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(10)勝負してみない?

【前回】

デート当日の天気が晴ではなく曇りだということに言及する雨音。晴太は慌てて弁解したが、雨音は意外と怒っていなかった。家に帰ってから妹との世間話の中で晴太は雨音自身もデートを楽しみにしていた可能性に気付く。

「次に会ったときにでも聞いてみようかな」

「そんなわけないでしょう」

「ですよね……」


晴太はあえなく撃沈した。別に期待してたわけじゃなかったが、多少の『照れ』とかそういう感じのものはあるんじゃないかと思っていたのだ。しかし全くなかった。


「それより晴太君、もうすぐ期末テストだけど勉強はしているのかしら?」


雨音が少し首を傾けて晴太に尋ねる。最初の日と同じ放課後の教室だ。一応ふたりは隠れて付き合っていることになるため、二人きりで話す機会というのは放課後人のいなくなった時しかないのだ。


「もうすぐって言ってもあと二週間あるし……、今日あたりから始めようかなぁって思ってるけど」

「勉強というのはその……一人でしているの?」


いつになく真剣な表情の雨音。


「そうだけど」


晴太がそう答えると、雨音の顔が一瞬だけぱっと明るくなり、すぐに戻った。


「コホン……、じゃあ私が一緒に勉強してあげるわ」

「え?」

「聞こえなかったかしら。私が一緒に───」

「いや、聞こえたけど!なんでまた急に?」


今度は晴太が雨音に尋ねる。


「付き合っている男女が一緒に勉強するのは自然の摂理でしょう?」

「まあ……ある意味」

「それに、私たちは付き合っていないことになっているわけだけど、付き合っていても驚きはしない雰囲気

というのを作っておいてもいいのではないかしら?」


雨音の意見に晴太はなるほどと頷く。秘密にしているのは単に騒がれると面倒くさいからなので、逆にそう思われても仕方ないくらいの雰囲気を作っておくというのは作戦としてはありかも知れない。


「そうだね……。僕も一人で勉強するより誰かとした方がはかどるし、雨音なら分からないとことか教えてもらえるし」


雨音は栄第一高校始まって以来の秀才。一年の時からずっと成績トップの座を守り続けている。


「あら?インテリが何か言ってるわ?」


しかし、そう言う晴太に対し雨音は怖い怖いと震えて見せた。そう、実は晴太の成績は280人中30位、結構上位だ。


「晴太君、あなた結構有名なのよ?成績上位者のくせにハイレベルコースに志願しないくず野郎って」

「僕そんな風に言われてるの!?」

「冗談よ」

「なんだ、冗談か……」


ハイレベルコースとは成績上位者や難関大志望者のための特別コースである。基本は普通のクラスと同じだが、より発展的なことをしたり与えられる課題の量が多かったりとハイレベルなプログラムになっている。基本的には志願制なので成績はいいがハイレベルコースには属さないという生徒も数人はいる。晴太もその中の一人だ。


「あ、そうだわ」


と、そこで雨音は何か思いついたように声を発すると晴太の顔を見た。


「何?」

「せっかくだから、今度のテスト、私と勝負してみない?」

「勝負!?いやいや、さすがに負けるって」


くず野郎で有名な晴太でも、さすがに毎回トップの雨音には勝てるわけがない。


「仕方がないわね。じゃあ一科目勝負、晴太君の得意科目でいいわ」

「それならまあ……」


雨音の提案に晴太はしぶしぶ了承した。


「私が勝ったら私のお願いを一つ聞くこと」

「え!」

「その代わり晴太君が勝ったら、私のお願いを一つ聞かせてあげる」


雨音があまりにも自然に言うので晴太は一瞬なるほどと思ってしまった。が、すぐに思い直して雨音に尋ねる。


「あのー雨音さん?僕にメリットは……?」

「冗談よ。あなたのお願いを何でも一つ聞いてあげるわ」


本日二つ目の冗談が飛び出したところで、晴太はふと疑問に思ったことがあった。


「でも、一緒に勉強するんだよね?」


普通こういう時は別々に勉強するものではないだろうか。一緒に勉強したら勝負にならないのではないかと思ったのだ。しかし雨音は当然のように「そうよ」と続けた。


「青は藍より出でて藍より青し、つまり晴太君は私から勉強を教わって、さらには私を越える成績をたたき出すことも可能。と、いうわけよ。どう?かなりあなたに利がある話でしょう?」

「そう……だね」


正直そこまでしても雨音を越えることが出来るとは思えないが、晴太自身少し興味があった。わくわくしていたと言ってもいいかもしれない。もしも雨音を越えることが出来たなら、それは晴太にとってある種の偉業を成し遂げたような達成感があるに違いなかった。


「じゃあ、早速行きましょう」


晴太が乗り気であることを感じ取ったのか、雨音は嬉しそうに頷くとそう言って歩き出した。


「え?どこに?」


もちろん晴太はいきなり歩き出した雨音の真意を感じ取ってはいない。雨音の後ろ姿をぽかんと見つめていた。


「どこって、一緒に勉強するんでしょう?」


若干のあきれ顔でそう言う雨音。


「え、今から!?」

「当たり前よ。さあ、早くしなさい」


そう言ってさっさと教室を出て行く雨音。晴太は慌てて荷物をまとめると雨音の後ろ姿を追いかけた。


読んでくれてありがとうございます!


ようやく総合pvが300に到達しましてね、いやホントにありがとうございます。

さっき見たときはぴったり300でびっくりしました。


今後とも雨音と晴太をよろしくお願いします。

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