夏休みのお約束
海から帰還し、夏休みを怠惰とともに過ごしていたある日のこと。
スマホからエロゲ曲が流れてくる。曲調は普通、というかむしろかっこいい。
机に置いてあったスマホを取り電話に出る。
「もしもし」
『おう、雪人か』
「なんだ、悠斗か」
『なんだ、って画面に表示されてただろ』
「いや、見てない」
『はぁ…まあいいや。ところで雪人、今日の夜は暇か?』
「貴様っ…!!やはり俺のことを狙っていやがっ…」
『黙れこの自意識過剰ゴミ』
「…そこまで言わなくても良いだろ」
『悪い悪い』
「で、なんだよ?」
『ああ、今日の夜祭りあるだろ?それに行こうってこと』
「あぁうちの近くでやってるやつか、せっかくの誘いだが悪いな。今日は予報雨だし外出たくない。それに今日は琴瑚が家に来るし」
『このひきこもりが!』
「まぁまぁ、楽しんでこいよ。どうせ女子達は誘ったんだろ?」
『まぁな』
「じゃあな、ハーレム楽しんでこいよ」
『あぁ』
「雨なのにご苦労なことだな」
途中で止めていたゲームを再開する。
「どうする…俺…」
〜30分前〜
「ん?なんだこれ」
その紙には
『8/23日(金) 夜名祭り』
そう書かれていた。
ふーん…なかなか大きい祭りみたいだな…
そうだっ!!
「あ、もしもし、皐月か?」
『何?』
「今日の夜暇か?」
『は?何、キモい』
「…祭りだよ、祭り」
「お祭り?」
「ああ、行こうぜ!雪人も誘うつもりだぞ」
「…雪人が行くなら、別に」
「おっけ!浴衣用意しとけよ!」
「あんたに見せるためじゃないんだけど?それより、雪人ほんとに来るの?雪人ってこういうのあんまり興味無いと思うんだけど?」
「あぁ、そこは俺に任せとけ!」
「そっ。じゃあ」
「あっ、待った!」
「…何よ?」
「梨乃とクノアも誘っといてくれ」
「…分かったわ」
雪人が来ないとなると皐月に…どうする…
自室でくるくるとしている悠斗にふと先ほどの会話が蘇る。
『それに今日は琴瑚が家に来るし』
そうだっ!!
「遅いぞ雪人!」
そう言ってくるのは浴衣女子3人に囲まれた男。
そう言われたのは浴衣女子1人を傍につける男。
「オレハオマエヲユルサナイ」
「まぁまぁ、落ち着けよ」
「どうして俺がこんなところに…」
どうして俺がこんなところにいるかというと…1時間ほど前。琴瑚が俺の家に来た。いつも通りの時間に。いつも通りでない服装で。いつも通りでないテンションで。
「お兄ちゃん!今日のお祭り行こ!」
「なっ…!?なぜ??」
「なんでって、行きたいからに決まってるじゃん!」
「いや、そうじゃなくて、なんで今日祭りがあるって知ってるんだ?」
「あ、それはね……」
「悠斗か…あいつめ…琴瑚から俺に言わせたら俺は言いなりになると思ってやがるな」
ふふふ…俺がいつからそれほどシスコンだと錯覚していた!
「悪いな琴瑚。今日は家から出たく…」
女の子の顔がすごく悲しそうになるのが見えた。
「…かったんだ!誘ってくれてありがとう!よーし、気合入れて行くか!」
女の子が嬉しそうな表情になる。
「ほんと!?でもそんな気合を入れるようなことではないと思うけど…」
「そ、そうだな!はは…」
「まぁ、来たなら楽しまなきゃ損だぞ?」
「言われなくてもわかってる」
鋭い視線で原因となった男を牽制しながら屋台の方へと歩き出す。
出そうとしたところで3人の浴衣女子が目に入る。今までは見えてなかったんだよ。悠斗しか見てなかったからな。……そういう意味じゃないからな!
「えへへ、どうかな?」
少し恥ずかしそうに梨乃が尋ねてくる。
「みんな似合ってるよ」
「当然ですわ!私に似合わないものなどありませんわ!」
いつも以上にテンションが高いクノアが答える。
「ありがと、雪人君」
少し照れた表情で梨乃。
皐月は…こっちを向いていない。
「お兄ちゃん!私には何も言ってくれてない!」
元からほんの少し膨れている頬をさらに膨らませている。こんなのが妹だなんて、俺は幸せだなぁ…
そんなことを思いつつも何も答えないとさらに膨れそうだと思い妥当な返事をする。
「あ、あぁ、琴瑚もよく似合ってるよ」
「へへへ、やったぁー!」
ほらかわいい。兄に褒められて無邪気に喜ぶ妹。正直言って天使だからな?
「さて、まずはどこから行くか?」
そんな俺とは違い可愛い妹がいないクソ悠人が、ここにいてはせっかくのお祭りが台無しだと言わんばかりに声を出す。
やれやれ、これだから一人っ子は…
「とりあえずなにか買おうぜ」
「さんせーい!!」
ほら、すぐ兄に賛成してくれる妹。もう抱きしめたい。
「お腹も空いてきたしね」
「そうね、私たこ焼き食べたいかな」
「あ、私も食べたい!」
「私も食べてみたいですわ」
「ん?クノアはたこ焼き食べたことないのか?」
ふと口に出してしまったけど今まで外国にいたんだもんな。当たり前か。
「えぇ、ロシアにはありませんでしたので。ですが焼きそばは食べたことありますわ」
「まぁ焼きそばは家で普通に作るからな」
「とりあえず3人はたこ焼きってことだけど、琴瑚はどうする?」
すると琴瑚は少し悩み…
「お兄ちゃんは何にするの?」
「俺か?そうだな…たこ焼きと焼きそば、かな」
「なら私もそれで!」
「えっ?食べきれるか?」
他の女子高校生がたこ焼きだけなのに女子中学生がたこ焼きに焼きそばなんて…
「食べきれなかったらお兄ちゃんにあげる!」
「そうか、仕方ない。もらってやろう」
頼られているなら仕方ないな、うん。これは甘やかしているんじゃなくてしょうがないだけだ。甘やかしている訳じゃない。ここで食べきれないなら買うな、とか言う奴は人間じゃない。
「じゃあ悠人、頼んだぞ」
そこにいた男の肩をポンと叩く。
「えっ?」
どうやらこの男はまだ状況を理解出来ていないようだな…仕方がない、教えてやるか。
「買いに行け」
「なんで俺が!みんなで行けばいいだろ?」
「なんで俺がここにいると思っている」
「琴瑚ちゃんに誘われたからだろ?」
「お前が琴瑚をたぶらかしたからからだよ!!」
「おいおい、たぶらかしてなんてないぜ。俺はただお祭りあるよって言っただけだ」
「それがどういうことかわかって言ってたんだろ!」
「これ、終わりそうにないわね」
はぁ、とため息をつく皐月。
「そうだね。私たちで買いに行こ」
苦笑しながら梨乃。
「仕方ないですわね…」
「あはははは…」
「じゃ行きましょ」
そして女の子4人がその場から消えていった。
「だいたいこの前も琴瑚に吹き込ん……あれ、琴瑚達は?」
「え?あれ?どこ行った?」
「多分先に買いに行ったんだろ!俺はたこ焼きの屋台を周る。お前は焼きそばを頼んだ」
「了解!見つけたら電話かけてくれ。あいつらも二手に分かれてるかもしれないからな」
「そうだな、わかった」
悠人は軽く走って行った。俺も行くか。
そのまま悠人とは逆方向に歩き出そうとして
あることに気付く。
「あれ、俺スマホ…持ってきてないぞ……」
あ、これめんどくさいやつだ……
心の中でそう感じた。
「あれ、お兄ちゃん達いないんだけど…」
「私たちがいなくなったから探しに行ったんじゃない?」
「じゃあ私雪人君に電話してみるよ」
………
………
「出ないんだけど…」
「あっ!そう言えば…」
「お兄ちゃん早く!!」
「待ってくれ!あー、スマホは…琴瑚持ってるしいいよな?」
「そうだね!充電も満タンだし!」
「ってことは雪人はスマホ持ってないわけね…」
「悠人さんなら持ってるのでは?」
「そうだね、悠人君にかけてみるよ」
………
………
「悠人君も出ないんだけど…」
「もう、何してんのよ!あいつら!」
「とにかく私たちが分かれて探そ!私たちはスマホ持ってることだし、見つけたら電話するってことでいいんじゃないかな?」
「琴瑚さんの言う通りですわね」
「じゃ、琴瑚ちゃんは私と一緒に行こ」
「皐月さん?私1人の方が4手に分かれられてすぐに見つかると思うんですけど…」
「琴瑚ちゃん方向音痴なのそろそろ自覚した方がいいよ」
「そ、そんなことないですよ!私1人で大丈夫ですよ!」
「前科があるから説得力ないよ…」
「うぅ…仕方ないです、ならそうします」
「じゃあクノアはここから左の方、梨乃は右の方お願い、私たちは前の方を探すから」
「了解ですわ」
「じゃあね」
各々がT字路から散っていく。
雪人君たちが別々で探しに行ってるならもし雪人君と会えたらみんなと合流するまで2人きり…よし、雪人君を見つけないと!
全く、なんでスマホ持ってきてないのよ…せっかく買ったのに冷めるじゃない、雪人の馬鹿!
お兄ちゃんとはぐれるなんて思いもしなかったからスマホ置いてきてもいいみたいなこと言っちゃったけど、良くなかったかなぁ…大丈夫かな、お兄ちゃん…
「あら、雪人さんではありませんか!」
突然声をかけられ驚く。声をかけてきたのは口調からもわかるようにクノアだ。
「おっ、クノア!あれ、みんなは?」
「あなた達が元の場所にいなかったから別々に探しに行ったんですわ!」
「そうだったのか…それは悪いことしたな」
「見つけたら電話することになっているので電話させてもらっても……いや、先に1つ、よろしいですか?」
なんだ?クノアが俺にこんなこと言ってくるなんて…琴瑚のことか?まぁそれしかないな…それにしてもなんだろう。海でのことはもう終わったはずなのに…
「雪人さんは、琴瑚さんは除くとして、皐月さんと梨乃さん、どちらなんですか?」
ずいぶんと遅れてすいません!!短いですが区切りたいと思ったので今回はこれだけです。続きもちょくちょく上げていこうと思いますのでよろしくお願いします!