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復調してきた!

 早朝に投稿してすみません。


 マシューが風呂から上がると、ヴァージニアにボディクリームを塗るようにせがんだので、彼女は彼の背中の隅々に塗ってやった。

 とうめいはボディクリームが気になったのか、ヴァージニアの手についている残りを突いた。


「? 」


 どうやら油っこくてお気に召さなかったらしい。

 マシューがとても良い物のような表情をしていたので期待していたのかもしれない。


「……!! ……!!」


 なので、とうめいは自分がやった方がいいとお怒りの様子だ。


「いつも一緒にいるわけじゃないから仕方ないんだよ」


 どこかのジェーンのようにグリーンスライムをこっそり使ってはいけないのだ。


「……」


 とうめいはまだ納得していないのか、ボディクリームの容器を突いている。

 おかげで容器は左右に揺れた。


「とうめいの力を借りてばかりじゃいけないから、これを使ってるんだよ」

「……」


 マシューはとうめいが届かないであろう位置に容器を移動させた。

 しかし、とうめいは体を伸ばせるので意味はなかった。

 なので追いかけっこのようになってしまった。


「二人とも遊ばないでねー」


 ヴァージニアは一日のほどんど寝ているのに、二人のやり取りを見て物を壊されるのではと心配し疲れてため息をついてしまった。


「はーい」


 マシューは大人しくなり、とうめいも突くのをやめて静かになった。

 それに安心したヴァージニアは薬が効いているうちに寝ようと思った。

 もう大分良くなっているが、まだ完全には治っていないらしく、すぐに疲れてしまうのだ。


「僕も寝る」


 ヴァージニアはとうめいを連れて寝室に移動したらマシューもやって来た。

 彼はいつの間にかに髪の毛を乾かしたようだ。

 どうやら彼はヴァージニアに添い寝をしたいらしい。


「僕と一緒だとすぐに良くなると思うんだぁ」

「ふーん。とうめいの上に寝たいだけかと思ったよ」


 マシューはふふふと笑ってそんな事ないと言った。


「本当だよ。本当に良くなるんだよ」

「そっか。けどマシューにも風邪が移っちゃうかもしれないよ」

「僕は風邪引かないから大丈夫だよ」


 ヴァージニアはマシューならあり得るかもと思い、一緒にとうめいの上に横になった。

 とうめいはヴァージニア一人の時よりマシュー分大きく広がっている。

 その分とうめいは少し薄くなったが元の弾力が優れているので、ヴァージニアはあまり気にならなかった。




 その夜、ヴァージニアはまた黒い長髪の男性の夢を見た。

 この男性は地竜がいる島で見た、シャンプーやヘアサロンの広告に出るべき美しい髪の毛の持ち主と同一人物だった。

 彼は前回と同じく顔は一切見せずに、ハリとツヤがある髪をなびかせて登場した。

 夢の中のヴァージニアはそんな彼に近づこうとしたが、どうしても彼には近づけない。

 少しの距離を歩けばすぐに彼の元に行けるのに、何度も足を動かしても彼に近づけず、ヴァージニアは疲れてしまって足を止めた。


(あの人は誰なんだろう……)


 ヴァージニアはやはりマシューが成長した姿なんだろうかと考えた。

 ならば何故彼女は彼が大人になった姿を知っているのだろうか。

 やはり前のヴァージニアが青年のマシューに会っているからだろうか。


(彼がマシューだとしたら、あの身長だと今から十年以上は経っていると思うんだよね。それだけ年数が進んだのに、どうしてマシューの両親は時間を戻したのかな? )


 それだけ年月が経過したのなら、前の世界ではヴァージニアとマシューは彼の両親の思う最善の選択をしていったのだろう。

 なのに彼の両親は時間を戻したのだ。

 おかしい、何故だ。

 それともこれはただの夢で、目の前にいる男性はマシューではなく別人か、ヴァージニアがマシューが成長した姿を想像しただけか。


(こっちを向かないかな……。おーいって呼んでみるとか……)


 しかし夢の中で自由に動けるはずなく、ヴァージニアは何もせず立っているだけで、当然男性はヴァージニアに背を向けたままだ。


(あれ? だとしたらどうして考えられるんだろう……)


 今まで見てきた夢で自由に考えられただろうかとヴァージニアは悩んだ。


(まぁいいか。……仮にあの人がマシューだったら、どこで選択を間違えてしまったんだろう。単純に未来を見ているだけならいいんだけど……)


 ヴァージニアは予知夢は見たことがないが、今までなかっただけかもしれない。

 例え未来を見ているのでなくても、こんなにも印象深い夢なのだから意味があるのは確かだ。


(うーん彼がマシューだったら、なんで三つ編みをしていないんだろう。風があるから髪が顔にかかって大変じゃないのかな? 魔法で顔にかからないようにしているとか? )


 大人になったから髪型を変えたのか、それともマシューではなく別の人なのか。

 ヴァージニアは疲れているが男性が誰なのか知るために、もう一度男性に近づこうと一歩踏み出そうとした。




 ヴァージニアが目覚めると真っ暗だった。

 まだ夜なのかと思ったが、彼女はすぐに目の上に何かずっしりとして長い物が乗っていると気付いた。

 それの端から僅かに光が入って来ているので太陽が出ている時間のはずだ。


(これは……)


 ヴァージニアがそれを持って顔から退けて見てみると、マシューの三つ編みだった。

 天然アイマスクである。

 彼女は彼の三つ編みをマシューの目の上に乗せておいた。


(ん、体の調子が良いみたい……)


 マシューととうめいのおかげでヴァージニアは体調が回復したようだ。

 彼女はベッドから出て顔を洗い朝食の準備をしようとしていたら、マシューととうめいがやって来た。

 彼は早起きをして朝食を用意しようとしたのだが、ベッドにヴァージニアがいなくて驚いたそうだ。


「ジニーは座ってて! 」

「分かったけど、ジャムを塗り過ぎちゃ駄目だよ」


 ヴァージニアはピーナッツバターも駄目だと付け加えると、マシューはちぇっと残念そうに言った。

 彼は昨日ジェーンが作った物を魔法で温めだし、その間にこちらも魔法でパンにピーナッツバターを塗っていた。

 ついでに食器も食器棚から出して用意していた。

 もちろん魔法でだ。


(器用だなぁ……)


 普通はこんなに複数のことを同時に出来ない。

 しかしマシューは難なくやってみせる。

 ヴァージニアが感嘆していると朝食の準備が終わった。


「……」


 最後にとうめいが薬を持って来てヴァージニアに渡したが、とうめいは自身に付着した僅かな薬をテーブルに擦りつけていた。

 余程嫌だったらしい。




 ヴァージニアは朝食後に薬を飲んだら、マシューととうめいに引かれた。

 彼女が薬の味に慣れてきたので表情を変えずに飲んだからだ。


「ジニー……」

「……」


 マシューととうめいは信じられないと言った様子だが、ヴァージニアは無視して食器を片付けた。

 そうしているうちにジェーンがやって来て、自宅で作ってきた食事を置いていった。

 もうヴァージニアは普通の食事をしてよいとのことで、容器にはシチューが入っており肉と野菜がゴロゴロと入っていて美味しそうである。

 なんなら朝食を食べたばかりだが、今すぐ食べてしまいたいほどだ。


「夕食が楽しみだね! 」

「マシューはこの間シチューを食べたんじゃないの? 」

「美味しい物は何回でも食べられるよ。それに今日のは白いけどこの間のは茶色かったよ」


 今回はクリームシチュー、先日のはビーフシチューだったようだ。


「そうなんだ。あ、マフラー……のお礼をいうの忘れてた。マシューがしているマフラーってジェーンさんから貰ったんでしょう? 」

「そうだよ! 北の方は寒いからって言ってくれたの! 」


 ヴァージニアが思った通り、ジェーンが編んでくれたものらしい。


(ジェーンさんは編むのも早いのかな……)


 ヴァージニアはジェーンが高速で編み物する姿を想像した。




 ヴァージニア達がギルドに行くと受付にジェーンがいた。

 早速二人はマフラーのお礼を言った。

 ジェーンに返した方が良いのかと聞くと、マシューのために作ったのだと言われた。


「昔は主人や子ども達に編んだのよ」


 ヴァージニアはジェーンの親戚なら豪華客船の事件の時に出会った軍人のレオナなら知っているが、家族の話は聞いたことがなかった。


「今は編まないの? 」

「主人は死んじゃったし、子ども達も独立して家を出ちゃったからね」


 ジェーンには孫もいるらしいが、皆遠い地域や国にいるのでなかなか会えないそうだ。


(ってことは、お子さんやお孫さんはジェーンさんほどの身体能力は持っていないのかな? )


 もしジェーンと同じくらいの速さで走れたら遠距離でもすぐに来られるだろう。

 ジェーンと他の家族は手紙や通信機での連絡のやり取りはしているそうなので、不仲だから来ないのではない。

 となると、やはり彼女の他の家族はジェーンの常人離れした力は受け継いでいないのだ。


「ジニーに届けて貰えば? 」

「それがねぇ、ここより温暖な地域か寒冷な地域にいるかだから……」


 ジェーンは残念そうにため息をついた。


「あったかかったら必要ないし、寒かったら物足りないってこと? 」

「そうなのよ。それでも秋用に寒い所の子には毎年贈っていたら、大丈夫だからって言われちゃったのよね」


 ジェーン曰く、毎年セーターと帽子と手袋とマフラーをセットで贈っていたそうだ。


「そんなに沢山あったら日替わりで使えそうだね」

「でしょう? いいと思ったんだけど、多すぎたみたいね」





 ジェーンは高速で編み物をしている!

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