お買い物デートその1
十時七分、学校に着いた。
既に運動場の方は盛り上がっていて校門まで歓声が聞こえる。
黄色い歓声。黄色くない歓声。
「盛り上がってるな…」
「さすがだねー」
これが運動部…恐ろしいな。
「悠斗達はどこにいるんだろうな」
当たり前のように悠斗と合流しようとする。
「そうだね、多分運動場でしょ。今日はメインが運動場だし」
「だよな」
と言っても…この大きさでこの大人数の中探すのは大変すぎないか…
「探すのめんどくさいな」
「私はこのままでもいいけど」
お、梨乃も同じ気持ちだったか。
「なら今日は二人で回るか」
「うん!」
やった!なんか今日はツイてる!
「どこ行く?今日はこの運動場以外ほとんど何も無いぞ」
そう。本当に何も無い。屋台くらいだ。
「そうだね…私こういうのあんまり興味ないしなぁ」
「俺もだ」
「なら軽く屋台見回る?」
「そうだな。でも朝食べてあんまり時間たってないしな…そうだ梨乃、今日秋服買いに行かないか?」
「え、今日!?」
「そう、今日!どうせ暇なんだったら行っとこうぜ」
「んー…そうだね、今日行こっか。じゃあ家まで来てくれる?」
ん?なんで梨乃の家に?
………あ、お金取りに行くのか!
「いいぞ。じゃあ帰ろうか」
「来て三分も経ってないね」
笑顔のまま話しかけてくる。
「ほんとな。学校滞在時間最短記録更新だ」
「私もだよぉ」
こう見るとほんと梨乃と琴瑚って似てるなぁ。
笑うタイミングといい口調といいゆるふわ感といい。
「梨乃って妹みたいだよなぁ」
「えっ!?」
俺の台詞に驚き口を丸くしている。
そりゃいきなりそんな事言われたら驚くか。
「あ、いや、琴瑚に似てるなぁって思ってさ」
「似てるかなぁ?ってそれって褒められてるの?」
あっ、でも今朝も雪人君は琴瑚ちゃんのことすごく大事にしてる様だったし…
そう考えると喜んでいいのかな?
「あぁ、すごい褒め言葉だぞ。琴瑚と似ているなんて褒め言葉は俺の中で他に無いレベルだ」
「そこまでの褒め言葉なんだ…」
あれ、梨乃なんかちょっと引いてないか?
気のせいだよな。
そんな些細なことを言いながら駅まで歩く。
なんで駅までかって?俺と梨乃は幼馴染みなんだから…梨乃は自宅通いだから電車に乗るのは当たり前だろ?
「なんかこの時間にここに戻ってくるって不思議な気分」
「まぁ普通はこの時間は学校だもんな。遅刻したとしても戻ってくることはないしな」
梨乃の最寄り駅。細かいことを言えば俺の元最寄り駅。
時間が時間なので人はあまりいないが通学時間は人で溢れている。
「梨乃の家行くの久々だなぁ…五年ぶりくらいか?」
「そんなくらいかな?もう忘れちゃったよ」
「そりゃだいぶ前だもんな。忘れるよな」
「そういえば雪人君、あのこと覚えてる?」
「あのことって?」
「ほら中学生の頃さ…」
「ふふふ…我と古くから血を結びし者よ。我に二つの果実を抱かせよ!」
「ん?どうゆうこと?雪人君」
「分からぬか…仕方あるまい。もう少し簡単に言ってやろう。成熟期真っ盛りのその二つのものを、我に触れさせよ!」
「…つまり?」
「胸を触らせろと言っているのだ!」
「えっ…………………………」
「ふふふ…驚くのは至極当然のこと。しかし梨乃よ。これには重要な意味がある」
「………」
「つまり、胸を触ることで我が新たな境地にたどり着けるということだ!…ん?どうした梨乃よ、我が呼びかけに答えよ!」
「………」
「ふむ。何も答えぬということは構わないということだな」
「雪人君のえっち!!」
「………」
過去の俺よ…犯罪行為だぞ…
「雪人君?」
「あぁ、すまない…昔の俺何してたんだろってな…」
「あれでしょ?中二病ってやつ!」
「なんだ…直接そう言われると恥ずかしいな…」
「あ、それって黒歴史ってやつ!」
「お願いだ、忘れてくれ…」
「それはそうとさ、どうしてあの時胸触りたかったの?結構気になってたんだけど」
おおおおおいそれを聞くか!?
中学生の男子が胸を触りたい理由なんて決まっているだろ!
男だからだ!!
でもまぁそんなこと言えないしなぁ…
適当に誤魔化すか。
「それはあれだ、その時読んだ本で強化されると書いてあったからだ」
…嘘はついてない。
その時読んだ(エロ)本で(ある部分が)強化される、って本当に書いてあったんだ!
「ふーん…胸触ると強化されるってなんかよくわからないや」
「中二病なんて他人にはよくわからないものだろ」
「そーいうものなの?」
「そういうものだよ」
「そうなんだ」
納得してくれたところでとりあえず梨乃に注意しておこう。
「なぁ梨乃、あんまり路上で胸触るなんて言わない方がいいぞ」
さっきからすれ違う人がこっちを見てくる。
さすがに俺もこんなところで変態扱いされたくないし梨乃も痴女扱いされたくはないだろう。
なんたってここは地元だからな。
「えっ!?あっ!!」
梨乃の顔がどんどんりんごに…りんご色になっていく。
さすがに俺も率直すぎたか…
プシュウウウウウ
今の音なんだ!?確実に聞こえたぞ!?
「あ、ちょっと待っててすぐに用意してくるからじゃあ!」
超早口でそれだけ言うと柏崎と書いてある表札の家に入っていった。
梨乃の家…懐かしいな。
梨乃を待つ間昔のことでも思い出していようかな…
だめだ…中二病だった頃のことしか思い出せない!
俺の中でどれだけ中二病の思い出が占めているんだよ濃すぎるだろ!
「おまたせ雪人君」
家から出てきた梨乃の姿が制服のままなら
「じゃあ行こうか」
なんて言えたんだけど…
現れた梨乃が私服を着ている限り、しかもすごく似合っていたらさすがにスルーする訳には行かない。
「かわいいな。似合ってるじゃん」
「えへへ…ありがと」
薄い橙色のワンピースに白くて薄いカーディガン。ヒールも無理をせずにそこまで高くない。
自分が似合うものを限界まで着こなしている、そんな感じだ。
「それじゃ行こうか」
「うん!」
「いやー着いたねー」
「うん…そうだな、今日土曜だったな…」
電車乗ってる時に少し思ったよ、人多いって。
でも普段はこの時間に電車とか乗らないからこれが普通なのかなって。
違うじゃん!今日休日だから人多いんだ…
「そうだね。私も忘れてたよ」
「まぁとりあえず気を取り直して買い物するか。なんか好きな店とかあるのか?」
女子って結構店とかに拘ってそうだしな。
「うんうん、特にないよ私は」
「そうなのか、ならとりあえず回って色々見ようか」
「そうだね。じゃあしゅっぱーつ!」
テンション高げに右手を掲げている。
この人の多さだ。俺も気合いをいれるか…!
今回は今までで一番短いですね!
内容は…二日目は梨乃回ですね。
それ以上は言うことないですかね
あ、そういえば最近脱出ゲームにはまりました!
楽しいですね、脱出ゲーム。
どうでもいいですね。
はい
ではまた次回で!