(3)妹と朝食
【前回】
本土と切り離された島、栄市。晴太は高校進学と同時にこの街に引っ越してきた。その時はまさか自分に彼女が出来るなんて想像もしていなかった。車窓に流れる景色を眺め、晴太はそんなことを思った。
「……ん」
晴太はもぞもぞと体を動かして時計を確認する。
6:30
「…………はぁ」
一つため息をつくと、晴太は横たえていた体を起こす。ふと思い出してカーテンを開ける。空は一面の灰色、だが雨は降っていないようだった。
「曇天決行か……」
晴太はそう呟くと、いつもの制服ではなく体育服に着替え始めた。
ダイニングに向かうと、妹の夏希一人で朝食を食べていた。両親は既に仕事に行ったようだ。テーブルには二人分の皿とコップが置かれていた。
「あ、お兄ちゃんおはよ」
「おはよ」
晴太は冷蔵庫から牛乳を取り出しコップにつぐと、夏希の向かいに座った。
「ねえ、今日って体育祭でしょ?応援しに行ってあげようか?」
そう言ってにやにやする夏希に、晴太はパンをかじりながら答える。
「お前今日学校だろ?」
すると夏希は人差し指をビシッと立てた。
「それよ!なんで土曜日なのに学校があるのよ!妹の応援がないとお兄ちゃんの100%が出せなくなっちゃうのに!」
夏希は中学生だが、なんでも今年から土曜日は3時間授業になったらしく、夏希は土曜日が来る度に文句を言っている。
「別に妹の応援があったって100%は出せないけどね」
晴太は苦笑いをする。
「えー?お兄ちゃんやれば出来るタイプなんだから、もっと全力出せばいいのに~。そしたらもう、彼女の一人や二人ぐらいすぐ出来ちゃうよ!」
「ブフォッ!」
夏希の何気ない一言に晴太は牛乳を吹き出した。
「ちょっ、大丈夫?あたし何か変なこと言った?」
心配そうに覗き込む夏希。晴太はゴホゴホと咳き込みながら「大丈夫…」と答えた。だが、つい昨日彼女の一人が出来た晴太にとって、夏希の言葉は牛乳を吹き出すに値するものだった。
見やすくするために改行は多めにしていますが、逆にわかりにくい等あれば感想にてお知らせ下さい。
あと、作品タイトルを一部変更しました。