客と決闘者
俺、草原カケルと捕食者、ライオン女の玲於奈は所変わって自室にいた。
ストライプ柄を基調とした(むしろ全部ストライプなんだが)部屋に他人を上げるのは久しぶりだった。
「趣味が悪いとしか言えませんね」
その久々の客は部屋に入るなり、辛辣な言葉を投げつけてきた。
「まぁわかってもらえるとも思ってねぇよ。その辺に座っとけ。」
座布団を放り投げておく。
それが客に対する態度か、とクレーマーのように呟いていたが座布団に腰掛けた。
「てゆーか、お前さ...」
ずっと気になっていたことが俺の中にあった。
「なんでずっとそわそわしてんの?今日。」
ギクッ!と言う擬音が聞こえてきそうなほど驚いていた。わかりやす。
「そわそわなんてしてません。シマウマは前に目がついていませんものね。よく見えないんですよね?」
「いやシマウマでもわかるわ。トイレでも行きてぇのか?行き方なら教えるぞ」
良心で教えてやったのに、鋭い眼光で睨み付けられた。なんで。
「...不本意ながら、殿方の家は初めてなもので。いえむしろ、友達の。いや、あなたは違いますがね?他人の家はほぼ初めてで。」
どうやって振舞ったらよいのか、いまいちわからなくて。そう言った。
ふーん。まぁなんとなくイメージできるかな。
「だから私は友達ではなく、客なんですよ。もてなしなさい。喉が乾きました。」
見た目だけはいいのにな、こいつ。
「野菜ジュースでいいか?むしろそれしかないぞ。」
「嫌いですが、背に腹は変えられないですね。持ってきてください」
「てめぇが女じゃなかったら殴り飛ばしてるよ!」
シマウマたるもの、優しくあれ。
「さて、と。」
野菜ジュースを玲於奈のグラスに注ぎ終わり、俺はベッドの上に座った。
「何すんの?」
「なら、遊〇王でもしましょう」
耳を疑った。
「は!?遊戯〇!?カード持ってんの!?」
俺がそういうと、玲於奈は学校に持っていっている鞄からデッキケースをおもむろに取り出した。
「デュエリストたるもの、常にデッキは携帯しておくべきです。」
ドヤ顔で言われても、困る。
しかし見たところ、デッキケースには入っていてもカードスリーブはしていないようだ。
「ふっ...」
俺は不敵に笑った。
こいつ、多分ルールは知ってるけどやる友達がいなくて、でもデッキは組んじゃった。適当に。みたいなやつだ。
「いいぜ、やろう。俺はこう見えてもデュエリストの端くれ、そう簡単にはやられないぜ。」机の引き出しから俺の自慢の獣族デッキを取り出した。
「やはりできるんじゃないですか、決闘。私も一筋縄ではいきませんよ?」
二人のデュエリストが、今、対峙する。
次回、カケル死す。