鑑定魔導具!
ヴァージニアとマシューが「う○こ」と言いまくっています。ご注意ください!
ヴァージニアとマシューは教室に戻らず体験入学を早退した。
校長先生に伝えたので、明日休むのと一緒に知らされるだろう。
そもそも、全ての日に参加しなくてもよかったらしい。
「ねぇマシュー。不快な気持ちが増えたって本当?」
ヴァージニアはギルドに向かう途中で質問してみた。
「んふふ。バレたか…」
マシューはニヤッと笑ってみせた。
「やっぱりかぁ……」
(いつの間にか、マシューが悪い子になってるよ!)
ヴァージニアは頭を抱えたくなった。
言い返すようには言ったが、それは泣いて逃げているだけなのは不憫だと思ったからだ。
「つぎはかつっ!」
マシューは小さな手を握り締めている。
「無視してもいいんだよ。いちいち喧嘩を買っていたら切りがないよ」
「えー」
「えーじゃないよ。恨まれたら大変だよ?」
「うらまれないように…かつっ!」
マシューはキリッとした顔になった。
より一層、美少年ぶりを発揮している。
「だーめ!」
「わるいやつに、かっちゃダメなの?わるいやつだよ?」
ヴァージニアはマシューの気持ちが分からなくもなかった。
しかしその時の感情で動いてはいけない。
「マシューから見て悪い人でも、別の人から見たら良い人かもよ?」
「それはどうやったらわかるの?」
マシューは可愛らしく首を傾げた。
「うーん、どうやったら分かるんだろうね」
「ジニーにもわからないんじゃ、ぼくもわからないよ」
マシューはフッと馬鹿にするかのように笑ってきた。
(なんか、イラッとする顔したぞ)
「じゃあ一緒に考えよっか」
ヴァージニアは自分は大人だと言い聞かせて、大人の対応をした。
今日はさっきのオーガストの件もあってイライラするのが多い。
「ジニーといっしょに?やったぁ!」
(この表情は可愛いね)
マシューはいつもの美少年ぶりを発揮している。
ヴァージニアにはマシューのまわりにキラキラした物が見えた気がした。
「んじゃあねぇ…ジニーとぼくにいやなことするのは、わるいやつだね!」
「そりゃそうだけど、嫌なことの基準って何?」
「そのときのきぶん!」
マシューは何故だかドヤ顔をしている。
「ざっくりしてるなぁ…」
「そのひ、そのときをいきているからね!」
「使い方合ってるのかなぁ?」
「ざっくりでいいとおもうよ」
おい!と突っ込もうと思ったが、ギルドに到着した。
「コロッケ~コロッケ~」
昼食の時間にはまだ早いのだが、マシューは自作の歌を歌っている。
「あら、お帰りなさい。マシュー君、言い返してやった?」
看板娘が笑顔で二人を出迎えてくれた。
「もちのろんだよ!」
「そうしたら、校長室に連行されまして…」
「あら…」
「なんだマシュー、入学する前から問題を起こしているのか?」
今日もギルド長がいた。
ヴァージニアは何故いつも背後から登場するのだろうと思った。
「あいつが、もんだいじなんだよ。ぼくはまきこまれただけだよ」
「ははっ!そうか!そうか!」
ギルド長は大声で笑いながら執務室に行った。
「ああ、そうだったわ!二人にぴったりな依頼があるのよ。二人のためにとって置いたのよ」
「ありがとうございます」
これで薬草摘みだったら憤怒するとヴァージニアは誓った。
「はい、これ。鑑定魔導具よ」
看板娘は予想外の物を出してきた。
なのでヴァージニアは憤怒せずにすんだ。
「おおー」
「へぇ便利そうですね」
「ここにカメラがあってね、対象物に向けるとこの画面に表示されるの。…あら?」
「起動してないみたいですよ」
ヴァージニアがボタンを押すと真っ黒だった画面が明るくなった。
「ありがと。それでこの画面に表示されるのよ。ほら、ペンって出たでしょう?」
「画面中央の物だけが表示されるんですか?」
ペンの隣には紙も置いてあり、画面にも映っているのにペンとしか文字が表示されていない。
「そうみたいねぇ」
看板娘は思っていたより不便だと思ったようで、眉間に皺が寄っている。
「ひとつずつかぁ。めんどうくさいねぇ」
マシューはまた馬鹿にするような顔をしているが、ヴァージニアも同じ気持ちなので腹は立たなかった。
「うん。面倒だね。…この鑑定魔導具をどうするんです?」
「まだ開発段階だからデータとか使用した感想が知りたいみたいよ。商品モニターってやつね。町の中だけでいいから、色々やってみてね」
「使用した感想はどれくらい書けばいいんですか?」
「出来れば詳しくって言ってたわね」
「分かりました」
看板娘は興味津々なマシューに鑑定魔導具を渡した。
ヴァージニアには感想を書く紙を渡された。
「これ、おもい…」
「じゃあ、重いって書いておくね。軽量化すべしって」
ヴァージニアは最初に重いと書いておいた。
「ん?なんだそれ?」
話に参加してきたのは、たまに見かけるギルド員だった。
「鑑定魔導具ですって。便利な世の中になったわねぇ」
「ああ、王都で使っている人を見たな。だけど、見た目でしか判断されないらしいぞ」
「変身とかしていたら、正体は分からないんですか?」
変身もだが、魔法でコーティングしたりして外見を変えたり出来るそうだ。
「らしいな。エルフや獣人でも耳が隠れていたら人間としか表示されないらしい」
「…特徴が隠されていたら誤認しちゃうんですね」
「そのようだ」
二人はギルドから出た。
マシューは鑑定魔導具を抱えていてなんだか大変そうだった。
「私が持つよ。重いでしょう?」
「いい。おもいからジニーはもっちゃダメだよ。ぼくがもつからね」
「う、うん。ありがとう。落とさないように気を付けてね」
「うん!」
ヴァージニアは人の邪魔にならないように公園にでも行こうかと思っていたら、マシューが声を上げた。
「ジニー!う○こだ!」
「ちょっ!最初からう○こは駄目だから!」
ヴァージニアは顔のいい子が下品な言葉を使うんじゃない、と泣きたくなった。
「とりのフンかぁ」
「……」
画面には鳥のフンがでかでかと表示されており、文字も鳥のフンと出ている。
「あっ!」
「またう○こ見つけたの?」
「ジニーってば、げひんだね」
マシューはまたイラッとする顔をした。
「最初に言ったのマシューでしょ!」
「ナメクジがいたよ!」
「……マシュー、それは私が持つから」
このままでは、データが大変なことになる。
「あーっ!」
ヴァージニアはマシューから鑑定魔導具を取り上げて、公園に向かった。
「えーっと、これはベンチで、これはブランコね」
「これは?」
ヴァージニアは振り返ってマシューが指さす先にカメラを向けた。
「これ?…ってまた、う○こじゃないか!」
「んふふっ」
マシューがしたり顔をしてきたので、ヴァージニアは呆れてしまった。
「猫のフンって出てる…」
「じゃあこれは?」
「これは…トカゲだって」
見たまんまだった。
細かい種類は出ないようだ。
「ジニーにはトカゲに見えるの?」
「違うの?マシューには何に見えるの?」
もしかしたら、何かが変身しているのだろうか。
「これはねー、トカゲだよ!」
「トカゲかいっ!」
「だまされたー!」
「マシュー、遊びに来たんじゃないんだからね!」
感情が豊かになったのは良いが、なんだかちょいちょい腹立たしい行動をする。
「う…ジニーといっしょでたのしかったから…ごめんなさい…」
マシューはしょんぼりと肩を落とした。
「はぁ…分かってくれればいいよ。マシューはちゃんと謝れて偉いね」
取りあえず褒めておこう作戦である。
「ほんとう?ぼくはあいつとちがって、ちゃんとあやまれるんだよ!」
「ああ、お坊ちゃんね。校長先生も謝らせなかったよねぇ」
「なんでだろ?」
「心のこもっていない謝罪をされても、余計に腹が立つだけだからじゃない?」
「それもそうだね!」
二人で納得したところで、公園内にある噴水前に移動した。
マシューが何度かヴァージニアから鑑定魔導具を奪おうとしたが、無事に阻止した。
(綺麗な公園だと思っていたけど、思ったよりマシューが好きな物が落ちてる……)
「これは…噴水っと」
「これは?」
マシューは噴水の近くに生えていた草を指さした。
「それは、…草だね」
草としか画面に表示されなかった。
「…しゅるいでないね」
「出ないね。本当になんのために作ったんだろ?もっと細かい名前を教えてくれたら便利なんだろうけどさ。辞典とか図鑑の方がいいんじゃないかと思うよ」
「じてん?ずかん?」
聞き慣れぬ単語にマシューは目をパチパチさせている。
「今度、図書館で借りようね」
「ほんのことか!」
「本だよ。ああ、私はまだ読んでないや」
ヴァージニアはどの本も読んでいなかった。
「ぼくがよんでおいたから、だいじょうぶだよ」
「私が読みたいのさ」
「そっかぁ」
「そうだよ。これはなんだろ…ってトカゲのフンかい!」
「ジニーもう○こをしらべてるじゃないか!」
「この公園がう○こまみれなんだよ!それに私はこの花を調べようとしたの!」
花がきちんと画面の中央に来るようにすると、花とだけ表示された。
「う○このしゅるいはでるのに、くさはでないんだね」
「そう言えばそうだね」
制作者はもしかして、精神年齢がマシューと同じくらいなのだろうか。
いずれにせよ、もう少し詳しい表示が出来るようになるまで商品モニターを頼むべきではなかったとヴァージニアは思った。
「わかりやすいものにしてみようよ!」
マシューは噴水、もといヴァージニアから離れて遊具の方に行った。
「これは?」
「滑り台だね」
「こっちの、ぼうがいっぱいあるのは?」
「雲梯だね」
「このいたは?」
「シーソーだね」
「このぼうは?」
「鉄棒だね」
マシューは次々に遊具に指さし、ヴァージニアは鑑定魔導具で鑑定していった。
(鑑定するほどではないかな。どれも見れば分かるんだよね)
「小さい町なのに遊具が沢山ある公園があるんだね」
「う○こまみれだけどねっ!」
それだけ野生の生き物がいる、自然豊かな土地なのだろう。
ヴァージニアはそう思うことにした。
「お!その黒くて長い髪の毛はマシューか?」
遠くにいる若い男性がマシューに声をかけてきた。
格好からして戦闘員ではなさそうだ。
それを決定づけたのは彼が捕獲用のケースを持っていたからだ。
(誰だろ?見たことあるような、ないような…?)
「あ!きのうはコロッケありがとうございますっ!」
(えっ!)
この若い男性はマシューにコロッケを分けてくれた人のようだ。
「ああ、美味かったか?」
「うん!コロッケおいしかったよ!」
マシューは本当にコロッケが好きなようだ。
「ははは!それはよかった!」
(はっ!)
「あ、あの…マシューの保護者です。マシューがお世話になったようで、ありがとうございます。お代をお渡しします」
ヴァージニアは慌てて財布を出した。
「コロッケ一個ぐらいいいって。それよりここら辺で頭に宝石がついたトカゲを見なかったか?」
「ふぅん?」
「頭に宝石がついたトカゲですか?」
二人は普通のトカゲしか見ていない。
「ああ、繁殖場からの輸送の途中で何匹か逃げ出したらしい。すでに何匹か捕まえたんだが、数匹はまだ逃げているようだ。こっちに来たと思うんだがなぁ」
「みてないよ」
「繁殖場なんてあるんですね」
「ペットにもするが、、頭の宝石がある程度の大きさになったら取れるらしいんだが、それを売るといい値段になるらしい」
「おかねもうけ…」
マシューがポツリと呟いた。
「加工して装身具にしり武器や防具につけたりだな。俺もしばらくはこの公園にいるから、見つけたら知らせてくれ」
「分かりました」
若い男性は公園内の別の場所に移動していった。
下品ですみません。