文化祭一日目おまけその3
「そんな攻撃当たるかよっ!」
「これが当たるんだよなぁ」
「なっ!?……また負けた」
「まぁそう落ち込むなよ。俺ん家にあるゲームなんだし」
ここまで通算173戦173勝0敗。圧倒的すぎる結果だ。
「でももう170戦超えてるんだぞ?一回くらい勝ててもおかしくないだろ…」
「あんたたち…それ170回以上もしてるの?よく飽きないわね」
発言したのは少し呆れた顔をした皐月だ。
「雪人に勝てたらやめるつもりなんだけど勝てないんだよ!」
「それじゃ琴瑚とやってみるか?」
「おいおい雪人、流石に俺も女の子に負けるほど弱くはないぜ?」
「まぁやってみろって。琴瑚、洗い物は俺が代わりにするから三回くらい悠斗の相手をしてやってくれ」
キッチンの流し台でお皿を洗っている琴瑚へと声をかける。
「いいけど……大丈夫かな…」
何を心配しているかわからないがとりあえず頭を撫でて大丈夫だよ、と言ってやる。
「さぁ琴瑚ちゃん!かかってこい!」
コントローラーを手にすると琴瑚は俺と同じキャラを選択する。
「雪人と同じキャラか…それなら雪人で攻撃パターンはほとんど知ってるからな、悪いが琴瑚ちゃん、本気で行かせてもらうよ」
「えぇ……少しは手加減してください〜…」
ふふふ……悠斗め、ボコボコにされるがいい!
女の子はゲームしないとか女の子はゲーム下手だとか、そういう先入観は無くしておくべきだ。
「えっ!ちょっ!?えっ!………なぁ雪人」
「なんだ?」
「琴瑚ちゃん超つえぇじゃん!」
「知ってるけど?」
「なんでこんなに強いんだ…!?」
「琴瑚が俺の家に二日に一回来てることを考えたら当たり前だろ」
そう。二日に一回来てるんだ。
話をして時間をつぶすにもネタに限界があるだろう。
そういう時は二人でゲームをしたりしてる。
つまり…琴瑚は悠斗なんかよりもよっぽどこのゲームに詳しい!
「そんな…じゃあまさか雪人との対戦回数は…」
「お前の四倍くらいはあるな」
「四倍!?で、雪人に勝ったことは?」
「三割くらいで俺が負ける」
「まじかよ……そりゃ俺じゃ敵うはずないわ…」
やたらと落ち込む悠斗。
見ていてなかなかに滑稽なもんだ。
「それにしてもあんたたち、夕方はあんなにしんどそうにしてたのに今は元気って謎ね」
言われてみればそうだな…
やっぱり家って素晴らしいってことなのかな。
「俺からしたら昼間あれだけ元気に歩き回ってたのに全然疲れてなさそうな皐月たちの方が謎なんだが…」
「女の子ってそういうもんなんだよ雪人君」
「謎だ…」
「女の子は謎が多い方が魅力的なんだよ」
「そうなのか?」
「うん」
なんだろう…緋音に言われると本当にそんな気がしてくる。
なんか緋音って説得力あるな。
……そうか!緋音が謎だからか!
緋音(の影が薄いの)が謎だからか!
「なんか雪人君失礼なこと思ってそう」
鋭いなっ!?
「いやいや、そんなことないから!全然思ってないから!な、悠斗!」
「いや、俺に聞かれても知らねぇよ」
くそっ、使えないなこいつは!
「そういや他の女子はどこ行ったんだ?」
「お前がゲームしてる間にコンビニ行ったよ。泊まりだからお菓子欲しいんだとさ」
まぁお泊まりにお菓子は必要だろう。女子なら。
男子だけならゲームさえあれば余裕なんだけどな。
「ふーん。皐月と鶴海と琴瑚ちゃんは行かなかったんだ」
「うん。私は片付けがあったから」
「私も片付け手伝ってたしね」
「…私は雪人君との話が盛り上がってたから」
あっ、これ多分緋音ただめんどくさかっただけだ…
そんな感じがする。
やっぱり緋音ってなんかよくわからないけどわかるな。
もしかして緋音って案外めんどくさがりなのかもな。
「なるほどな。それより雪人、違うゲームで勝負しようぜ!」
こいつ…哀れだな…
負けても悔しいだけなのにどうしてまた負けようとするんだ?
「いいぞ、何する?お前の好きなやつでいいぞ」
「よっしゃ!じゃあこれな!」
「あっ、そうだ雪人君。お風呂借りてもいいかな?」
「ん?あぁいいぞ」
「よっしゃああぁ次こそ勝つ!」
「また負けた…もう無理」
どこまで凹んでんだよこいつ。
「弱すぎな」
いや、雪人が強すぎるんだよ!
「でもお前琴瑚にも完敗だったじゃん」
「…九条家が強すぎるんだよ!」
「クノアにも負けてたじゃん」
そう。
買い物から帰ってきたクノアが
「あっ、私そのゲームやったことありますわ」
と言った時に悠斗が
「なら勝負しようぜ!ガチで!」
と言ってその後ボコボコにされてた。
「クノアは経験者じゃん!」
「お前もだろ」
「俺が…経験者だと?」
「あぁ」
「俺のどこが経験者なんだよ!」
「同じ相手と170戦以上してるやつのどこが経験者じゃないんだよ!」
「くっ…」
アホか?こいつは。
どれだけ自分が弱いことを認めたくないんだよ…
「まぁまぁ、そんなに落ち込むなよ。そこの女子会にでも混ざってろよ」
俺と琴瑚がテーブルに、そしてその横のちゃぶ台…らしきものに女子四人。
俺の方は…そうだな、おじいちゃん夫婦の会話、女子の方は女子会をそれぞれ開いている。
なんで俺の方がおじいちゃん夫婦の会話なのかって?
そりゃお茶飲みながらのんびり話してるからだよ。
「……そうする」
ゲームを終了して女子会に混ざろうとする悠斗。
しかし俺は思っていた。
おそらく皐月あたりに来るなっ!って言われるだろうと。
だからこそ驚いた。
悠斗が普通に女子会に混ざっていったことに。
「俺、風呂入ってくるわ」
「いってらっしゃーい」
「琴瑚も女子会に混ざったらどうだ?」
「いえいえ、琴子にはまだ早そうだから遠慮しとくよ」
「そっか」
「あ、お湯出るとき抜いといて」
「りょーかい」
女子会のおかげでワイワイとしたリビングから出る。
何か忘れてる気がするがまぁいいや。
自分の部屋から着替えを取り出しお風呂場へのドアを開ける。
「えっ?」
「…………」
そこには覆うものが何も無い、素の緋音がいた。
顔だけこちらで背中を向けていたが緋音の前にある鏡によって二つの果実も完全に露になっていた。
『お風呂借りてもいいかな?』
緋音の言葉が思い出される。
俺の全てが少し止まったような気がした。
我を取り戻しすぐに出ていこうとする。
が、ここで焦ったのが良くなかった…
床がフローリングで、しかも少し湿っていて…で、滑って緋音の方へ一目散。
……これなんてエロゲもしくはギャルゲなのかな…
だがここで諦めなかった。
そのままこけるでなく頑張った。
けど頑張ったのにフローリングで滑って…
「緋音どけて!」
期待はしなかった。
多分ぶつかるんだろうな…
そして……
あれっ…おっ………
バシャーン
俺はお湯の張った湯船へと突っ込んでいた。
慌てて体を起こして緋音の方を見る。
すでにバスタオルで体を覆っている緋音はクスクスと笑っている。
「いやー危なかったね雪人君。もうちょっとでドア壊すところだったよ」
何が起きたか理解出来ない俺は緋音に説明を求める。
「何が起きたんだ…?」
「大したことは起きてないよ?雪人君がどけろって言うからどけたんだけどそのままだとドアまっしぐらだったからドアを押したんだよ。ドアが半開きの状態で良かったよ」
………あの一瞬の間にそんなことしてたのか。
緋音。恐るべし…。
「それにしてもお湯張ってあって良かったね。お湯なかったらさすがに危ないから私が雪人君とぶつからないといけなかったし」
そうだな…お湯を張っていてくれてた琴瑚に感謝しよう。ありがとう、琴瑚。
ってそうじゃなくて!
「緋音、まさかあの一瞬でそこまで考えて?」
「そうだけど?」
もしかして緋音って相当頭切れるんじゃないか?
「そ、そうか…まぁ助かったよ」
「それより雪人君変態だね。覗きなんて」
「覗きに来たんじゃない!!忘れてただけだ!!」
本当に忘れていたんだ…!
「ふーん。でもまぁ裸見られちゃった訳だしね。どうしよ、これから雪人君のことを変態君とでも呼ぶことにしようかな」
「やめてくれ」
湯船から出て洗い場に膝をつき土下座。
土下座というものはそんなやすやすとするものじゃないと言う人もいるが、そんなやすやすとされるものじゃないものがここまで常用語になるのもおかしい。
よって土下座は昔からよくされてきたのだ。
これが俺の持論だ。
「いやまぁ軽い冗談だからいいんだけど」
「よかった……それにしても緋音、裸見られたのに普通過ぎないか?いや、俺が言うのはおかしいけど」
「まぁもう起きたことだしね。仕方ないよ」
「なんていう精神力なんだ…もしくはビッチ…」
「なんか言った?変態君」
しまった!言葉に出ていたか!
このままだと変態君と呼ばれ続ける可能性が…
それはまずい
「ビッチなんて言ってないぞ!」
「その言われようはなんというかひどいよね。覗いた雪人君側がそういう風に言われるならともかく、見られた側がそんな風に言われるなんて」
「申し訳ございません」
再び土下座。
「まぁあんまり気にしてないからいいよ」
「心広いな。皐月なら確実に足が俺の頬に飛び込んできてるところなのに…」
「そんなことしたら私の足が痛くなるから」
「理由がかわいいな」
小学生の女子みたいな理由じゃないか。
「それにしてもいわゆるラッキースケベが起こるなんて…」
「雪人君が私がお風呂に入ってることを覚えてたらただのスケベだったんだけどね」
「覚えてたらスケベにすらなってないから!ここにいないから!」
いや、これラッキースケベじゃなくないか?
普通ラッキースケベってあのまま二人でこけて俺が緋音の胸を揉んでいるはずだ…
つまりこれはラッキースケベではない!
そしたら何になるんだろう…と考えたら末にたどり着いた結論。
ただの覗き。
だめだ…もう少し賢くなったらもう一回考えることにしよう。
「それにしても他の人だった方が雪人君ももっと慌てたかもなのにね」
「ん?」
「ほら、5月ちゃんとか梨乃とかの方が見る甲斐があったかもってって」
なに言ってんだ?
俺に死ねと?
「いやいや、むしろ緋音でよかったよ。他の人なら俺の命に関わるから」
「でも裸を見るならスタイルのいい人の方がいいと思うけどね」
「緋音も十分スタイルいいじゃん。出るとこはそこそこ出てて引っ込むところはそこそこ引っ込んでいて、そしてまた出るとこはそこそこ出てるし」
「言ってて恥ずかしくなかった?」
「恥ずかしかったけど途中でやめるともっと恥ずかしくなりそうだったから言い切った」
「お疲れ様」
「いえいえ」
「まぁとりあえずお風呂入りなよ。そのために来たんでしょ?」
「そうだな、そうするよ。ってことでドア閉めるから着替え終わったら言ってくれ」
俺の言葉で今更自分の服装に気が付いたようだった。
「私バスタオル一枚だったんだね。ごめんごめん。着替え終わったら言うよ」
そう言うとドアを閉める。
服びっちゃびちゃだなぁ…
明日までに乾くかな…ズボン。
そんな心配をしながら緋音の着替えを待つ。
「もういいよ。私もうリビングの方行ってるね」
「おう」
「あれ?もう寝たのか?」
「疲れてたみたいね。五分ほど前からパタパターって」
見渡すと寝てる人に服をかけている菫さんしか起きている人はいない。
「それじゃ起きてるのは菫さんだけ?」
「そうね。みんなだいぶ疲れてたんじゃない?」
「それなら菫さんも疲れてるでしょ」
「私は慣れてるしね。書類とかに目を通す必要があんまりないからむしろいつもよりも疲れてないかもだし」
なんだこの人!凄まじいな…チートかよ!
「まぁ私ももう寝ようと思ってたけどね。明日早いし」
「そうなんだ。何時?」
「五時半起きね。多分勝手に水道借りてるけど許してね」
「それくらいいいよ。それにしてもさっきまで女子会してたのが嘘みたいだな」
「確かにそうね」
てか緋音すごいな。風呂上がってあんまりたってないのによく寝れるな。
俺風呂上り一時間は寝られない。
「それじゃ私寝るわね、おやすみなさい九条君」
「あぁ、おやすみ」
どうしよう。一人だとあんまりすることないな…
さすがにエロゲはできないしな…
イカで色塗りでもするか。
悠斗がやってたからカンストから下がってるだろうしな。
テレビにヘッドフォンを差し込み音が漏れないようにしてゲームを起動…しようとした時にスマホが震える。
「誰だ?……げっ…」
少しの間電話にでるかどうかを迷った末に電話にでる。
「どうしたんですか綺華さん」
『あら、てっきりでてくれないと思ったのに』
「ちょっと迷いましたよ」
『で、楽しんでる?』
「みんな寝ましたよ」
『あらあら、よほど激しいことしたのね』
「してませんよ」
『何かラッキースケベみたいなことあった?』
「……なかったですよそんなの」
『ふーん。ならまた今度教えてね。じゃあねー』
聞こうと思った瞬間に電話が切れる。
なんであったってわかるんだよ…
まぁいいや。
眠たくなるまで色塗りしよ。
やっと一日目が終わりました!
前も言ったけど二日目はすぐに終わると思います!
思ったんですけど二次元の主人公ってなんでいとも容易く女の子を自分の家に呼べるんですかね?
現実だったら
「はっ?」
って言われて終わりですよね
まぁいいか。
とりあえず次回は明後日~明明後日くらいだと思います!
それではまた次の話で!