(2)いつもの帰り道
【前回】
ひょんな事から学校一の有名人と付き合うことになった晴太。
「次は、提灯通り~提灯通り~」
路面電車の車内アナウンスが聞こえる。晴太は首を曲げ、肩越しに窓の外を眺めていた。徐々に街灯のつき始めた景色が流れていく。
晴太の住む栄市は本土と切り離された比較的大きな島にある。北と西の海岸沿いに山があり、海を越えた東には本土がある。高校は全部で三つあり、人口もそこそこ多い。それでも昔と比べればだいぶ少なくなった方だ。というのも、この栄市はかつて最先端の産業だった魔法工業の分野で大変に栄えた場所であり、栄という地名もそこから来ている。今ではもう落ち着いているが、魔法工業が栄市の主力産業であることは変わらない。
晴太がこの街に来たのは今から一年ほど前、高校に進学するときだ。父親の仕事の都合で本土から引っ越してきた。引っ越しに関してはあまり嫌ではなかったが、晴太には一つだけ懸念材料があった。それは、この島にある三つの高校のうち公立の普通科は一つしかないということだ。つまりそれは、この島にいる子供は大体がその高校に進学するということで、晴太がある程度形成されたコミュニティーの中に放り込まれるという事を意味していた。両親は晴太の高校進学に合わせて引っ越しを決めてくれたが、これはもう転校生になるようなものだ。ある程度のことは覚悟していた。
「それが、まさかこんなことになるとは……」
晴太は誰にも聞こえないように小さな声で呟く。窓の外で提灯の赤い光が揺れる。。
実際のところ、いじめられるようなことはなかったが友達らしい友達も出来ず、今日までの日々をほとんど一人きりで過ごしてきた。そんな晴太に今日、彼女が出来た。理由はともあれ彼女は彼女だ。晴太自身、これからどうすればいいのか全く分からなかったが、少なくとも嫌な気持ちではないことは確かだった。
「次は、坂田十文字~坂田十文字~」
再び車内アナウンスが聞こえる。相変わらず晴太は窓の外を眺めていた。
書きためてあるのである程度更新は早いかと。
でもそんなに書きためてないのですぐ底をつくかと。




