高校の二学期の有名テンプレイベントの序章2
「お前がぼーっとしてたのが悪いんだぞ」
いや、確かにぼーっとしてたけど…
「なんで俺が王子なんて…」
「よろしくね、雪人君」
この天使のような声はもちろんあいつしかいないよな。
声がした方を見て確信する。
「緋音、よろしくってどういうことだ?」
「私がお姫様役なんだよ。だからよろしく」
天使のような声のお姫様か…素晴らしいな…
いや、そんなことは今は置いといて…
「緋音、姫様って…なかなか勇気あるな」
文化祭の、しかも劇で主役と言ってもほぼ過言ではないものをするなんて…
「いや、勇気とか関係ないよ?ただのくじ引きで決まったことだし」
「くじ引きか…なるほど。俺もくじ引きで選ばれたのか…運悪いな」
はぁ…とため息をついた時
「雪人君はくじ引きじゃないよ?」
「えっ?」
「あ、おい鶴海!」
なんだ悠斗のやつ。なぜそんなに焦った。
「雪人君の王子は紺野君の推薦だよ」
「それ言うなよ鶴海!」
ほぅ…なるほどなるほど。
悪いのはぼーっとしてた俺じゃないと。
勝手に人を推薦しやがったこのゴミ野郎ということか。
とりあえず笑顔で
「へー、そうなんだ。教えてくれてありがとな緋音。あと5分くらい待っててくれ。帰ってきたら練習始めるから」
「うん、分かったよ」
天使のような声の持ち主は心も天使のように広いのかもしれない。
さてと…
「おい悠斗。ちょっと来い」
「ま、まぁ待てよ、とりあえず落ち着こうぜ」
「いいから来い」
「……はい」
〜5分後〜
「あ、おかえり雪人君」
「ただいま。悪いな待たせて」
「いいよ別に。それより王子、大丈夫なの?」
大丈夫なの?というのは悠斗に押し付けられて嫌々するのは大丈夫なの?という意味だろう。
「あぁ。もう決まったことなんだし、仕方ないよ」
「へぇー…けっこう大人なんだね」
今の台詞、ちょっとエロく感じてしまった。
いざ行為を行う時にあるものを見て、外見以上にそのものが大きかった時に女の子が言っている、と考えるとものすごく欲情しそうになる、特に緋音みたいな天使のような声で言われたらやばい、なんてことはないんだからな?
「それで、これって劇だから台詞全暗記だよな?」
「まぁそだね」
「シナリオってやっぱりなんか有名な話のパクリなのかな?」
「あ、このシナリオ紺野君が書いたらしいよ」
嘘っ!?まじ?本当?
「……1回読んでみよう」
そう言ったら緋音も首を縦に振ってくれた。
「これ……」
「いい話だね」
「あぁ」
これ本当にあいつが書いたのか?すごく良かったぞ。
あいつにこんな才能があったとはな…
「ところで雪人君。紺野君はどうしたの?」
「え、あいつなら……あと少ししたら戻ってくると思うぞ」
「そうなんだ。まぁいいや、練習しようよ」
「そうだな」
「もう…歩けない……」
「どうしたの?悠斗君!?」
「あぁ…梨乃か……俺はもう…無理だ…さよなら」
「どうしたの?何があったの!?」
「…雪人に……」
「あっ、また雪人君になんかしたんだ。雪人君にボコボコにされる時って大抵そうだもんね」
「…………」
「やっぱりね。じゃあ頑張ってね、私自分のクラスの準備があるから」
梨乃がそそくさと廊下を走って行くのを瀕死の悠斗はただ見ていることしか出来なかった。
そしてこの会話が悠斗の最後の会話となった。
まぁそんなことにはならないんだけど。
「とりあえず一通りにやってみたけど…」
「うん…なんていうか、案外台詞覚えるのって簡単だね」
「え?」
「1回やるだけでほとんど覚えれたし、もっと大変なことだと思ってたから」
え、嘘!?俺全然覚えれてないんだけど!
大変なのは緋音の頭だ!どんな構造してるんだ!?
「すごいな…俺、全然覚えれてないんだけど…」
「え、あ、でも私記憶力いい方だから」
「励ましてくれてありがとな」
やっぱり緋音は優しいな。
逆にその優しさがさらに俺に突き刺さったんだけどな。
「帰ってから頑張って暗記しとくよ」
「琴瑚ちゃんに手伝ってもらったりしたら?」
「あっ、それいいな。そうしてもらうように頼んでみる」
「じゃあとりあえず今日は台本見ながらもうちょっと頑張ろうよ」
「そうだな」
「ん〜〜」
大きく手を上に上げて伸びをする。
「今日はもうおしまいにしようか。流石に疲れたし」
「そうだな」
持っていた台本を鞄にしまい帰る準備をする。
『そろそろ3時なのでこれ以上は文化祭までに間に合いそうな人達は帰ってもらって構いません!お疲れ様でした!』
今日は学級委員頑張ってるなぁ…
いや、いつもを知らないからもしかしたら今日『も』頑張ってるのかもしれないけど…
「そういうことみたいだから帰っても良さそうっぽいね。私はちょっと残るけど雪人君はどうするの?」
「俺は朝から何も食べてないからな、お腹すいたし帰るよ」
「そっかそっか」
「緋音はお腹すいてないのか?」
「私は朝ごはん食べてきたしね。それに元からそんなにご飯食べる方でもないからね」
それでも出るところはちゃんと出てるっているのがすごいよな。
「じゃあ」
「うん、バイバイ雪人君」
廊下に出た後イヤホンを耳に入れ音楽を流す。
いつも一人の時はやっている作業だ。
こうしていると外の音が聞こえてこないし良いんだよなぁ…
周りの会話か聞こえないってのは欠点でもあるかもだけどな。
『ねぇ緋音!緋音って九条君とどんな関係なの!?』
「え、いきなりどうしたの?」
『さっきお互いのこと下の名前で呼びあってたじゃない!』
「あ、それはまぁいろいろとね」
『何何!?気になる!』
「それは言わないけど、でも付き合ってたりとか、そんなんはないよ」
『そうなんだ…まぁ緋音がそう言うならそうなんだろうね』
そう言えば、王子の話で忘れてたけど緋音の影が薄い理由はなんなのか。
これが本当に気になる。
目立つ要素が十分あるのに目立たないとかもはや魔法の域じゃないか。
もしかして魔女だったりしてな…
そんなありえないことは置いとこう。中二脳になってはいけない。
緋音の影が薄い理由を考えているといつの間にか家に着いて、そしてさらに理由を考えているといつの間にかベッドに寝転がっていて、そしてさらに理由を考えていると…
「あれ…俺寝てたのか」
時計を見ると午後8時ほぼちょうど。正確にはまだ7時だけど。
「そういえば俺今日まだご飯食べてないな…何か食べに行くか。それとも買いに行って家で食べるか。もしくは自炊するか…
でも自炊は時間かかるしちょっと面倒だなぁ…寝よう」
そのまま寝起きなのに深い眠りへと落ちていった。
「ん、ふぁ〜〜」
「あ、起きたんだ。おはようお兄ちゃん!」
「琴瑚か…おはよう」
「昨日はけっこう疲れてたの?制服のまま寝ちゃうなんて」
あ、そうか。学校から帰ってきてそのままベッドにダイブしたんだった。
「ちょっとしんどかったかな、多分」
「お疲れ様。とりあえず服脱いで」
何それやばいもう一回言ってくれ!
……いや、俺が琴瑚の来る前日に制服で寝たら言ってくれるな。そうしよう。
「おう。てか今何時?」
「7時だよ」
「結構寝たな…」
とりあえず琴瑚に言われた通りに服を脱ぎ、そして部屋着に着替える。
「お兄ちゃん明日から学校始まるんだよね」
「そうだよ…琴瑚は明後日からだったよな?」
「良いなぁ…せこい」
「でもお兄ちゃんの方が夏休み始まるの早かったし、お兄ちゃんの方がいっぱい休んでるよ?」
あー、確かにそうだな。
「まったくそのとおりだ」
「とりあえず顔洗ってご飯にしようよ」
いつも朝早くから来てくれてなおかつ家事もしてくれて…ここに来るのにも実家の最寄り駅からここの最寄り駅まで電車で25分ほどかかって合計で40分くらいかかるのに。
こんな妹を持てて俺は幸せすぎるな。
そんなことを思いながらも歯を磨き顔を洗いリビングへと向かう。
リビングへの廊下にもお味噌汁のいい匂いが漂ってきておりそれが足をさらに進めさせる。
椅子に座ると既にほとんど用意されており俺が座ったらすぐにお味噌汁を持ってきてくれる。
本当によく出来た妹だ。妹じゃなければ結婚したいくらいだ。
朝ごはんを食べながら雑談をして、そして食べ終わって琴瑚は片付けを、俺はお茶をすする。
「あっ、そうだ琴瑚」
「ん?何?お兄ちゃん」
「今日ちょっと付き合って欲しいことがあるんだ」
そう。劇の練習をしなくてはならない。
学級委員の話だと学校が始まって2日後に一度舞台で通し練習ができるらしい。
それまでに台詞を覚えなければならないから、この頼み事はできれば聞いてもらいたいところだ。
「何をすればいいの?」
「ちょっと待っててくれ」
そう言うと俺は部屋に戻り鞄から台本を取り出すとまたリビングに戻る。
「俺のクラスさ文化祭で劇をするんだよ。
それで俺が王子役になったんだけどさ、台詞を覚えなければならないんだけどやっぱり普通にやるよりも姫と2人でやった方がいいかなって思って」
「なるほど。私がお姫様役ってこと?」
「そうそうそういうこと」
「うん、わかった!でもそれならとりあえずコピーしに行こうよ!台本一人分だとすごくやりにくいし」
なるほど…確かに一人分だとやりずらいな…
琴瑚、賢い。
「そうだな。ならコンビニでコピーでもしてくるかな」
「あ、それならちょうどいいや!私も欲しいものあるから一緒に行くよ」
「ん?俺が買って来ようか?」
「いや、いいよ。一緒に行こ」
にこやかな笑顔でこんな事言われたら一緒に行かない訳にはいかないな。
ちょうど片付けも終わったようだし。
「それじゃ行こうか」
「うん」
部屋に戻り1枚上着を取り出してそれを着て、財布と台本と携帯を持って玄関へ。
琴瑚は既に家の外にいてドアを開けて待ってくれている。
本当に気が利くなぁ…
こいつもいつか見ず知らずの男のもとに行くと考えると心底腹立たしい。
そんなことを考えながら靴を履き、家の外に出る。
「ありがと」
「いえいえ」
少し照れた笑顔は本当にかわいい。
これ本当に俺の妹か?
そんなことを思ってしまう。
俺の家が階段で1階まで降りるには少ししんどい階にあるからエレベーターへと向かう。
そしてボタンを押し、来たエレベーターに乗り、1階でエレベーターから降り、歩いてコンビニへと向かう。
その間もずっと雑談していた。
内容はいろいろだったが、学校どう?とか高校どこ受けるつもりなんだ?とかそんな他愛もない会話だった。
コンビニに着いた後もおしゃべりしながらコピーして、そして琴瑚のお買い物もしてから来た道を帰る。
家に着いたら琴瑚が手を洗いうがいもしていた。
本当にお手本みたいな人間だなぁ…
「じゃあお兄ちゃん、始めようよ」
「そうだな」
それから俺と琴瑚の物語が幕を開けた。
王子(俺)と姫(琴瑚)と物語が幕を開けた。
学校の廊下の掲示板には様々なプリントがびしりと貼られている。
今の時期だと文化祭のことが大半を占めているがその中にもその後の体育祭や、その二つのイベントの間にある中間テストのこと、それ以外にも年間行事予定表や月行事予定表など。
その中で目が行くのは大きく、そして目立つプリントであろう。
掲示板のど真ん中に、他のプリントの4倍ほどの大きさで、しかもカラー。
目立たないわけがない。
そのプリント…ポスターとも言えるものには
『コスプレコンテスト開催!!』
なんとも魅力的な文字だ。
内容は次のようだ。
・日程 文化祭最終日
・参加資格 不知火高校生
・受付期間 文化祭初日終了まで
・景品
優勝者
学食無料券(卒業まで) 一人分
文化祭の後夜祭時の3クラス分の鍵
その他
参加賞学食無料券一人分
・内容
コスプレをした人が舞台上に並び
観客が良いと思った人に投票する
獲得票が多い順に順位が決まる
投票できるのは一人一票
あまりに露出が多い衣装はNG
「ふんふんふん…なるほど。
この高校、こんなイベントあったのか。知らなかったな。
それにしても優勝者の景品の3クラス分の鍵が謎だな…何に使うんだ?
……………あっ!なるほど!教師め!なかなかやりおるな」
「あ、悠斗君!何見てるの?」
「おう、梨乃か。いや、何でもないよ」
「?ふーん、ていうか悠斗君、今日も文化祭のお仕事?」
「あぁ。学級委員補佐だからな…学級委員よりはましだがそれでも仕事が多くてな」
「大変だね。頑張って!」
「ありがとよ。それより梨乃こそ今日も学校来て…どうしたんだ?」
「私も準備。私のクラスお嬢様喫茶するんだけど、いろいろと準備あってね」
「へぇー…お嬢様喫茶か…なかなか面白そうだな」
「喋り方と衣装がお嬢様なだけのただの喫茶店だけどね」
「ま、暇ができたら雪人と遊びに行くよ」
「うぅ…恥ずかしいなぁ…」
「ははは。まぁ頑張れよ」
「悠斗君もね」
そのまま二人はそれぞれのクラスへと消えていった。
時間があったから書きました!
ここ最近の投稿頻度がすごい(自分的に)
素人の人なら最初は一日1個ペースがいいらしいんだけど書きだめしてなかったからつらい(笑)
さて、今回の内容ですが…
あんまり進んでないですね。
まぁ次回をお楽しみにってことですかね。
次回が進むかどうかはわからないですけど!
それではまた次回でお会いしましょう!