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(4)雨音の魔法

【前回】

体育祭当日の朝、妹の思わぬ発言に晴太は牛乳を吹き出す。

校庭の前に用意された台の上で、立派なひげを蓄えた老人がひげを揺らしながらしゃべっている。80はとうに過ぎていそうな彼こそ、この栄第一高校の現校長である。ある意味見た目通りだが、彼自身実践魔法が得意らしく、学生の頃は魔法を使ってかなり悪さをしていたらしい。


そんな校長の話を聞きながら、晴太はグラウンドに並ぶ生徒達を眺めた。校長先生の話、といえば大体そうであるように、どの生徒も一様につまらなそうな表情を浮かべていた。晴太は何となく雨音のクラスを見る。しかしそこに雨音はいなかった。ふと思いついて教師達のいる正面の方に目を向けると、案の定そこにはいつもの様に落ち着いた表情の雨音がいる。いや、よく見るといつもより緊張しているようだった。


それもそのはず、雨音は開会式の後すぐグラウンドの中央に出てきて得意の魔法を披露するのだ。しかしいくら得意といえども、これだけの人数の前に立つのは緊張するのかも知れない。そう思って晴太は少し安心した。



開会式が終わると生徒達はそれぞれのテントに引き上げていった。晴太もそれに続く。ふと足を止めて空を見上げると、そこには今にも雨粒を落としそうなどんよりとした雨雲が立ちこめていた。放送部のアナウンスが次のプログラムを告げる。雨音によるエキシビションだ。


雨音がグラウンドの中央に向かって歩いてくる。生徒達はまだ気がついていないのか、グラウンドは全体的にざわついていた。雨音は全く気にしていないような素振りで一礼すると、静かに目をつぶった。


ぽつり、ぽつりと雨粒が落ちてきた。一つ、二つ、三つ………すると間もなく、サァーっという音と共に激しい雨が降り始めた。それに合わせてざわついていたグラウンドが静かになる。生徒達、また教師達も一様に雨音の方に目を向ける。グラウンドの中央に立った雨音は微動だにしない。


しばらくして雨脚が強くなり、生徒達が再びざわつき始めた。教師達も何やら慌ただしく話をしている。おそらくは雨が強くなってきたので体育祭を中断するかどうかといったところだろう。教師の一人が雨音の方に歩き出そうとした。


「はっ!」


鋭い声が駆け巡る。晴太は空気が張り詰めるのを感じた。いや、おそらくその場にいた誰もがそう感じただろう。それぐらい雨音の声は鋭く、降りしきる雨の音を切り裂いた。つい先程まで閉じられていた雨音の瞳はしっかりと見開かれ、その両手は空へと突き出されていた。


「雨が……止んだ?」


どこからか声が聞こえる。晴太も最初はそう思った。しかし、すぐに何が起きているのか分かった。雨は降っていないのではない。雨雲は降り始めてから今現在に至るまで、絶えず雨粒を落とし続けていた。だが、落ちてきたはずの雨粒は一滴も地面には落ちていなかった。雨音の使った魔法はおそらく反射魔法、つまり向かってくる物質を弾き返す魔法だ。そこまで難しい魔法ではないが、雨粒のように複数の塊を連続的に弾き返すのは簡単なことではない。


雨音は間髪入れず次の魔法を繰り出す。弾き返された雨粒が一斉に凍り付く。そして細かく砕けた。先程の反射魔法も今使った冷却魔法も無詠唱で繰り出されている。魔法を使う上で詠唱は必ずしも必要なことではないが、イメージすることが何より大事なので、普通は詠唱した方が成功しやすいのだ。


「すごいな」


晴太はそう呟いていた。魔法の使えない晴太にとって、雨音の魔法はまさに神業だった。そのまま雨音は次の魔法を繰り出す。


「…………!」


雨音が地面に向かって手を伸ばす。すると雨音の足下に何かの魔方陣が現れた。よく見ると転移魔法、物体をある場所から別の場所に移動させる魔法の魔方陣だ。この魔法も、対象物や目的地を正確にイメージしなければならず、非常に難易度が高い魔法だ。この場合何かをここに転移させるのだろうが………


「何も出てこねぇじゃん」


誰かがそう呟く。


「いや……違う」


すぐにまた、別の誰かがそう呟いた。地面に発生した魔方陣の光に照らされキラキラと輝き落ちていく氷の粒を見て、転移魔法を使った雨音の思惑が晴太にもすぐに分かった。やがて氷の粒が地面に落ちると、魔方陣はすぅっと消えていった。


サァーっという音と共に雨が降っている。


パラ…パラ…パラパラパラ。


拍手の音が、降り始めた雨のように初めは一つ二つ、やがてグラウンドを包む大きな音になった。雨音はそれに答えるように一礼すると、静かに退場した。


放送部の女子生徒が一時中断の連絡を入れる。再び生徒達がざわつき始めた。先程の雨音のエキシビションについて、体育祭の中止について、あるいは昨日のテレビ。晴太は一人、そっと立ち上がって雨音の姿を探した。どうしても、出来れば今すぐ雨音に伝えたい、言わなければならないことがあったのだ。係の生徒に聞いたところ、雨音は保健室横のランドリールームにいるということだったので、晴太は早速そこへ向かった


この後はしばらく魔法とか出てきません(笑)


小説書くって難しいなぁ

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