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とある女の子を説得させるありふれた言葉

「えっ?」

「ですから、皐月さんと梨乃さん、どっちが本命なのですか?」

クノアの口から飛び出してきた言葉には驚かざるをえない。

「ちょっと待て、意味がわからない」

「わからないことないですわよね?」

クノアがぐいぐい押しかけてくる。間接的にも、直接的にも。

これクノアが俺に押しかけてるようにしか見えないぞ。多分…

「そもそもなんでその2人なんだよ?」

テンプレのような言葉しか返せない自分がなかなかに恥ずかしい。

「だって雪人さん、あなた他の女の子と話さないではないですか」


「あっ、雪人く……クノアと一緒?………お祭りに2人…もしかしてあの2人って…」

天使のような声をした少女は2人邪魔をしないように人ごみの中へと消えていった。


うわぁ…痛いところつかれたな。

確かに俺は琴瑚とクノアを除けば皐月と梨乃くらいしか女子とは話さないけど…

それはそもそも俺に勇気がないんじゃなくて女子が話しかけてこないだけであって…

だから決して俺がコミュ障なんてことではなくて…

「そ、それは…特に話す理由もないからな!」

うわぁ…またテンプレっぽい言い訳…しかも今度はコミュ障っぽい。コミュ障というよりむしろボッチか!?

「そんな一人ぼっちの子のセリフみたいなこと言わないでください!」

やっぱボッチのセリフだったか!

てかそろそろ誰か来てくれよ!漫画とかだったら知り合いが来てうやむやになる感じの話じゃんこれ!誰か…そう、例えば鶴海とか!あいつ来いよ!早く来い!今すぐ来い!

「雪人さん?どうして黙っておられるんです?」

「えっ?あ、あぁ、ごめん」

少し頬を膨らませている浴衣姿の女の子。

どうやら俺が熱狂的に人を求めていたので返事をするのを忘れていたらしい。

周りから見たら俺が悪い感じになってるんだろな…

「まぁいいですわ。それで、結局どちらなんですか?」

どうやら勝手に許してもらえたようだ。

ただ質問をやめてはくれないようだ。

「いや、どっちが…とかそういうのはあれだよ、やっぱりその本人に最初に言いたい」

なんとなくどこかで聞いたような言葉を言ってみる。ただこれは本心だ。言葉下手な俺だから伝わってないかもだけど…

「…どうゆうことですの?」

俺の方に迫っている姿勢を保ちながらクノアは首を傾げる。

やっぱり俺の日本語は下手だったらしい…

「簡単に言うとだな……その人が一番、というのはその本人に一番に言いたいってことだよ」

…やっぱり下手だな。これで伝わるか?

「えぇっと…つまり簡単に言うと、好きな人は好きな人に一番はじめに伝えたい、と?」

なんだ、こんな簡単な言葉で伝わるじゃん。俺なんでいちいちめんどくさい言い方してたんだ…

「そういうこと、だからクノアには言えない」

これで納得してくれたらいいんだけど…

してくれるよな?

発言してから少しの間が空き

「そういうことなら仕方ありませんわ。そのように考えておられるとは思いませんでした。申し訳ないことをしましたわ」

深々と頭を下げてくれる。

周りから見たら本当に俺が悪いみたいじゃないか!

「いいよ別に、それより頭を上げてくれ!」

俺の焦った声に反応して頭を上げるクノア。

「では私他のみんなに電話しますわね」

「ああ頼むよ」

そう言ってクノアが持っていた巾着からスマホを取り出し電話をかけるのを何気なく見ている。とあることを思いながら…それはとてもとても理不尽だが…


『鶴海…お前、こういう時に現れろよ!!』




「やっと合流できたわね」

疲れたと言わんばかりにため息をつく皐月。

「皐月さんたちが悠斗さんを見つけていてくれてて助かりましたわ」

「ここに戻ってくる途中にたまたま見つけただけよ」

ここというのはT字路のことだろう。俺と悠斗が言い合いし、そして女子を探しに行くために別れた場所。

「とりあえず食料確保できたけどどうする?」

早く食べたいという願いを込めて俺は言った。

「花火まであとどのくらい?」

「えっとね、8時からだから…あと25分くらいあるよ、皐月ちゃん」

「ありがと梨乃…じゃあとりあえずどこかで食べない?」

おお、さすが皐月!俺の発言の意図を汲み取ってくれたか!

「なら雪人の家にでも行くか?」

「は?」

何言ってるんだこのアホは。

「まぁ確かに近いし、いいんじゃない?方角考えたらベランダから花火見れるだろうし」

何言ってるんだこの女は。

「そうだね、人大勢いないからゆっくりできそうだしね」

何言ってるんだこの女は。

「私もたこ焼きというものを味わって食べたいですし、落ち着けるところがいいですわ」

何言ってるんだこの女は。

「お兄ちゃんの家なら落ち着いて食べれるもんね!私も賛成!」

仕方ないなぁ…妹がこう言っているんだ。

俺の部屋を提供してやるか。

「まぁいいよ、んじゃ帰るか」

「あ、でもお兄ちゃん、琴湖まだ屋台で全然遊べてない…」

聞かれるのが恥ずかしいからだろうか。耳元に近づいて小さな声で囁きかけてくる。

「このお祭りは花火のあとも結構長い間屋台やってるから、花火のあとに来たらいいさ」

「そーなんだ!よく知ってるね」

「まぁ一応近所のお祭りだからな」

そのままグダグダした会話をしながら俺の家に帰ろうとする。

「あ、雪人君。今は6人なんだね!」

この天使のような声は…鶴海か!?

声が聞こえた右の方を見る。

「やっぱ鶴海か。あれ、今は6人ってどうゆうことだ?」

おかしい。普通なら今日も6人なんだね、と言うはずだ…海の時と同じなのに。どうしてだ?

「いやいや、さっきクノアと2人でいるところを見かけたからさ、声をかけようとしたんだけど邪魔になったら悪いなぁーと思って。もしかしたら付き合ってるのかも、なんて思っちゃってね」

ここで舌を出して手を頭に当ててテヘペロ、みたいなことしてればもうちょっと影が濃くなったと思うんだけどなぁ…

いや、ちょっと待て。そんなことどうでもいい。こいつ俺がクノアと2人きりの時に俺のこと見つけてたのに声をかけなかったって…俺がどれだけ辛い思いをしたと思っているんだこいつは!!

「鶴海、お前も今から俺の家に来い。お説教タイムだ」

「え、なんで私がお説教されなきゃならないの?空気読んだんだよ?むしろ褒めて欲しいくらいだよ」

「言い訳は後で聞いてやる!」

どうやらこの時の俺はどうにかしてたらしい。どう考えても鶴海は正しい、と後々俺は思った。

えっと…すごく短いです。

次から新しい話に入るからもしかしたらお祭りだけで終わるかのどっちかだと思います。

今回はここで区切っておきたかったので許してください。


あ、後ですね、クノアの『私』は『わたくし』と読んでいただけると幸いです。

1話の時にルビをつけるの忘れてたわけではないんですけどクノアに一度つけるとあとあと面倒なことになると思って放置してましたすいません!


では次回でお会いできたらお会いしましょう。

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