お買い物デートその2
『ありがとうございましたー』
商品の入った袋を手に取り店から出る。
梨乃は商品を俺へと手渡す。
何も言わずに受け取る。
歩き出す。
ここまでの一連の流れには理由がある。
そう、とても重要な理由が…
歩き出すは抜いてもいいかな?
「ねぇ雪人君、じゃんけんしようよ」
「ん?なんでだ?いきなり」
「じゃんけんで負けたら今日の荷物持ちってことで!」
なんだ、それくらいのこと普通にしようと思ってたのに。
「別にそんなことしなくても持ってやるぞ?元からそのつもりだしな」
「ダメだよ!なんかそれは私としてはダメだからじゃんけんしよ!」
これも梨乃の優しさなのかな。
よし仕方がない、そこまで言うならじゃんけんしてやろう。
梨乃がこう言ってるんだ、手加減するのも良くない。
本当は持ってやりたい気持ちが山々なんだが梨乃の気持ちを蔑ろにするわけにもいかない。
ほんと、しょうがなく全力で相手をしてやろう。
悠斗とのじゃんけんで負け無しの俺が。
「わかったよ。それじゃ行くぞ!最初は…」
わかっただろこれで。重要な理由とやらが。
それにしても開始一時間でこんなに買ってお金大丈夫なのか梨乃は?
それにしても人が多いな…
「女子ってよくこういうところ来たりするのか?」
「んー?まぁちょくちょく来るね」
ほぇー…こんな人が多いところよく来るな。
男子はあんまりこういうところ来ないしな…
「雪人君とかはあんまり来ない感じ?」
「俺…というか男子はあんまり来ないんじゃないかな」
なんたって男子は家でエ…ゲームしたりしてる方が楽しいだろうしな。
そう。男子はそういうものだ。
まぁ中には服とかの方が好きとか言う奴もいるだろうが。
そういう奴は文系だよ。
「男の子って服とかそんなに興味ないの?」
「興味ないことはないけど女子ほどじゃないな。毎年服買うなんてしてるやつは少数だと思うぞ?」
だよな男子諸君?
服に金かけるならゲーム買うよな?遊ぶよな?
「そうなんだ。でもその割に雪人君って服けっこう持ってるよね?見る度違う服着てる気がするんだけど」
「まぁうちには琴湖がいるからな」
妹持ちならわかるんじゃないだろうか、俺の言いたいことが。
梨乃が分からなさそうな顔をしていたので妹持ちの兄の宿命を教えてあげる。
「ほら、琴湖は服とか気にするタイプだからさ。それの付き添いで買い物する時に親に、あんたも買ってきなって言って金渡されるから」
「あ、そっか!琴湖ちゃん服のセンスいいしね!お母さんにも褒められてたし!」
「あの時けっこう喜んでたぞ。梨乃ちゃんのお母さんに褒められたーって。まぁ現役のファッションデザイナーに褒められたら嬉しいだろうけど」
梨乃の母親は有名なファッションデザイナーだ。ファッションのことにはなかなか口うるさい。
もしかして梨乃が服にこれだけ金をかけられるのって…
「そりゃそうだよ!私だってほとんど褒められたことないし」
少し落ち込み気味の梨乃を励まそうと
「でも今日の服装は可愛いし絶対褒められるだろ」
言った後で恥ずかしくなってきた。
「ありがと!この服は数少ないお母さんに褒められたやつの一つなんだ!」
「褒められたのか!それは可愛いはずだな。ところで梨乃、服のお金って…」
ほとんど自分の中で解決していたことを聞いてみる。
「もちろんお母さんがくれるよ」
やっぱりなぁ。さすがファッションデザイナー。娘の服装にも手を抜かないということか。
「さすが梨乃のお母さんだな」
「自分の娘が服に疎いのは嫌なんじゃない?」
「そりゃそうか。梨乃も昔テレビ出たことあったしな」
昔テレビの企画で新人ファッションデザイナーの子供の服装はどうなのか、みたいなのがあってそれでその新人ファッションデザイナーに梨乃のお母さんが選ばれてた。
「あの時の服装はお母さんが選んでたけどね」
「そうなのか!?てっきり梨乃が選んでると思ってたよ」
「恥ずかしくないようにしたかったんじゃないかな?その時まだ私十二歳だったし…」
「あーなるほどな」
「到着!」
「ん?」
今着いた店だけじゃなく他の店もそうだが女子ってもっとピンクっぽい色の店で買い物してると思ってた。
思ったより白とかのシンプルで大人で綺麗な感じの店が多いんだな。
「ここが今日の本命。荷物増えるから覚悟しといてね!」
「おう、任せろ!」
後に俺はこの発言を後悔することになる。
「お、雪人と梨乃見っけ!」
「まさか本当に跡をつけることになるなんてね…」
「だって気になるだろ!学校来たと思ったらすぐ帰っていくなんて!」
「まぁ確かに気になるけどさ…」
「二人でショッピングなんて怪しいですわ!」
「それにしても後で聞いたらいいだけだと思うんだけど…」
「細かいことは気にするなって!…おっ、動き出したぞ!」
「さっき任せろとは言ったけど…まじか?」
レジに置かれた服の量を見て戦慄する。
「よろしくね、雪人くん」
にっこり笑顔の梨乃。
さすがに任せろと言ったからには持たないわけにもいかないしな…
今日は帰ったらゆっくり風呂に入るか…
両手両肩両肘に袋を吊り下げ店から出る。
「ん?」
「どうかした?雪人くん」
「あ、いや……ちょっとここで待っててくれないか?」
気のせいならいいんだけど。
「どうしたの??」
「いや、ちょっとトイレに」
「あ、ごめん。ここで待ってるね」
「すまんな」
「やばい!雪人がこっちに来るぞ。トイレに隠れるか」
「私たちは大丈夫だけどそれあんた大丈夫?」
「任せとけって!」
俺がそんな簡単に見つかるかよ!
普通の奴なら大便に隠れるだろうが…
悠斗がいたと思ったんだけどな…
気のせいだったか?
まぁ見えた限りだとこのトイレくらいしか隠れる場所なかったしここにいなかったら俺の見間違いなんだろな…
………あれ、いないな。
個室も全部空いてるし…
まぁいるわけないか。常識考えたらいる方がおかしいよな、文化祭真っ最中だしな。
普通にトイレしたら梨乃のところに戻ろう。
「失礼しまーす」
ん?なんだ?…あっ、清掃か。
なかなか美人じゃん。若いし。
こんな事言うと失礼かもしれないけどもっと他にできる仕事あっただろ。
てかこういうショッピングモールとかのトイレ清掃とかってどれくらいの時給なんだろ?それともバイトじゃないのかな?
それにしても男子トイレの掃除を女性がするのは見たことあるけど女子トイレの掃除を男性がしてるのって聞かないな。あるのかな?
「きゃあああああ」
なんだ!?
「あ、いや、すいません。ども」
「…………」
空いた口が閉じないとはこういうことを言うのだろうか。姿はまだ見えないけど声だけでそこにいるのが誰かわかる。俺の口は閉じる気配を見せない。
「驚かせてしまいましたごめんなさい。決して怪しい者ではないですから。はい」
「あ、こちらこそ驚いてしまって申し訳ありません。その…そこからどいてもらっても…」
いや、あなたは悪くないですよ清掃員さん。悪いのはそこのゴミ野郎ですから。
用具入れの中に入っていた人物は外に出るように言われて姿を現そうとする。
もともとあまり尿意がなかったせいで既に済ました俺は出てくる人物よりもはやく入口付近の手洗い場で手を洗い外に出る振りをして待つ。
「すいませんでした本当に。では失礼します……それにしても雪人にバレなかったか。あいつ思った以上に鈍すぎるんじゃ…」
「誰が鈍いって?」
「うわっ!!」
「アホかお前は!てかなんでここにいるんだよ!」
俺から隠れてたってことは跡をつけてきたのか?
「あーいやー…なんというかその…な?」
「お前一人か?」
「そ、そりゃ俺についてくる女子なんて他にいねぇし」
誰の他に、なんてことは聞かなくてもわかる。
「なるほど。皐月とクノア、それに緋音もいるのか」
「なんでわかるんだよ!」
「何年お前といると思ってんだよアホが」
出口の方へと歩いていくとそこには予想通り三人がいた。
「あんた…アホね」
「何が?」
「どうせ掃除用具入れにでも入ってたんでしょ?」
皐月鋭いな。なんでわかったんだ?
「なんでわかったんだよ!俺がそこに隠れたって」
「いや、女子トイレにも清掃員の人来たから、そっちから女性の声聞こえたしもしかしてと思って」
素晴らしい推測だ。
完全に事実と一致している。
しかし今はそんなことどうでもいい。
「なんでお前らここにいるかは梨乃のところ戻ったら話してもらうからな」
「学校からつけてきたのかよ…」
「私たち今まで気づかなかったよ。すごいね悠斗君」
声にどこか鋭いものを感じるのは俺だけか?
梨乃さっきまでもっとゆるふわな感じだったと思うんだが…
「あ、悠斗君。ちょっとこっち来て…」
「なんだ?」
「何してんだ梨乃は?」
「さぁ?」
「わからないね」
「謎ですわ」
いつもお馴染み、俺から連続女子三連鎖。
お馴染みじゃない?黙っとけ!
「それにしてもごめんね雪人くん、なんか悪かったね」
「何がだ?」
悠斗の企みらしいし、なんで緋音が謝るのかわからない。
「いや、なんか尾行みたいなことして。される方はあんまり気分よくないよね」
あぁなるほど。そんなことか。
「別にいいよ。俺はなんとも思ってないし。梨乃がいいって言ったらいいんじゃないか?それより梨乃は何話してるんだ?」
「なんか雰囲気が刺々しいね」
「悠斗君。私すごく怒ってるよ」
「えっ…」
「せっかく雪人君と二人きりでデート気分味わってたのに」
「それに関しては本当にすまないと思っている」
「信じられないよ。ありえないありえない。こんなチャンスもうないかもしれないのに」
うわぁ…梨乃怒ってるなぁ。これ本気だ…
どうしようか…どうすれば許してもらえるか…あっ!!
「すまん梨乃、これ送ってやるから許してくれ」
ポケットからスマホを取り出し少し操作した後スマホの画面を梨乃へと向ける。
「なに?………ボフン」
え!?今音なったぞ?梨乃音なったぞ?
ボフンって!
「こ、これ…今日の朝の?」
顔を真っ赤にして震える声で言ってくる。
「あぁそうだ。多分俺しか見てない」
「………わかった。許すよ。その代わり私に送った後その写真消すから」
「許してもらうためには仕方ない…ほら、送ったぞ」
「……うん。じゃあ消すからスマホ貸してね」
「はいよ」
…………
「はい、ありがと」
「どういたしまして」
「お、戻ってきた…って梨乃顔赤すぎないか?」
真っ赤っかにして完全なりんごと化している。
「だ、大丈夫だよ!それより昼ごはん食べようよ!あっ、荷物持ちは雪人君に変わって悠斗君がしてくれるらしいよ」
「えっ!?」
お、悠斗が荷物持ち?それはラッキーだな。
「そうだな、食べようか。悠斗頑張ってくれよ。それなかなかしんどいからな」
「それじゃフードコートでいいよね、みんな?」
「あぁ」
「私は」
「私も」
「私も構いませんわ」
またまたお馴染みの俺からの女子三連鎖。
時刻は一時少し前。
「時間的に混んでそうだな」
「そうだね。休日だしねー。でも前来た時は奥の方空いてたよ」
「緋音ちゃんってよくここ来るの?」
「いや、そんなにだよー」
「おい、待ってくれよ!一人でこの荷物ってきついだろ!おーい!」
後ろからうるさいなぁ…
「俺今までそれ一人で持ってたから一人でもいけるからな。早くしろよ」
せめて罰を受けろ悠斗。
「まじかよ…助けなしかよおい…」
俺らの中で四苦八苦してる悠斗を助けようとする人は誰もいなかった。
梨乃回続きです!
本当はデートの約束は普通に来週の土曜日にしようと思ってたんですがあまりにも二日目書くことがなさすぎたので急遽変更しました。
そのせいで昨日投稿する予定だったんですけど今日になりました。
結局四連休だったから3本は投稿しようとしてたのに2本になっちゃいました。
ごめんなさい。
あ、それとブックマークしてくれてる方ありがとうございます。少しずつだけど増えてきていてすごく嬉しいです!
(さっき見たら一人減ってたなんて言わない)
ではまた次回でお会いしましょう!




