契約
「私は雛と言います。縁さんの助手をしています」
「糾、です」
少年は雛の顔をじっと見ながら言った。雛は少し緊張しているのかなかなか話さない。
面白くないなー。と思っていると私が仕掛けた罠に目を向けた。
私が仕掛けたのは、視える者にしか見えないようなモノ。もし彼にソイツが見えれば此処に住ませるつもりだ。
わくわくしながら見ていると雛が口を開いた。
「視えるんですか」
「えっ......」
しまった、と言う顔をする少年。雛は視えないが聞こえるんだ。だから常に人と話すとき以外はヘッドフォンを付けている。
それがまた可愛いんだよ。
なんていうノロケは置いといて、付けていたヘッドフォンを外して部屋を出る。ちょいとスキップしながら隣の部屋に行く。
「んふ、少年。君は私が拾ってあげるよ」
口に弧を描きながら言えば少年は怯え雛の後ろに隠れる。酷いな。おい。そう思いながら少年に近付き頭に手をおく。
「少年、君には"祓う"素質がある。どうせ、行く宛などないのだろう?
ここには君みたいに視える者もいる。因みに私も視えるよ」
雛の後ろに隠れていた少年の腕を引き私と目をあわせさせる。驚いた顔はとても可愛い。この子はツンデレの素質があるな。
「っ......で、も...」
「デモじゃない。大丈夫。ここには害のあるモノたちはやってきはしないよ」
優しくなだめる様に言えば顔には、安堵の表情が浮かぶ。そう、それでいい。
私の目的は君を利用するだけだ。
「よろしく、お願い...します」
「うん、よろしくね」
だから君は何も考えず私に従えばそれでいい。そうすれば殺されない。