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(12)周りの目が気になります

【前回】

テスト勉強をするために図書室へとやって来た晴太と雨音。

向かい合わせに座った晴太に雨音は「隣じゃないのね」と言った。

晴太は勉強が嫌いではない。好き、と言うよりも得意なので、嫌ではないのだ。だから放課後はよく公民館やらどこかの学習室やらを利用して勉強するのだが、基本的には一人だ。しかし今日は二人、しかも目の前にいるのはあの傘咲雨音だ。


正直晴太はあまり集中できていなかった。二人で勉強すると言うこと自体は特に問題ない。問題なのは周りからの視線。学年を問わず知名度の高い雨音はそこにいるだけで注目を集める。しかも男子生徒と一緒に勉強しているとなればなおさらだ。実際こそこそと何かを話している声も聞こえたし、何人かと目もあった。そうなってくると今度は図書室にいる人全てが気になってしまい、先程から晴太は何かが動く度にキョロキョロとあたりを窺っていた。


「そんなに気になるのかしら?」


雨音が呆れ気味に言った。


「恥ずかしながら……」


自意識過剰、晴太自身気にしすぎだというのは分かっているが、そういう性格なので仕方がない。


「念のため聞いておくけど、私といるのが嫌というわけではないのよね?」

「そりゃもちろん!たぶん、女の子ってだけで緊張するから……」


すると雨音は「はぁ」とため息をつくと、手に持っていたシャーペンで晴太を指した。


「あなた、妹がいたわよね?」

「いるけど…………なんで知ってるの?」


晴太はあまり自分の家族のことや過去のことを話さない。もちろん妹がいることも話したことはない。なぜ雨音は知っているのか。


「それはっ……誰かに聞いたのよ、たぶん……」


見るからに動揺を隠し切れていない雨音。誰かに話した記憶はないが、覚えていないだけで誰かしらに話したんだろう。晴太はそう思うことにした。


「それよりもっ!………晴太君は妹といるときもそんな感じなの?」

「いや、どうかな……?」


妹の夏希とは仲のいい方だと思う。だが、一緒に出かけるとかそういったことはないので、そう考えると仲は悪くないという表現の方がしっくりくるかも知れない。


「妹とは家でしゃべるぐらいだけど……家の外なら周りの目とか気になるかも」


そう言いながら晴太は、自分で自分が恥ずかしくなった。妹とすらまともに話せないなんて男としてどうなのか。そもそも人として、まともに社会でやっていけるのだろうか。晴太は頭を抱えた。そんな晴太を見て雨音は再びため息をつく。


「全く……チキンだとは思っていたけど、思った以上にひどいわね」

「面目ない……」


申し訳なさそうにうなだれる晴太の手に、雨音は人差し指を付ける。


ビリッ


「痛いっ!」


突如雨音の指から電流が流れ出し、晴太は思わず手を引いた。


「え?なに?どういうこと?」

「大丈夫よ、4000ボルトぐらいだから」

「4000!?」


意外と大きな数字に驚く晴太。しかし雨音はこともなく言った。


「要するに静電気ね」


静電気ってそんなに大きいんだと思う気持ちと静電気でも十分痛いという気持ちがごちゃ混ぜになって、晴太はなんと言えばいいか分からなかった。


「それよりも晴太君、あなたはなんでそうすぐに謝るのかしら?」


ビシッと人差し指を向ける雨音。つい数秒前にその指先から静電気を食らったばかりの晴太は思わず体をのけぞらせる。


「なんでって?」

「いい?晴太君。私はあなたの性格を悪く言うつもりはないの。ただ…」


そこで雨音は、少し声のトーンを落とす。


「ただ?」

「私は彼女、あなたは彼氏。彼女の前でくらい、素のあなたを見せて欲しいの。見栄も謙遜も緊張もいらない。私はそのままの晴太君が見たいわ」


と、人差し指をビリビリさせながら言う雨音。しかしその言葉は、冷たい水を飲み干したときようにすうっと晴太の中に入ってきた。雨音の前で見栄を張っても意味がないし、謙遜だって通用しない。緊張はするけど雨音は晴太が臆病だということを誰よりも知っている。ならば堂々としてみてもいいのではないか。雨音の前でくらい変に気を回さなくていいのではないか。雨音の言葉を聞き、晴太の中でそういった思いが大きくなっていった。


「そう……だね。雨音と一緒にいることが恥ずかしいことであるはずない。僕は、誰にどう思われようと雨音と一緒にいればいい。そういうことだよね」


雨音は頷き、そっと人差し指をしまった。それを見て晴太は少しほっとした。と同時に、今までにない不思議な気持ちだった。心が温かい。目障りだったものがなくなったような、そんな感覚だった。


「なにかしら?」


無意識のうちに雨音を見つめていたようだ。晴太は「何でもない」と首を振った。本来ならそこでやめておくべきだったのだが、晴太は余計な一言を付け加えてしまった。


「なんか……かわいいなぁって」


言ってすぐしまったと思ったが、そう思ったときにはもう遅かった。晴太の目の前に雨音の人差し指が迫

る。


ビリッ!!


「痛いっ!さっきよりも痛いっ!」

「大丈夫、6000ボルトぐらいよ」


雨音はそう言うが、晴太は全然大丈夫じゃない。かなり痛い。可愛いと言われて怒ると言うことは、もしかして雨音がツンデレなんじゃないだろうか。そう思ったが晴太は黙っていた。


ビリリッ!!!


「いったい!え?なんで!?」


突然左腕に衝撃が走った。よく見ると雨音が晴太の左腕に人差し指を押し当てている。


「今ツンデレって思ったでしょう?」

「思ったけど……何で分かったの?」




とまあ、そんな感じで始まった雨音との勉強会だが、特にこれといった展開はなく、ただひたすら二人で勉強していただけだった。異性と勉強ということで初日こそ緊張したものの、二日目以降は特に緊張して集中できないということもなく、良くも悪くも充実した試験期間を過ごす事が出来た。


とりわけ『雨音だから』というのも大きかったかも知れない。さすが学年トップと言うべきか、雨音の集中力は凄まじいものがあった。一緒にいる晴太までつられて集中するので、二人揃って近づきがたい雰囲気を醸し出していた。まあ、そのおかげで変に茶化されたりすることもなかったが。


読んでくれてありがとうございます!


もう2話ほど先のことなりますが、何とか次の展開に進めることが出来たので少しは筆が進むかな(キーボードだけど)

ちょっとした短編集のアイデアを思いついたので投稿するかどうか……。まあ書いてみて軽く書けそうだったら投稿するかも知れません。


さいごに

感想等あれば是非お願いします!

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