ケセランパサラン
「毛羽毛現を捕まえに行くぞ!!」
「えっ...えう、け...え?」
歓迎会の次の日の朝早くに縁さんが突然変なことを言いながら入ってきた。後ろから緋色さんが眠たそうに入ってきた。
「むふ。今日は依頼予定はないから目撃情報があったけう、け、げん?を捕まえに行くぞ!!」
「毛羽毛現、一般的にはケセランパサランと呼ばれる怪のこと」
ボリボリと頭をかきながら面倒くさそうに言う緋色さん。ケセランパサランなら分かる。幸運を呼び押せる...そんな怪だろ。
「ほら、私最近不幸な目にあってばかりじゃん?だからさ、運がほしいなって」
語尾に星がつきそうな勢いで言う縁さんに俺は...というか緋色さんも呆れる。
はぁ、とふかーいため息をついた緋色さんを縁さんがにんまりと意味深な顔で見て口を開く。
「ひい兄、今日はOFFだよ?」
その言葉に緋色さんがピシッと固まる。というか...お兄さん?緋色さんって縁さんのお兄さんだったの?
「はぁ...10分後下な」
「りょーかい。少年、昨日の所においでね!!」
爽快に去っていく二人。ドアは開いたままでひょこっと顔を出した人がいた。それは炉依さんで、俺が一番頼りたい人だ。
「大丈夫?」
「....です」
ふわりと笑って俺の部屋に入ってくる炉依さん。さらっとドアを閉めるときに縁さんが慌ただしく走っているのが見えた。
「そう言えば縁さんたちと出掛けるらしいですね....」
困り顔でそう言う炉依さんに不信感を抱く。しかし、次の言葉で俺はどっと不安を抱くことになる。
「縁さん自由で、マイペースで方向音痴で...僕が行ったときは野宿になりそうでしたよ...まぁ、尭さんが助けてくれましたけど」