小さな少女と策士な小悪魔少女
生温い風が2人の間を通り抜ける。
夜の学校、2人きりの男女。
落ち着いた雰囲気に包まれた少女——知佳は雪人の言葉を待っていた。
「夜の学校ってさ…どう思う?」
「…え?」
「あー…言い方が悪いな。えっと、『文化祭』『学校に泊まる』『2人の男女』って何を想像する?」
「え、あの…えっと……え、えっ」
知佳が顔を染めて言おうとしたところで
「それに『泣き崩れる女子』も追加で…って藤宮どうかした?」
外を眺めていた雪人が振り向いた時、知佳は手で口を抑えていた。
「いいいや!な何でもないよ!」
慌てて大きくなった声を出すと雪人は知佳の口を手で抑える。
なななな九条君!?えっ!??
頭の中が真っ白になっていると
「あんまり大きな声出さないで。聞こえちゃうから」
雪人の視線を追うとそこには中庭に座り込んだ1人の女子がいた。
知佳の頭で雪人の質問と目に映る光景が繋がる。
雪人の手が離れると知佳は深呼吸をする。
「…そういうことだったんだね。あの人、告白したんだ」
「そう。結果は…言わなくてもいいよな。で、ちょっと思ってさ」
「思ったって、何を?」
「やっぱり、文化祭とかの特別な行事って人を積極的にさせるのかなってさ。俺ってさ、そんなに行事とかで感化されたりしないんだよね。だからこそ聞きたいって思って」
「あ、それでたまたま通りかかった私に?」
雪人が無言で頷くと知佳は考える。
2、3回風が吹き——1度だけは強い風だったが考え込んでいた知佳は集中していたようで自分のスカートが捲れていたことに気づいてない——知佳が口を開く。
「やっぱり特別な気持ちにはなると思うよ、私は。いつもと違って周りの雰囲気も高い訳じゃん?それに…準備とかで話す回数も増えたりするし、だったら今のうちに告ろうって思ったりもするんじゃないかな?」
なるほど…女子の言うことだと説得力があるな。
「だよな。…うん、ありがと」
「あ、あのさ、九条君」
「どうかした?」
頑張れ知佳!今は絶好のチャンスでしょ!
「あの…RINE教えてっ!」
言えた…!よく頑張ったよ知佳!私もう死んでも…だめだめ、まだ死んじゃだめ!
「ん?あぁいいよ」
ポケットからスマホを取り出して操作し、連絡先を交換し合う。
「あ、そういえばさ…」
「どうしたの?」
少し言いずらそうにしていた雪人が決意を決めたように言う。
「その、集中して考えてくれたのは嬉しいけどもうちょっと周りのことを気にした方がいいと思うぞ。いや、水玉は可愛かったけどさ」
雪人の言葉に知佳は首を傾げている。
「とりあえずそういうことだから、じゃあまた明日な。おやすみ」
「あっ、うん、おやすみ」
意味が分からないまま知佳は自分の教室に戻るとそこには既に布団が敷かれてあった。
私立でもこんなに布団を備えている学校はないでしょ、と思いながらも教室に入ると
『知佳おそーい!』『はやく枕投げしようさ!はよはよ!』
「えー、汗かいちゃうじゃん」
『あー、それもそうだね。汗臭い女とか嫌だしやめとこー』
『っていうか知佳はやく着替えたら?制服のままだと皺つくよ』
「うん。そうするよ」
鞄の中からジャージを取り出すと端に避けられた机の上に置く。
リボンを取り外しシャツを脱ぐと置いてあるジャージを着る。
『そっこだー!』
「ひぇっ!?」
『えっ!?知佳生えてないの?』
『ほんと、つるつるだね。指つっこんでいい?』
「だ、駄目に決まってるでしょ!!」
半泣きの知佳は下ろされたパンツすぐに上げるとジャージのズボンをすぐに履く。
『そうだぞーだめだぞー!小学生の女の子相手に手〇ンとか犯罪だぞー?』
「誰が小学生さ!身長がちょっと低くて童顔なだけじゃん!」
『いや、それもう小学生じゃん。毛だって生えてないし』
「は…生えてないだけじゃん!」
『それに水玉パンツだし』
「べ、別に水玉はいいじゃ…」
水玉って…九条君が…
その時知佳の脳内に雪人の言葉が蘇る。
「いや、水玉は可愛かったけどさ」
もしかしてパンツ見られた…?
急に体が火照り顔が赤くなる。
『JSです!って言ったら間違いなく援交目的で群がってくるロリコンいるよね』
『ちょっと!あんたみたいに知佳はビッチじゃないんだから』
『まぁそれはそうだね。あたしがビッチかどうかは置いといて』
恥ずかしくなるが周りの騒がしさに心が冷やされる。
「はぁ…男子が廊下を通ってるかもしれないのによくそんな大きな声で色んなこと言えるね」
『うわぁやっちまった!清楚キャラで通してるのに』『清楚というよりあんたただの清掃キャラだよ』『えっ!?』『えっ!?じゃねーよ。清楚と清潔間違えてるだろ!男子の前で掃除ばっかしやがって』『うわあああああああまじかあ!』
騒がしくなる教室の中で1人ため息をつく。
私がもし九条君に生えてないとか知られたら死にたくなるよ…。
そう思いながらスカートを脱ぎ完全なジャージ姿になる。
そこで雪人からRINEが来ていたことに気付く。
『今日はありがと。これからよろしくな』
浮かれていた知佳は浮かれすぎていて後ろの友達に見られている…読まれているのも気づかずに返事をする。
『こっちこそあんまり役に立てなくてごめんね。よろしくね!!明日、頑張ろうね♪』
ご機嫌な知佳がスマホを置いて振り向くと友達が2人知佳に詰め寄っていた。
『ねぇ知佳…何があったのかなぁ?』
『洗いざらい吐いてもらおうか』
その時ようやく雪人とのやり取りが見られていたことに気づいた。
女子小学生のパンツを見てしまったという背徳感がやばい。今更かもしれない、みんな知ってることかもしれないが向き合ってみて思った。藤宮、あいつ小学生だろ!見た目が女子小学生にしか見えない!あいつを見てると興奮す…るやつはただのロリコンだ。俺はロリコンじゃない。だから藤宮を見ただけでは興奮しない。そう、俺は藤宮のパンツに興奮したんだ!女子小学生の見た目をした女子の水玉パンツ…興奮しないやつがいるのか?そんなやつは人間じゃねぇ!落ち着け俺。冷静に考えよう。藤宮は女子小学生じゃない。女子小学生というのは全てがぴかぴかしか崇高すべき存在だ。手を出してはいけない禁断の果実。それを少し見た目が小学生みたいなだけの女子高校生と一緒にしてはいけない。高校生風情が小学生になれるわけが無い。だから藤宮は小学生に見せかけたなにかであってただの女子高校生なんだ!騙されるな。女子小学生はぴかぴかつるつる潤しい存在なんだ。
雪人の中で一つの意味のわからない無駄な考察が終わったところで教室に忘れ物をしたことを思い出す。
そういえばジャージ、教室に置いたままだったな。めんどくさいけど取りに行くか。
多目的ホールまでもう少しという所だったにも関わらず道を引き返して教室に向かう。
教室に着いたところで後ろのドアのガラス部分から中を覗くとそこには…
『そっこだー!』
『ひぇっ!?』
『えっ!?知佳生えてないの?』
『ほんと、つるつるだね。指つっこんでいい?』
『だ、駄目に決まってるでしょ!!』
半泣きの知佳は下ろされたパンツすぐに上げるとジャージのズボンをすぐに履く。
『そうだぞーだめだぞー!小学生の女の子相手に手〇ンとか犯罪だぞー?』
『誰が小学生さ!身長がちょっと低くて童顔なだけじゃん!』
『いや、それもう小学生じゃん。毛だって生えてないし』
『は…生えてないだけじゃん!』
なんだこのパラダイスは!…じゃなかった。けしからん!夜の学校でそんなことしたらだめだろ!もっとやれ!…あっ、ちがう。だめだ、つい本音が出てしまう。
そんなことを思う前に先に考えないといけないことがあるだろ俺!
果てのない煩悩が雪人の頭を埋め尽くす。
パンツを脱がした本人が生えてないと言い、それを真横で見ていたやつがつるつるだと言った。あと指を突っ込んでもいい?とも言った。これで示すことは1つ、話の話題がま〇こだということ。そして次に脱がされた本人が発言した、生えてないだけじゃん。なるほど…このこれらから考えられる結論は1つ。藤宮は小学生みたいな女子高校生ではなく、正真正銘の女子小学生!あっ、やばい。鼻血がでそう。ここは違う結論を考えろ俺。毛が生えていない他の可能性を…。剃っている、というのはどうだろうか?しまった…鼻血が出てきてしまった。他の可能性を考えろ俺。考えろ考えろ考えろ…。
その時前のドアに立っている女子の存在に気付く。
「あ、緋音…ど、どうした?」
ゆっくり近づいてくる緋音に少し恐怖を感じ少しずつ後退する。
「別に何でもないんだけど…雪人君ってもしかして相当に変態なんじゃないかって思ってさ」
ははは何を言ってるんだ緋音は。こんな紳士に向かって変態とは甚だしいにも程がありますよ緋音様。
「まぁ人の性癖に口を出す気はないし。雪人君が手を出さない限りは」
「何それ怖い」
「とりあえずこの話はもう置いとくとして、どうしたの?ここに来るってことは用があったんでしょ?」
その言葉に自分が何故ここに来たのかを思い出す。
「そうだった。ジャージを取りに来たんだ。1番右端の上のロッカーに入ってるから取ってきてくれないか?」
「なるほどね。わかった、待ってて」
そう言うとわざわざ遠回りして前のドアから教室に入っていく。ここで後ろから入らないのは中の女子に会話が男子に聞かれていたということを伝えないためだろう。
緋音はこういうところ気が利くよなぁ。
少し待っているとすぐに前のドアから緋音が出てくる。
「鞄までいいの?」
「今は使ってないやつだからいいよ。後で返してね」
「わかってるよ。ありがと」
小さな無地のトートに入ったジャージを受け取って礼を言う。
気が利きすぎてむしろ心配になるレベルの優しさだろこれ。
「取ってきてあげた代わりにちょっと付いてきてくれないかな?」
「…どこに?」
こんな夜中——と言ってもまだ11時にもなってないが——にどこに行くのかと思って尋ねるとすぐに答えは帰ってきた。ジャージをトートに入れてくれたのはこの為でもあるのかもしれない。
「ん?コンビニだよ」
「雪人君はお金持ってきた?」
「ずっとポケットに財布突っ込んであるから持ってきてるぞ」
「そっか」
「何買うんだ?」
「何買うと思う?」
何だろうな…夜にコンビニで男を誘って来るということは……ゴムは有り得ないだろうな。…いや待て、もしかするとここでゴムを買ってこのまま劇のように王子と姫となって愛の逃避行を…!!
「ごめんよく分からないけど多分考えてるのとは違う」
「えっ!?」
まさか考えがバレた…!?
「さっきの顔、なかなか気持ち悪かったよ。クラスの女子が見たら5割はショック受けると思う」
「そんなに!?」
「うん。見られたのが私でよかったね。まぁ今後あんな顔するならちょっと付き合い考えるけど」
「緋音。流石にそこまで言われると傷つく」
俺だってガラスの心の持ち主なんだぞ?殴られたら割れるんだぞ?
あ、悠斗に言われるのはあいつのことをゴミとしか思ってないから擦り傷すらつかないです。
「あーごめんごめん。この際だから言っとくけど私けっこうストレートに言う癖あるからあんまり気にしないでね」
「すごく気にするんだけど!?女子にストレートに言われたら男子は気にするんだけど!?」
というかそういう人って女子の中で嫌われるイメージあるんだけど案外思い違いなのかもな。緋音って女子とも仲いいし。
「いや、私が言う相手はある程度大丈夫だなと思った人にだけだからね。流石に誰にでも本音を言うなんて嫌われそうで出来ないよ」
「それならまぁ…いい、かな?」
つまりまとめるとこれからも俺は緋音にストレートに言われるということか。流石に傷つくけど緋音の声に罵倒されると思うと…イケナイ気持ちになりそうだから本当にやばい。
俺はどっちかというとSだぞ!Mじゃない!
「ところで何を買いに来たんだ?」
危うく聞こうとしてたことを忘れそうになったが思い出して尋ねる。
緋音はジュースを1本手に取ると振り向いて答える。
「歯ブラシをね。ついでに飲み物も」
歯ブラシって…学校で泊まる時って磨かない人もいると思うんだけど。
あ、俺は磨きましたよ?俺真面目だから。
「そっか。じゃあ買って帰るか」
そう言うと笑顔で緋音がジュースを持った手を差し出してくる。
「………買えと?」
「別に買ってくれなくていいよ?でもクラスのみんなが雪人君の趣味を知ったらどうなるんだろうなぁ。まさかエ…」
『324円になります…524円からでよろしいでしょうか?…200円のお釣りになります、ありがとうございました〜』
緋音の手を取ってコンビニから急いで出る。
待て待て待て待てなんで緋音が知ってるおいおいとりあえず悠斗殺す。
「いきなりどうしたの?」
コンビニから出てすぐに声をかけられ手を離し振り返る。
「…緋音。俺の趣味をどうして知ってる?」
「ん?知らないよ?」
即答だった。そして俺には何を言ってるか分からなかった。
緋音は雪人の横を通り過ぎて帰り道を歩いていった。
頭の中がクエスチョンマークだらけの俺を横目で見ながら少しにやついて。
その時は道も暗くよく見えなかったが緋音が小悪魔に見えた。
今日からだんだんペースを上げて行きたいと思います!
もう片方の『▼周りの女子が色々変態で忙しい童貞生活▼』も更新はやくしていくつもりなのでよろしければそちらもお願いします!
それから総合評価30になりました!ありがとうございます!これからも頑張りますのでよろしくお願いします!




