文化祭一日目おまけその2
「じゃあねー」
そう言いながら二つ隣の家に入っていく。
すごく疲れた…
理由はもう言わなくてもわかるだろ?
スーパーからこのマンションまで歩いて15分とだけは言っておくことにするよ。
ドアノブに手を伸ばしドアを開ける。
そこには既に琴瑚の靴と共にもう一つ靴があった。
「早いな…悠斗か?」
靴を脱ぎリビングへと入っていく。
「おっ、もう買い物終わったのか?」
やはり悠斗か。
「あぁ。それより悠斗、お前早すぎるだろ」
「そうか?」
「そんなに楽しみだったのか」
「当たり前だろ!お泊まりセット持参だぞ!」
「お前今日泊まる気か!?」
「そうだが…なにか?」
こいつ…何がなにか?、だよ。せめて俺に連絡ぐらい入れろよ…
「まぁいい。どうせ琴瑚だけも琴瑚と悠斗でも大して変わらないからな」
「いやいや、何言ってんだよ。全員に決まってるだろ?」
「は?」
「だから、全員だって」
人様の家でイカの色塗りゲームをしながら何を言ってやがるこいつは。
ついに頭がおかしくなったか…
「何を言ってんだ?」
「女の子達にもお泊まりセット持参って言っておいた」
「いやいやいやいや!無理だろ!そもそも男子の家に女子は泊まらないだろ!」
「でも俺がお泊まりセット持参なぁーって言ったら全員から了解メール来たぞ」
おいおい…どんだけゆるゆるなんだよ…
男子2女子6なんて…
『大乱交じゃない!』
ああもう!なんでこんな日に限って綺華さんと会ってしまったんだ…
「悠斗…せめて俺に許可をとってからにしろ」
「はいはーい」
「はぁ…」
ガチャ…
「あ、お兄ちゃん帰ってたんだ!」
「おう琴瑚、ただいま」
「おかえり!お買い物してきてくれたの?」
「ついでだったからな」
「ありがと!それなら早速作り始めようよ!」
さっきまでシャワーでもかかっていたのだろうか?
髪の毛が湿っていて顔も少し赤い。
「…風呂入ってたのか?」
「うん。みんなが来てからだと入る忙しそうだから先にね。どうせお兄ちゃん待ってる間暇だったし」
「そうか。じゃあ鞄置いてくるからちょっと待っていてくれ」
「はーい!」
リビングを出て自分の部屋へと入る。
鞄を置きまたリビングへと戻る。
その間約13秒。
しかしそのわずか13秒の間に……
ガチャ
……なにも変わってなかった。
強いて言うなら琴瑚がエプロンを着けていたくらいか。
「なぁ悠斗、誰か来たらお前が出てくれないか?」
「おっけー任せろ!」
「じゃあ琴瑚、作ろうか」
「うん!何作る?材料的にある程度はわかるけど…」
「だろうな。わかりやすいだろ?この材料」
「うん!まぁ大人数だし作るものって結構限られるもんね」
「そういうこと。さすが琴瑚だな」
頭を撫でてやる。
幸せそうな顔しやがって…かわいいなぁ。
「じゃあ作りますか」
「はーい」
ガチャ
「あ、皐月ちゃん!いらっしゃい!」
「いらっしゃいって…まるで梨乃の家みたいよ…」
「そう?」
「うん。てかみんなもう来てるの?」
「うん!あとは会長さんだけだよ!」
「はやいねみんな」
「皐月ちゃんが遅いんだよぅ」
「私のクラス終わるの遅かったのよ…」
「まぁいいや!とりあえず上がって上がって!」
「…ほんと、梨乃の家みたいに言うね」
「おっ、皐月も来たか!タイミング一番いいな!」
「お邪魔します雪人、なんで?」
「今ちょうど夜ご飯できたところだから」
雪人の手にはまだ出来て間もないであろう唐揚げがたくさん乗せられた皿が。
「なるほどね。それじゃ、あとは会長さんを待つだけってことね」
「いや、先に食べ始めていてくれ。どうやら菫さん道に迷ってるらしいから迎えに行ってくる。どうせ待ってろって言っても悠斗が我慢出来ないだろうしな」
会長って結構方向音痴なのかな…?
まぁいっか。
「なるほどね。わかった。気をつけてね」
「あぁ。俺達の分残しといてくれよ!」
「わかってるわよ。悠斗はきちんと私が見とくから」
「助かる」
スマホを持って家から出ていく雪人を見送る。
ふふふ…手料理食べれるなんて恋人みたい…!
まぁ…
「あ、皐月ちゃん!冷めないうちに食べようよ!!」
「そうですわ皐月さん!急いでくださいまし!」
こんなに人がいたらそんな気分にもなれないけど…
てか食べる気満々なの悠斗だけじゃないし…
テーブルを囲んでいる五人の中に紛れて座る。
左には琴瑚ちゃん、右には梨乃。
二人のワイワイと騒ぐ妹的存在に囲まれて少し気持ちが盛り上がる。
…こういうのもいいかもね。
「あっ、いたいた…菫さん」
こちらの声に気付いたようだ。
近寄る前にこちらに軽く走って寄ってくる。
「ごめんなさいね九条君。私結構方向音痴みたい」
菫さんの弱点発見か?
そんなことを思いつつ
「いいよ、ここら辺ちょっとややこしいし」
「よね?ここちょっとややこしいよね」
「うん。俺の家に迷わず来れたことあるのは悠斗だけだからな」
事実、琴瑚も皐月も梨乃も初めての時は俺が迎えに行った。
その時は皐月と梨乃二人同時だったから二人で力を合わしても辿り着けなかったということになる。
クノアは三人と一緒に来たから迷わなかったがおそらく一人なら迷っただろう。
「よかった…じゃあやっぱ方向音痴じゃないかも」
「いや、さすがにここまでだと方向音痴だと思う」
「そ、そう?」
だってここ、学校から見て俺のマンションと逆方向だぞ?
さすがにこれは方向音痴と言わざるを得ない。
「とにかく帰ろう。もうご飯出来てるし」
「あら、そうなの?」
「あぁ。みんな食べてると思うし…残しといてとは言ったけどやっぱ熱いうちに食べたいし」
「それはそうね。なら走りましょうか」
「そうだね!じゃあ走りますか!」
菫さんの左手首を掴んで走り始める。
「えっ!?」
「どうかした?」
走りながら尋ねる。
「いや……なんでもないわ」
「そう?」
夕日が沈みかけていて赤かったせいか菫さんの顔が少し赤かった気がした。
「着いた……ハァ…ハァ…」
「ここが九条君のマンションね。もう迷わないわ」
え……なんで菫さん全然疲れてないの?
俺めっちゃ疲れてるんだけど…
最初は俺が引っ張ってたはずなのに途中から菫さんが前走ってたし…
俺、右左真っ直ぐって言ってただけでほぼ引っ張られてたし…
「それにしても九条君、体力なさすぎない?」
「逆に……菫さん…体力…多すぎない?」
「私は普通よ?」
なるほど…これがいわゆる完璧ということか…
あらゆる意味で賢いとは知っていたけど、運動もこれほどできるとは…
そりゃファンも多いよな…
「まぁ…いいや。とりあえず家に帰ろう」
「エレベーターちょうど来てるみたいね」
「お邪魔しまーす」
「改めて靴の量見るとすごいな…」
「まぁマンションに八人も来たらこんなもんでしょ」
まぁそうなんだろうけど…うちに八人来たの初めてだから新鮮だ。
「リビングでいいのよね?」
「うん。俺ちょっとシャワーかかってくるからみんなに言っといて」
「わかったけど…ご飯冷めるよ?」
「いいよ、汗かいてたら気持ち悪いし」
リビングに向かう少女とは別にお風呂場へと向かう。
服を脱ぎ洗濯かごに入れるとお風呂場のドアを開けお風呂場に入る。
琴瑚が入っていたからか、湯船にはお湯が張ってある。
今日はシャワーだけでいいか…腹減ったし…
とりあえず頭だけ洗って、ご飯の後にもう一回入って体洗おう。
それにしてもなんで菫さん汗一つかいてないんだ?怪人かなにかかよ…
シャンプーで髪を泡立ている間に色々な考えが頭をよぎる。
………あれ……緋音ってもう来てたっけ…?
…
……
………
あいつまだ来てなくないか!?
慌ててシャワーで泡を流しバスタオルで体の水分を取るとバスタオルを体に巻きお風呂場から出てリビングへとかける。
「緋音ってもう来てる!?」
突然の音にご飯を食べていた人達は驚く。
「えっ…何?雪人君」
そこにはちゃんと緋音の姿があった。
「あ、いや、何でもない…」
「それより雪人君。せめてバスタオルじゃなくて服を着たら?」
「えっ?」
見渡すと悠斗と緋音以外は恥ずかしそうに顔を赤らめていた。
「あっ……ごめんなさい!!」
それだけ言うとリビングから出てお風呂場へと一直線で戻っていった。
危ない…
ほんとに危ない…
綺華さんの言う通りの乱交パーティーまっしぐらじゃないか今のは…
エロゲなら確実に進展してたぞ…
服を着てからお風呂場を出る。
そしてリビングへ…
ご飯はまだだいぶ残っていた。
「これ…作りすぎたな…」
「確かに…ちょっと多いかもね」
皐月が苦笑いで言う。
「お兄ちゃんと作るの久しぶりだったから張り切り過ぎちゃったかも…」
「何言ってんだよ雪人、皐月、琴瑚ちゃん!これくらい全然大丈夫だよ!むしろおかわり欲しいくらいだぜ!」
「お前…どれだけ食うんだ?」
「夜ならラーメン四人前までは余裕だ!」
「化け物かよ…けどまぁ残らないだけましか」
悠斗と琴瑚の間に座り食事の席に加わる。
やっと食事につける。
「いただきます」
なんだろう…今日疲れていたからかな?
料理がいつもより美味しく感じる。
ワイワイとしたこの感じ…いいなぁ…
そんな当たり前のことを改めて認識した。
最近寒くなりましたね。
皆さん風邪をひかないように気をつけてくださいね!
さて、
久々の1日ペースの投稿です!!
次の投稿は明後日かなと思います!
明日は多分無理ですね。
文化祭一日目は次で終了です!
ちょっと長くなりましたけど多分二日目はすごく短いと思います!
それではまた次の話で!