」

「ああ!魔力と言うかオーラを練って作ったの」

「練る?」


 ヴァージニアは頭に疑問符を浮かべていたら、剣士と武闘家が苦笑した。


「人によって感覚が違うから、真に受けない方がいい」


 武闘家が言うと剣士が頷いた。


「オーラの性質は人によってサラサラの奴もいればネバネバの奴もいて、それぞれ違うだろ?」


 剣士が説明してくれた。


「ネバネバだったら練りやすそうですけど、サラサラだと難しそうですね」

「そういうことだ。魔導生物を作るのには人によって、オーラをかき混ぜると言ったり、一点に集中させると言ったり全然違うんだ」


 今度は武闘家が教えてくれた。


「参考にならないですねぇ」


 ヴァージニアは想像してみたが、全然分からなかった。

 より不明瞭になった気もした。


「自分のオーラの性質を知れればコツを掴めるんだろうがな」

「私のオーラの性質ってどんな感じなんでしょう?」

「ジニーのオーラはサラサラでもネバネバでもないよ。フツーだよ」

「そうだな。普通だな」


 マシューが言うと剣士が同意した。


「癖がないと言ってやれ」

「あはは……」


 どうやらヴァージニアのオーラは普通の性質のらしい。

 癖がないとも言うらしい。


「魔力量もそこそこ、オーラも普通かぁ」

「ぼくがいるから、だいじょうぶだよ!」


 マシューは胸を張っている。


(何が大丈夫なんだろうか)

「あ、はい…」

「でも、まぁ、転移魔法(テレポート)が出来るんだからいいじゃないか。かなり移動が楽だろ?」

「えー、空を飛べる人に言われてもねぇ」


 エミリーと武闘家は茶化すように剣士を見ると、剣士は渋い顔をした。


「え?」

「そらをとべるの?」

「まぁな。すぐに疲れるからあんまりやらないが……」

「それでもすごいよ!」


 マシューは頬を赤くして喜んでピョンピョン跳んでいる。

 確かに空を飛べるのは凄い。


 皆でわいわいと話していたら、ギルドの出入り口から女性が顔を出した。


「毒きのこを届けるだけだよね?どうしたの?何かあった?」


 ショートカットの若い女性だった。


「ああ、悪い。毒きのこを運んでくれる人達と話していた」


 どうやら剣士達の仲間のようだ。


「そうなんですか。よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 ショートカットの女性が丁寧にお辞儀をしたので、ヴァージニアもつられてお辞儀をした。

 そして何故かマシューもお辞儀をした。


「ねぇねぇどうして、そとにいるの?」


 マシューは一人だけ外にいるのを不思議に思ったようだ。

 実はヴァージニアも気になっていたが、色々な事情があるのかと思い聞けないでいた。

 こういう時、子どもは便利だなぁとヴァージニアは思った。


「それは、こっちに来れば分かるよ」


 ショートカットの女性は笑顔でマシューを手招きしてギルドの外に呼んだ。

 ヴァージニア達もマシューの後ろに付いていった。

 先に外に出て行ったマシューが声を上げた。


「わっ!おおきいのがいる!」


 ギルドの前にはかなり大きな生き物が横たわっていた。


「熊ですか?」

「くま?」

「そうですよ。ただの熊ではなく魔獣ですけどね。私は魔獣使いなんです」


 それで先ほど剣士から使役という言葉が出たのかと納得した。


「さわってもいい?」

「駄目だ」

「わー!しゃべったー!」

(マシュー面白いな)


 熊型の魔獣は地響きがしそうなくらい、とても低い声をしていた。


「さっきから騒がしいガキだな」

「きこえていたの?」

「高い音には敏感なんだよ」


 魔獣使いが教えてくれた。


「ふぅん。それで、なんでさわっちゃダメなの?」

「汚い手で触るな」

「きたなくないよ。ホラ!」


 マシューは熊に両手の平を見せた。


「嘘をつくな。匂いで分かるぞ。そこら辺の物をベタベタ触っただろ」


 熊はとても嫌そうに言った。

 確かにマシューはそこら中の物を触りまくっていたと思う。


「……マシュー、手を洗いに行こうね」

「むぅ…」


 ヴァージニアとマシューは手を洗い、熊の元に戻った。


「小さい子に意地悪しちゃ駄目でしょ!」

「うるさい。頭の上で騒ぐな」


 スージーが熊の頭上に乗り、熊の頭を前足で叩いていた。


「ぼくのためにケンカしないで!」

(やっぱりマシューは面白い)


 マシューは二頭に駆け寄った。


「誰がお前のために喧嘩などするか!」

「マシューお帰り!手を洗ったなら、遠慮なく触っていいよ!」

「やったぁ!」


 熊はスージーに言われるがまま、マシューに撫でられている。

 熊は相変わらず嫌そうな顔をしている。


「おおきいねぇ。ジニーもいっしょにさわろうよ」

「そうそう!貴女もこっち来なよ!」

「では、お邪魔します」


 マシューとスージーに誘われてヴァージニアも熊を撫でた。

 実は撫でてみたかったのだが、言い出し難かったので黙ったままでいた。


「あ…思っていたより固くない……」


 もっとゴワゴワとしていていると思っていた。

 ほどよい固さで気持ちがいいと思いながら、ヴァージニアは熊の背を撫で続けた。


「毎日ブラッシングをしていますからね」

「おおきいから、たいへんだね」


 マシューは両手で熊をワシャワシャと撫で回しており、熊はとても迷惑そうな顔をしている。

 最初は怖いと思ったが、口が悪だけのようだ。


「たまに俺たちも手伝わされるんだ」

「私は魔法でやっちゃうけどね」


 エイミーはニコッと笑い、人差し指を立てくるりと回した。


「ブラッドは嫌がっているけどな」


 武闘家がフッと笑いながら、誰かの名前を言った。


「ブラッドってだれ?」

「俺の名前だ」


 熊の名前はブラッドだそうだ。


「ブラッド、ぼくはマシューだよ。よろしく!」

「知っている」

「私はヴァージニアです。マシューからはジニーって呼ばれています」

「ああ」


 ブラッドは唸るように言った。


「自己紹介がまだだったな。俺はケヴィン、見ての通り剣士だ」

「私はエイミー、魔導師ね。そしてこの子はスージー」

「よろしく!」

「俺はブライアンだ。武闘家をしている」

「私は魔獣使いのアリッサです」

「みんなよろしく!」

「よろしくお願いします」




 ヴァージニアとマシューは買い物をしてから家に帰った。

 道中、マシューは友達が出来たと喜んでいた。


(友達なのかな?仕事仲間なら分かるけど…。まぁ、マシューにとっては友達なんだろうね)


 ヴァージニアが夕食の準備をしていると、マシューが何かを言いたそうにもじもじしていた。


「どうしたの?」

「きょうのゆうはんは、ぼくがつくるよ!」

「その申し出は嬉しいけど、包丁とか火とか危ないよ?」

「まほうでやるからへいきだよ!」


 マシューは腰に手を当てて威張っている。


(そのポーズはなんだろ?)

「…やった事ないでしょう?どっちにしろ危ないって」

「ぼくがやるよ。ジニーはほんをよんでていいよ!」

「えー、本当に大丈夫かなぁ?」


 と言いつつも、マシューならやってしまうんだろうと思うヴァージニアだった。

 ヴァージニアはマシューが怪我をしないように本を読むフリだけしようと考えた。


「じゃがいもがあるから、コロッケをつくる」

「…マシュー。残念だけど、そのじゃがいもはポテトサラダ用に買ったんだよ」

「えっ……」


 マシューはひどくショックを受けたような顔になった。


「パン粉もないしね」

「パンこはしょくパンからつくる…」

「うん、駄目だからね。明日の朝食の分がなくなっちゃうよ」

「なんて、わなだ…」


 とてもショックだったらしく、マシューは震えている。


「罠じゃないから」

「おいもがあったらコロッケだとおもうよ」

(唇を尖らせて怒ってる……)

「じゃあ、もう夕飯作らないの?」

「つくる…ポテトサラダ…つくる……」


 マシューはとても不満そうにブツブツ言いながら、じゃがいもを茹で始めた。

 そして茹でている間に他の食材を魔法で切り始めようとした。


「きゅうりはわぎり、にんじんは…いちょうぎり?」


 マシューは首を傾げて考えている。


「銀杏の葉っぱの形に切るんだよ」

「いちょうがわかんない……」

「時計が3時になった時の形だよ」

「ジニー、さっきからなにいってるの?」


 このままだと埒が明かないので、ヴァージニアは実際に切って見せてあげた。


「はい、これがいちょう切りね」

「いちょう…3じ……」


 マシューは納得いかないらしい。


「形が分かったから切れる?」

「切れるよ…」


 マシューはきゅうりと人参を魔法で切った。

 あっと言う間だった。

 心配する必要はなかったようだ。


(羨ましい…。マシューは魔法でなんでも出来るようになっちゃうんだろうなぁ。いいなぁ)


 そのうち天才少年と持て囃されるのだろう。


「ハムもきらなきゃ!」

「そうだ、ちょっと待ってね」


 ヴァージニアは引き出しの中から何故買ったか分からない野菜抜き型を取り出し、ずっとしまってあったので一応洗った。


「なにそれ?」

「これはね、こうするんだよ」


 ヴァージニアはハムに星形の抜き型を使った。

 他にも何ヶ所か星形を取れるように、ハムの隅に使用した。


「おおー!すごい」

「マシューもやってみて」

「やった!」


 マシューはハムのど真ん中をくり抜いた。

 これではもう抜き型を使えない。


「おおー!かっこいい!」

「よかったねぇ」

「もっとしなきゃ!」

(しなきゃ?)


 マシューは他のハムを取り出そうとした。


「そんなにハムいらないよ。ほら、何枚か重ねているからすでに星形のハムが沢山出来てるしさ」

(予定より少ないけどね)

「なんてこった……」


 ヴァージニアはマシューが落ち込んでいる隙に、じゃがいもに火が通ったので皮を剥いて潰すことにした。

 熱いが魔法で手を冷やしながらすれば平気だった。


「マシュー、ハムのまわり切っておいてね。星形はもういらないからね」

「ん、わかった。ぼくはえらいから、ジニーのいうことをきくんだ……」

「うん、そうだね。マシューはえらいね…」


 ヴァージニアがじゃがいもを潰し始めると、ハムを切り終えたマシューが興味をしめした。


「たのしそうだね」

「どこをどう見たら、楽しそうに見えるの」


 なかなか疲れる作業だ。


「つぶすのたのしそう」

「じゃあ、任せるよ」


 これも魔法でやるのかと思ったが、ヴァージニアがやっていたまま潰し始めた。

 かなり力を込めている。


(ストレス発散……?)




 マシューはお手伝いをしている!

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