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「そいつ」と俺

妹との朝食を終え、ゼブラ柄のリュックを肩に掛け、家を出る。

てか2話目で地味な特技の妹しか出てなかったけど。俺のシマウマ大好き設定活かせてないんだけど。大丈夫かな、これ。

そんな意味のわからないことを何故か頭の中で考えつつ、通学用の自転車にまたがる。

学校への所要時間は15分と言ったところ。

その道程、桜が咲き乱れており、不覚にも春を感じた。特に不覚というほど春が嫌いってわけでもないのだけど、突然に現れた桜に、不覚にも感動。その桜並木を通ると、ふと今日は良い1日になるだろうと、自転車で駆ける一匹のシマウマは感じた。


そうこうしているうちに学校に到着。

私立ちゅーりっぷ高校。アホみたいな名前だろ?そこがいいんだよね。

校風は生徒の自由を尊重。部活がめちゃくちゃある。よくラノベであるよね。

その正門に張り出された新しいクラス名簿を見る。あった。2年1組8番。

おっと、三話にして自己紹介がまだでした。草原カケル、16歳。将来の夢はシマウマです。どうぞよろしく。

階段を上がり、2年1組の教室に入る。

案の定教室は、昨年と同じクラスの仲間と語り合う者と、居場所もなく座っている者との2つに別れた。前者の勢いが強く、教室はガヤガヤと話し声であふれていた。

「よっ、カケル!」

そう言われ、肩に手が掛けられる。

「よう、牧野。今年も一緒か」

「ヨースケでいいっての!小学校からの付き合いだろ!?」

そう言って反論する男は、牧野洋介。

髪の毛は重力に逆らい、ふわっと自然に浮いており、制服は見ていて不快にならないほどで、オシャレに着崩している。俗に言うイケメンと言うやつ。なぜか俺とできてると言う噂が絶えない。なにができてんねん。

「それより見たか?アレ!」

「アレってなんだよ、回りくどい」

「転校生だよ、転校生!クラス名簿に知らない名前、あったんだよねー。女子の名前だったな。」

「ふーん、そうか。」

俺はあまり興味がなかったので、スルーした。女ってとこでワクワクしないあたり、できてるって言われるんだろうな。

つれねーなー、と言う牧野の声を背に、自分の席を確認し席に着く。

そしてふと、考えた。転校生は、俺と熱く動物を語り合える人間だろうか、と。

シマウマじゃなくても、ある程度の動物なら熱く語り合える自信がある。

俺のシマウマ理論その1。

シマウマの謙虚な心を忘れず、他の動物もリスペクトする。

そこではぁ、とため息を一つつく。

そして視線を窓の外に向ける。

学校の裏は山になっており、そこでも桜が咲いていた。なにも考えずぼんやりと見つめていると、唐突にドアが開かれた。

教室の喋り声を切り裂くように、自分の存在感を主張するように。

そしてその音に続くように、ゴツゴツとした男教師が入ってくる。

その後ろに、「そいつ」は、いた。

たなびかせた黒髪は、清純の象徴。

ぱっちりと開かれた二つの眼にかかるメガネは、聡明の象徴。

正直、俺はみとれていた。

目を疑うほどの美しさに。

空気を征するような、凛とした雰囲気に。

ぼーっと見つめている俺の耳に、男教師の声が入る。

「このクラスの担任、宮崎吾郎だ。これから一年、よろしく」とかそんなことを言っていた。テンプレすぎてつまらなかったので、ろくに聞いていなかった。

そして、話題は「そいつ」にふられる。

「えー、じゃあ自己紹介してください」

意外と言葉が丁寧だな、宮崎吾郎。

そうすると、「そいつ」はカツカツと黒板に文字を書き始める。

とても達筆な文字で、名前を書き上げていく。

志田 玲於奈。しだ れおな。頭の中で読み上げる。読み上げてしまう。そして、口が開かれる。

「志田玲於奈と申します。ここにいる皆様と、仲良くなれたらいいなと思っております。以後、よろしくお願いいたします。」

硬い。めっちゃ硬い。

「じゃあ、名前の順の席だから、草原の隣だな。」宮崎が言った。なんだと、主人公みたいだな、俺。

「あそこの空席ですね?了解しました」

そう言うと背筋をピンと伸ばし、上履きなのにまるでカツ、カツと音がするように綺麗に歩み寄って来て、俺の隣の席に着く。

そして、俺の方を向き、天使のような微笑を含みながら、「あなたが、草原君ですね?ぜひ、これからよろしくおねがいいたします。」そう、俺に向かって言ったのだ。

俺はカチコチにかたまり、不自然な笑顔で返すしかなかった。お恥ずかしい。


そして、「あの言葉」が放たれる。

この物語の、始点。スタートライン。


「草原君は、好きな動物とか、いますか?」

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