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夜の学校は人を不思議な気持ちにさせる

皐月にこっぴどく怒られた後、弥生モールから帰って来ると学級委員長から連絡が入る。

内容は概ねこうだ。

明日はいよいよ私たちの本番だし最後の確認とかしたいから今日は泊まりね。だからジャージと制服をもって学校に来て。10時に多目的ホール集合ね。

そういうわけで必要なものを持つと琴瑚にそういう理由を伝え家を出る。

エレベーターで降りるために下のボタンを押して待つ。音とともにエレベーターが開くと中からイラストレーターが出てくる。

「お、この時間に制服って、今から学校?」

エロゲーイラストレーターであるところの綺華がトートバッグを肩にかけながら言う。

「そうですよ。明日文化祭の劇の発表で最後の確認をしとくんだそうです。だから今日は学校で泊まりだって連絡が」

「学校でお泊まり…思春期の男女が同じ部屋で夜に性を出して営む…。うん、いい響きだね」

「今の『精を出す』ってところの漢字あってる?俺には性別の方に聞こえたんだけど?あと営むとか言うな!」

相変わらず高校生相手によろしくない発言を繰り出す綺華。

「だったら単純に大乱交って言った方が良かった?」

目を閉じて自信ありげにそう言うとドヤ顔で雪人の方を見るが雪人は既にエレベーターで下に降りていくところだった。

「あ!ちょっとぉ!」

綺華の声は自分以外には届かなかった。


エレベーター内でため息を漏らすと同時にドアが開く。

エントランスから出ると昼間よりはましだがまだ暑さの残る空気が漂っていた。

ゆるい風が吹く度に微妙な気持ちになりながら学校までの道を歩いた。

集合時間ほぼぴったり、正確に言えば集合時間の17秒前に多目的ホールへと着くとそこには恐らく全員が集まっていた。

『お、九条が来たぞ』『時間ぎりぎりだな』

ガヤガヤとした空間を仕切るように学級委員が声を出す。

『それでは全員集まったのでこれから最後の確認をしてもらいます。班ごとに分かれて取り組んでください。他の班の誰かの協力が必要な時は遠慮なく言って借りてください。それではよろしくお願いします』

『うぃーっす』『衣装班こっち来てー!』

それぞれが自分のしなければならないことをしようとする中、雪人はただドア付近で棒立ちしていた。

「雪人、こっち来い」

悠斗に呼ばれてそこへ行くと学級委員、緋音もそこにいた。

『九条君は鶴海さんと台詞の確認とかしといて。それと衣装合わせもよろしくね』

それだけ言うと学級委員は去っていった。

「忙しそうだな」

そうつぶやくと

「お前はお気楽そうだな」

と悠斗。

「なんだ?喧嘩売ってるのか?

まぁいい。俺は心が広いから無かったことにしてやろう」

「ところで紺野君はどうしてここにいるの?」

「あぁ、衣装が違う部屋にあってそこまで案内してくれって頼まれてるんだ」

「じゃあさっさと案内しろゴミ」

「お前の心は蟻より小さいな」

しまった!ゴミって言ってしまった!

本当はクズって言おうとしてたのに…こんな些細なことで蟻より小さいと馬鹿にされるなんて…

「まぁいいや。付いてきて」



『ほいほーい、カンペキーっ!』

衣装班がハイタッチし合っている。

「クオリティすごいなこれ」

「そうだね。よく似合ってるよ雪人君」

「そういう緋音だって似合ってるぞ?」

「そう?ふふ、ありがと」

2人で衣装のことを言い合っていた。

『絵になりますなぁ』『服もいいけどあの2人がいい雰囲気だよね』『前一緒にお昼食べに行ってたよ』『えぇぇっ!?』『もしかして付き合ってたり…?』『ひゃーっ!』

衣装班の女子が盛り上がっている。

その中の1人がこっちに歩いてくると

「1回その衣装着て練習してきたら?やっぱり動きにくさとかも確かめといた方がいいし」

それもそうだなぁ。

「じゃあ1回してくる。行こっか」

「うん」

ドアから出ていくと2人で歩きながらいつもの練習場所へと向かった。

その姿を見送ると

「九条君と話せたー!」

『いやいや、今のは話したうちに入れたらダメっしょ』

「いいんだよ!声を聞けただけで幸せなんだから!」

『まぁ知佳(ちか)がいいならいいけどさ。それにしても本当に1人で王子服を作り上げるなんてね』

「楽しかったよ?作るの好きだし、九条君の衣装だし」

色々と考えながら縫ってたら止まらなくなって3着も作っちゃったってことは黙っとこ。

それにしても似合ってたなぁ。かっこよかったなぁ。私もあんな王子様にプロポーズされたいなぁ…

そのまま知佳は妄想の世界へと入り込んで行き、いつしか夢の世界に変わっていった。



「なんで君は僕を遠ざけようとするんだい?」

「それは……それはあなたのことを思ってるから。だからっ…!」

「確かに君と結ばれたら僕は危ない目に合うかもしれない。それでも僕は、君と結ばれるためなら構わない。僕はそれくらい君を愛しているんだ!」

「ずるい…。そんなこと言われたら…またあなたのことを忘れきれなくなっちゃうじゃない!」

「忘れなくていい。これからは僕がずっと君の傍にいる。だから…僕の気持ちを受け取って欲しい」

大きく頷くと姫は王子に抱きつく。

「えええっ緋音!?」

いきなり抱きつかれたせいで声が浮ついてしまった。

「ん?何か変だった?」

「いや、変というかなんというか…なんで抱きついてきたんだ?」

エロゲ脳の俺の頭の中では既に文化祭学校にお泊り夜に2人きりは相当に危ないところまでシーンが進んでいるんですけど。

「それは衣装班の人が動きにくいかもしれないから確かめといたらって言ってたから」

確かにそう言ってたけど…まぁいいか。

「そうだけど緋音、1つ言っておくけど男子にあまり抱きつくなよ?勘違いされるぞ?」

「じゃあ雪人君も勘違いしてくれたの?」

あぁ。もちろん勘違いしてエロゲ展開真っ盛りだった…。もう少しで妄想と言えどもクラスメイトと一線を越えるところだった。

「だ、大丈夫だ。俺は小さい頃に琴瑚によく抱きつかれていたから女の子に抱きつかれるとその子が琴瑚にしか見えなくなってしまうからな」

これで本当に大丈夫ということが伝わったんじゃないだろうか?

そっと抱きついていた腕が雪人から離れると物理的に距離があく。

「雪人君まさかのシスコン…しかも重度の…」

むしろ危ないということが伝わってしまったか…。ちくしょう!

「まぁ人の性癖だし私がとやかく言う権利はないから何も言わないことにするよ」

「ま、待て!俺が好きなのは妹じゃない!ほ、ほらあれだ!メイドだ!」

「メイドってことは5月(いつき)ちゃ」

「違う!メイドじゃなくて…そう!発育のいい外国人!やっぱり日本人はお子様だからな」

「ということはクノ」

「じゃなくて!やっぱり日本人が最高じゃん?普通の日本人!ほら、緋音みたいな!」

自分でどんどん墓穴を掘っていき最後には自ら墓に入った。

「ふふ…雪人君焦りすぎ。今のは告白と受け取ってあげようか?」

墓穴以外の穴があったら入りたい。

いつもと違い緋音は意地悪そうな顔をしていたがそれでも優しそうな表情も見えた。

「まぁこの話は置いといて、最後の練習しとこうよ」

緋音が自分で沈めた船に助け船を出してくれたのでそれに乗ってまた練習を始めた。


練習も終わり衣装を衣装班に返して自分たちの教室に戻るがドアに貼ってある紙を見て立ち止まる。

男子立入禁止と言われると立ち入りたくなるのが人間だ。でも俺は知っている。これはおそらく中で女子が着替えているかなにかだ。つまりここに入ろうとするとこの先学校で何を言われるかわからない。ここは悠斗に電話してどこにいるか聞こう。

「あっ、そう言えば男子は多目的ホールで着替えて寝るって言ってたよ」

「え?あ、そうなのか。ありがと。じゃあそっち行くわ」

「うん。おやすみ」

「おやすみ」

緋音と別れ多目的ホールまでの廊下を歩く。

夜の学校って怖いって言う人が多いけど俺は凄く好きだな。そうだ、ちょっとだけ風に当たっていくか。

目的地を多目的ホールから吹き抜けとなっている3階渡り廊下へと変える。

そこに着くとそこには誰もいなかった。

鉄柵の上に腕を組むともたれかかる。

ま、そりゃそうか、こんなところ。

生温(なまぬる)い風が雪人の髪をなびかせる。

そう言えば皐月とかのクラスは準備どうなってるんだろ。劇じゃないところはあんまり泊まる人たちはいないって緋音が言ってたけど。学校に泊まるってなかなか経験出来ないよな普通。たいていの高校はお泊まり禁止だし、やっぱり私立の中でもセキュリティが厳重なこの高校だから出来るのかな。

今の雪人の位置からは中庭が一望出来る。そこに1人の女子が歩いてくる。暗くてリボンの色で学年の見分けがつかない。するとそこにすぐに男子が現れる。こっちも良く見えない。女子が何かを言っているようだが雪人の耳までは届かない。男子は首を横に振ると振り返って時々振り向きながら去っていった。

女子はその場に膝から崩れ落ちると袖で顔を拭いているようだった。

あんまりジロジロと見るんじゃ無かったな。それにしても…文化祭、夜の学校、人気のない場所。やっぱりそういうのが勇気を出させるものなのか。

「九条君?」

1人で黄昏ていると不意に声をかけられる。

振り向いてその姿を確認する。

「えっと…藤宮?どうかした?」

藤宮知佳、衣装班の女子。あまり面識はないが衣装班の人が『知佳はすごい頑張ったよね』と褒めていてそれで名前を覚えていた。

「あ、名前知ってくれてたんだ」

「まぁ、うん。で、どうかした?」

「あ、いや…何でこんなところにいるのかなって」

確かに、1人でこんなところにいてると気になるのは当たり前だ。

「ちょっと風に当たろうと思って。藤宮こそ何でこんなところに?」

「あ、私は被服室に裁縫セットを直しに。被服室あそこだから」

知佳が指さしたところは3階の1番奥の部屋だった。

「なるほど。なぁ藤宮、ちょっといい?」

「えっと…何かな?」

久々の本編続きです!

前の内容を忘れた!という方は読んでください!

次の投稿は2/25が越えてからになると思いますがよろしくお願いします!

あと誤字とか訳が分からないところとかありましたら気軽に言ってください!

ではまた次の話で!

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