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嘘をつくこと

作者: かけら

大学4年。

就活、卒論、国試などで慌ただしい日々。


国試の勉強をしに、地元の図書館へ。

閉館間際、隣の席の人が話しかけてきた。

「災害のお勉強されていらっしゃるんですか?」

突然のことに返答が追いつかない。

はあ、と、まあ、を混ぜたような返事をした。

それから、その方は、ご自分の話を話し始めた。

音楽が好きで、興味をもって調べていること。クラシック音楽のこと。

たくさん語ってくれた。

「君みたいに、僕の話を聞いてくれる人はなかなかいないよ!」

そのあと、何故かご飯をたべにいくことになった。

色々と話を聞いた。

とても興味深かった。

けれど、同時に、目の前に座る人に強い警戒心を抱いていた。

伝える情報、教える情報全てデタラメ。

それなのに、親身に教えてくれる。

あとが怖いと思いつつ、嘘を並べ立てる。

嘘でオードブルができるほどついた。

目の前の人は、とても嬉しそうに話してくれて、握手までしてくれた。

僕は、目の前に座る人を、今、とても傷つけている。

嬉しいなあ、あなたみたいな人に会えて幸せだなあと言っている人の気持ちを踏みにじっている。

僕が、偽りだらけだと知ったら、今感じている幸せは、間違いなく消え失せるだろう。

そして、裏切られた気持ち、悲しい気持ち、哀しい気持ちが、沸き起こるかもしれない。

はたまた、好きなもの愛してやまないものを汚された、馬鹿にされたと怒り狂うかもしれない。


それでも、見ず知らずの人は怖いんだ。

同じくらい怖いと思った。

それは、なにか。

僕は僕を怖くなった。

平気な顔して、嘘をつく。

ニコニコ笑顔で、偽りを告げる。

こんな自分が、とても怖くなった。

人を騙すことに、なんの抵抗も感じない。

こんな自分が、一番怖い。


帰宅した僕は、すぐに眠りに落ちた。

そして、夢を見た。

現実味を帯びた夢。


寝ている僕を囲むように、フードを深く被った人達が、論議をしている。

「この者は、他者を欺くことになんの感情も抱かぬ。今後の人生を谷底低迷の刑に処そう。」

「いや、この者は、人助けをする者だ。様子を見よう。」

議論は続く。


僕は、夢の中で、目を覚ました。

「おお、目を覚ましたぞ。」

「人の子よ、そなたは、偽ることに長けておる。何故だ?」

「僕は僕を守るため。そして、僕を忌み嫌い続けるため。」

沈黙が流れる。

「人の子よ、そなたは、とても悲しく虚しく弱い存在なのだな。」

「人の子よ、そなたに罰を申し伝える。」

「汝、此度の件、深く反省し、二度と同じことを致さぬよう努めよ。

神、仏、先祖にお誓い申し上げよ。」

そう告げて、フードを深く被った人々は天へと登って行った。


目を覚ます。

そして、誓った。

もう同じことは二度としない。

人を欺くのは、もう辞める。

正直に人と接しよう。


大切ことを学んだ。




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