文化祭一日目その1
『なぁ雪人……文化祭は四日間あるだろ?』
「それがどうした?」
『一日毎に大きいイベントが一つずつあるのは知ってるか?』
「あぁ、一応知ってるぞ。確か一日目が料理コンテストで二日目が……」
『部活対抗障害物競争な。まぁこれは体育祭でもあるしそっちの方が大きいんだけど。』
「そういえばそんなんだったな。で、三日目が劇祭だろ?」
『そう。そして四日目がコスプレコンテスト。これは前の年までは何もなかったらしくて今年からのやつらしい』
「それが?」
『まぁそんなことはどうでもよくてだな。明日の料理コンテスト、皐月と梨乃が出ることになってるんだよ』
皐月といえばあの時……皐月大丈夫だったのか?
あれ以来会ってないし緋音曰く大丈夫らしいけど…
でもまぁ料理コンテストに出るくらいだし大丈夫なのかもな。
「へー、それで?」
『その料理コンテストの参加資格人数が四人らしいんだよ、しかも男女混合で』
「で?」
『二人ともそのこと知らなくてさ、募集に応募したら運良く当選したらしくて。そして今日、四人で男女混合ということを知ったらしい』
「で?」
『でもせっかく当選したんだから参加しないもったいないだろ?』
「もういい、要件だけ言え」
『出てくれだってさ』
「嫌」
『なんで?』
「めんどいから」
『そう言わずさ』
「嫌」
『頼むって』
「嫌」
『お願いだって!』
「もういい分かった出るよ出るからもう」
とりあえず七分続いたやり取りを終わらせたかった。
『いやぁ、助かったよ。出てくれなかったら俺の立場が危うかったからな』
「どうゆうことだ?」
『まぁそれは今はいいじゃないか』
「それで、あと一人は誰だ?」
『それは皐月が呼んでくれてるらしい』
「なるほどな。わかったよ」
『じゃあな。お互い頑張ろうな』
「あぁ」
そこで電話が切れる。
ん?お互い?
文化祭の日はいつもより早くから学校が開いている。いや、この言い方は少しおかしいか。
この時期は文化祭前日から文化祭三日目までは学校に泊まることが出来る。つまり24時間営業だ。いや、営業はしてないけど。
つまりだ、誰でもこの時期はいつの時間にでも学校に入ることが出来る。
ただそれは私立ならではのセキュリティがあるからだ。
この時期は不審者が入ってこないように警備員を雇っている。警備員は40人近くが雇われておりここ20年間不審者などが校内に侵入した事例はない、らしい。
まぁそれで朝早くから学校に行く者もいればいつも通りに行く者もいる。
俺は前者だ。
というのも昨日の悠斗からの電話のせいなんだけど。
料理コンテストに出る人は7時半集合だ。
それに出るために朝から琴瑚に起こしてもらい琴瑚に朝ごはんを作ってもらって朝から至れり尽くせりだ。もう琴瑚と結婚しようそうしよう。そんなことを最近思い始めてきた。
そんなわけで朝早くから学校に登校だ。
周りを見ると既に模擬店のテントが張られ始めており校舎の装飾などもなかなかのものにたっている。
そんな中を通り抜けて一人体育館へと向かう。
一昨日工事が終了し綺麗になった体育館へと入ると既にほとんどの人が集まっていた。
「あ、来た来た!おーい雪人君!」
朝から元気だなぁ…そう思いながらとりあえず
「おはよう梨乃、皐月とクノアも」
「おはよう雪人」
「おはようございます、雪人さん」
皐月はいつも通りみたいだし大丈夫そうだな。
「それにしてもクノアなんだな。てっきり緋音だと思ってた」
「あ〜、それはね、四人って知った時は緋音ちゃんを入れた四人だったんだけど男女混合って知ったらね、緋音ちゃんが
『私、料理あんまり得意じゃないから私抜けるよ』って」
「なるほど…料理苦手なのか緋音。それはそうと梨乃とクノアは料理できるのか?」
「私けっこう料理作るの好きだし任せてよ!」
「私も料理は人並み以上に自信がありますわ」
これはこれは。まさかこの二人も料理できるのか。皐月は言うまでもない実力者だが…
『はーい、みなさーん。少し話を聞いてください!今から料理コンテストの説明をしたいと思います!』
このイベントの統括的な人が話し出すと辺りのざわざわは一瞬にして消えていく。
『料理コンテストは男女混合四人一組のチームが合計で四組出場の料理バトルです。順位の決め方はイベント直前にも言いますが観客の方々による【見栄え点】、生徒会による【美味しさ点】の二つで決まります!得点の配点はイベント直前に言いますので今は省略させていただきます!』
あっ、これもしかして…
『そして優勝景品はなんと!!!!!』
ん?なんだ?
『ありません!!!』
「えっ!?」
『まぁこのことはポスターにも書いてありましたので置いときますね』
書いてあったのか!!
『そして料理コンテストのルールとして毎年決まっているのですが、作る料理はこちらで生徒会の方で決めていただいております!そして今回選ばれた料理は…』
なんだ…自分で好きなもの作ってはいけないのか…
『ハンバーグ、オムライス、パエリア、そしてその他です!!』
「えっ!?」
今まで黙っていた周りが再びざわざわとなる。
『今回はハンバーグ、オムライス、パエリアの食材が少し多めに与えられます!そして余った食材でもう一品作っていただきます!』
なるほど…つまりは節約しながら作れ、ということか。
『ちなみに料理は一人一品作っていただき、助言等はありですが直接手取り教えるのは禁止です。以上が料理コンテストのルールとなりますがなにか質問のある方は挙手をお願いします!』
周りを見回してみると一人手を挙げている人物が…しかしここからは顔が見えない。
『はい、どうぞ』
「食材を持ち込むのは禁止ですか?」
あれ、この声…
『禁止です!ルール違反の場合その時点で敗北ということになりますので注意しておいてください。他には?』
周りで手を挙げている人はもういない。
『もういないようですのでこれで終わりにしたいと思います!料理コンテストの集合時間は10時半なので遅れないようにしてください!では朝早くからご苦労さまでした』
「ねぇねぇ、誰が何作る?」
「とりあえず皐月のオムライスは決定だ」
「「「えっ!?」」」
三人同時に首を傾げる。
「前食べさせてもらったけど皐月のオムライスはやばかったぞ。美味しいなんてものじゃないくらいだった」
「そ、そうなんだ!なら皐月ちゃんはオムライスで決定…でいいかな?」
梨乃が皐月の方を向いて確認する。
顔を赤らめた皐月は首を縦に振る。
「あの、私にパエリアを作らせていただけないでしょうか?」
「クノアちゃん?」
「実は私、パエリアが好物でして…自分でもよく作るので…」
「それは心強いじゃないか。俺はそれでいいけど、梨乃は?」
「うん。私もいいよ!それなら私ハンバーグ作っていい?」
俺に確認を取ってくる。
「良いよ。その代わり材料全部使い切るなよ?」
「もちろんだよ!」
「それじゃ10時半にまたここで」
それだけ言うとそれぞれ別々の所に歩いていった。
俺が向かった先は…
「おう悠斗。お互いってこういうことだったんだな」
手が挙がっていた所だ。
「ん?雪人か!そういうことだ!今日は敵同士だな」
「あぁ。でも多分勝ち決まったわ」
「ん?どこからそんな自信が出てくるんだ?」
こいつは気づいてないのか?
俺のチームの一年生に対する圧倒的なものを。
「よく考えてみろ。俺のチームは皐月に梨乃、クノアだ。生徒会の配点がものすごく高い場合は微妙になるかもしれないが観客1点生徒会5点くらいなら多分余裕だ」
「というと?」
まだわからないのかこいつは…
まぁいい
「皐月、梨乃、クノア。この三人が俺ら一年生の中でも人気がすごいのは知ってるだろ。特に梨乃は」
「それはもちろん。愛好会があるレベルだか…ら………なるほど、そういうことか」
やっと気づいたようだな。
「観客点が最初からものすごく高いということだろ?しかも皐月は料理が上手いし」
「あぁ。それにクノアはパエリア得意らしいからな。梨乃がどうなのかは知らないけど俺もある程度なら料理は出来るし」
「確かにそれならなかなかのチートチームだな……だけど俺のチームもなかなかなんだぞ?」
「え?」
「俺以外はみんな家が料亭のやつらだからな。まぁパエリアは多分俺になると思うけどな」
「なるほどな。まぁお互いよろしくな」
「おうよ!」
手を軽く振って出口の方へ向かう。
料亭の息子娘か…確かに強そうだな…
………
………
ハンバーグとオムライスとパエリアの余り物で作れるのってなんだろう?
今回短いですね。
ここぐらいで区切らないと1話が長くなりそうだったのでここで区切ることにしました!
前回は少しテンション低め回でしたがまた上がっていきますのでこれからもよろしくお願いします!!
では!!